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「いじめ」 遺族と学校摩擦 情報開示めぐりで

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いじめが原因と疑われる子どもの自殺後、原因調査や情報開示を巡り、遺族と学校側にあつれきが生じるケースが繰り返されている。長崎県新上五島町では、町教育委員会がいじめをうかがわせるアンケートの回答などを伝えなかったことに遺族が抗議。鹿児島県出水(いずみ)市でも遺族が校内アンケート結果の情報開示を求め、市を提訴する事態に発展した。遺族には我が子を亡くしたショックに加え、学校側と対峙(たいじ)する二重の負担がのしかかる。トラブルを未然に防ぐ方策が求められている。

 

 ●長崎・新上五島

第三者委が対応批判

 「極めてずさん。当初からいじめはなかったという結論に基づいて調査したとしか思えない」

 新上五島町で2014年1月、町立奈良尾中3年の松竹景虎(かげとら)君(当時15歳)が自殺した問題を検証する第三者委員会(委員長・大谷辰雄弁護士)は、今年1月6日に町に提出した報告書で「いじめが自殺の原因とは断定できない」とした町教委や学校の調査を非難。同級生から「死ねばいいのに」といった悪口を繰り返されるなど「過酷ないじめ」が自殺の原因と結論づけた。

 始業式が予定されていた14年1月8日朝、松竹君は自宅近くのグラウンドで命を絶った。無料通信アプリ「LINE(ライン)」で自殺を示唆するメッセージを複数の同級生に送っていたが、誰も学校や両親に伝えなかった。遺族は徹底した事実究明を求めたが、学校や町教委の対応はその願いを裏切るものだった。

 学校が自殺翌日に同級生らに実施したアンケートでは複数の生徒が「悪口を言ったことがある」などと回答。16日からの聞き取りでは、同級生が松竹君の筆箱の中身をひっくり返していたなどの回答もあった。しかし、町教委の報告書には盛り込まれず、「いじめを受けている様子や訴えは見られない」などと記載。24日、道津利明教育長が両親と面会した際には、報告書の一部を読み飛ばしたうえ、報告書を渡さなかった。

 3月14日に学校が実施した2回目のアンケートでは「クラスに問題がある。立派ないじめです」などの回答があったのに、町教委と学校は3日後、両親に「いじめがあり苦にしていたとはとらえにくい」などと報告。2回目の聞き取りを経た5月、町教委はようやく悪口などがいじめに当たると認めたものの、自殺の原因とは認めなかった。

 第三者委はこうした対応に加え、学校・町教委から遺族に提供されたアンケートの回答と、第三者委に提供された回答とが異なっていたとして「極めて不誠実」と批判。「アンケートや聞き取りは、真実を発見しようとする気持ちがあるのかとすら感じる。できる限り遺族に寄り添い、遺族が納得できるまで、納得できる方法で調査すべきだ」と苦言を呈した。

 松竹君の父裕之さん(51)は「町教委と学校はなぜこのような対応になったのかを検証してほしい」と訴える。【樋口岳大】

 ●鹿児島・出水

「あるがままを知りたい」

 「そもそも裁判になること自体がおかしい。これで真相究明のスタートラインに立てる」。出水市で自殺した市立中2年の女子生徒(当時13歳)の祖父、中村幹年さん(65)は、市に校内アンケート結果の開示を命じた鹿児島地裁判決の確定を受けて、そう語った。

 女子生徒は11年9月、九州新幹線に飛び込んだ。遺書はなく、市教委などは約1週間後、全校生徒にアンケートし、有識者らを入れた事故調査専門委員会などで調査した。自殺から3カ月後、「女子生徒の持ち物がなくなることなどがあったが(いじめなど)事故の直接のきっかけとなる出来事は確認できなかった」とする報告書を公表した。

 真相の究明を求める遺族側はアンケート結果の開示を求めたが、市教委は拒否。「インターネットなどを通じて不確かな伝聞情報などが広がり、関係ない生徒が2次被害に遭った」と不開示の理由を説明した。自殺の約1年後には同じ中学校の保護者らが2次被害を懸念し、アンケートの非開示を求める署名を市教委に提出した。争いは法廷に持ち込まれ、鹿児島地裁は昨年12月、個人情報などを除く開示を命じた。自殺から4年以上。市教委は今年1月、ようやく一部を開示した。

 開示されたアンケートには、記入された113人分のうち、いじめに関連する記載が約30あった。多くは「いじめられていたと聞いた」「たぶんいじめにあったんだと思う」など伝聞や推測だったが「『きもい』と言われるところを見た」「『部活で差別される』というようなことを言っていた」などの記述もあった。市教委の調査報告書にこれらは記載されておらず、市教委は「掲載していない事項は、事実関係が確認できなかった」としている。

 これに対し中村さんは「調査報告書でいじめの記述が省かれているのは、市教委が隠したがっているとの印象を持つ。孫の死の真相を知るため、あるがままの情報を知りたい」と話す。市教委の調査の進め方についても「第三者を入れた委員会と言っているが、透明性や中立性は担保されていなかった」と不信感は強い。遺族側の推薦する有識者らを入れた第三者調査委員会を、市教委でなく市長部局のもとで設置し再調査するよう求めている。【宝満志郎】

いじめ防止対策推進法 調査結果「適切に提供」

 国は、いじめ防止対策推進法に基づき、2013年に基本方針を策定した。いじめによる自殺や長期の不登校という重大事態が起きたら、市区町村教委か学校が調査する決まりだ。

 教委が調査する場合は新たに調査組織を設置。学校が調査するのであれば、同法が校内に設置を義務づけている常設のいじめ防止組織が担当する。メンバーは教員や福祉の専門家らだ。

 同法や基本方針は、調査は「被害者家族の要望・意見を十分聞き」、その結果は「事実関係など必要な情報を適切に提供する」と定める。子どもにアンケートする際は「被害者家族に提供する場合があることを念頭に置き、その旨を子どもに説明することが必要」と説明責任を課している。しかし、新上五島町などであったような不適切な対応が後を絶たない。

 そこで文部科学省は来年度から、遺族らへの対応に問題があれば、文科省職員を自治体へ派遣し、情報収集や自治体への指導・助言に当たることにした。