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激怒する被害者! 「いじめ解消率100%は隠蔽だ!」

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「いじめ解消率100%」。神戸市が昨年公表したこの数字が波紋を広げている。市教育委員会の活動をまとめた報告書の中で、平成25、26両年度に市立小中学校で認知したいじめについて、いずれも「100%解消」と報告したのだ。この数字はインターネットを中心に反発を招き、いじめられた経験のある児童や生徒の親たちも「実態に合わない数字。市教委がいじめを隠蔽(いんぺい)している」と激怒した。本当に「100%」なのか。そもそも解消率とは何なのか。報告書が出来上がるまでの過程を調べると、〝ご都合主義〟といわれても仕方ないような「データ処理」があった。

驚き、怒り…「ありえない数字」

 インターネットには、驚きとも非難ともとれる文章があふれた。

 「いじめがなくなるなんてありえない」

 神戸市が発表したいじめ解消率「100%」に対する反響だった。

 市は昨年9月、「平成26年度 教育に関する事務の管理及び執行の状況の点検及び評価(報告書)」を公表した。この中で、市は初めて、市立の小中学校でいじめと認知された事案の解消状況を報告。「平成26年度100%」とし、その前年にもさかのぼって「平成25年度100%」と言及した。

 本当なら喜ばしいことだろう。だが、「100%」という結果は書かれているが、認知件数やいじめの状況などの具体的データや、解消率をはじき出すためのプロセスは記されていなかった。そのため、子供がいじめにあった経験のある親たちは怒りを爆発させたのだ。

 「神戸市が『解消した』と言っている陰で、いじめで苦しんでいる人は本当に多い」

 神戸市を中心に活動し、いじめ自殺や学校事故などで子供を亡くした親らでつくる「全国学校事故・事件を語る会」の西尾裕美さんらは2月10日、市教委の担当者を訪れ、こう訴えかけた。

「継続支援中も解消」という解釈

 では、神戸市のいう「100%」は本当なのだろうか。それを解明するために、まずは解消率とは何かをみてみる。

 いじめのデータの基本になるのは、文部科学省が毎年実施している問題行動調査だ。年度末までに各市町村が学校から報告を受け、それを都道府県が集計、文科省がまとめている。

 
 

 この調査では、いじめの状況を(1)解消しているもの(2)一定の解消が図られたが、継続支援中(3)解消に向けて取り組み中(4)その他-の4つに分類している。

 文科省の担当者は「広くとらえれば継続支援中も〝解消〟といえる」としている。神戸市教委も「表向きにはトラブルが無くなった状態を継続支援中としている」と位置づけており、市は(1)(2)を「解消」と表現している。

 その上で、市が兵庫県に報告したデータによれば、平成26年度のいじめの認知件数は小学校180件、中学校127件。そのうち(1)は小学校118件、中学校59件、(2)は小学校54件、中学校が62件。これを合わせた解消率はそれぞれ95・6%と95・3%だった。

「タイムラグ」と「転校」

 「いじめ解消率100%」ではなかったが、市は「未解消のいじめは年度をまたいで対処し、報告書を出すまでには解消した」という。

 95%が100%になったのにはカラクリがあった。その一つが、調査結果を締め切る年度末から資料を作成する7月ごろまでの「タイムラグ」だ。

 市教委によると、26年度末時点で小中学校での「未解消」((3)(4))は計14件。内訳は「取り組み中」が10件、「その他」が4件だった。だが、資料をまとめる時点で、年度末には取り組み中だった事案が改善されたことが確認され、「取り組み中」が「解消」になった。

ここでもう一つの操作が入る。「その他」の4件は、いずれも年度内にいじめとされたが、その後の資料作成までに転校したものであり、資料をまとめる際に解消率の計算から除外したという。

 こうして「いじめ解消率100%」という数字は〝つくられた〟。

「継続支援中」の割合が…

 それだけではない。

 もともとの神戸市の報告書には記載されていないが、「解消」の内訳をみると、ある特徴が浮かび上がる。「継続支援中」の割合が非常に多いのだ。

 市教委によると、26年度のいじめ認知件数のうち、「継続支援中」が占める割合は、小学校で30・0%(公立の全国平均8・4%)、中学校で48・8%(同10・9%)。いずれも全国平均を大きく上回る。

 市教委の担当者は「いじめが簡単に解消できるとは思っていない。だから、『解消』ではなく『継続支援中』としている。学校が子供の様子を観察し、市教委が学校と話し合いながら、一緒に慎重に判断している結果だ」と話し、「解消と言っても子供から目を離すことでは決してない」としている。

学校に「いじめでない」と言われ…

 「100%」という数字に対する反響が大きかった理由は、いじめの実態は数字に表われにくいにもかかわらず、言い切ってしまったことにあるのではないか。実際、いじめの被害者らはそもそも認知されていないケースが多いと訴える。

 「平成26年度にはいじめとして報告していない」

 神戸市内の市立小学校に通う男子児童がいる40代の母親は取材に応じ、当時学校からそう説明されたことを打ち明けた。

 母親によると、児童へのいじめが始まったのは26年6月ごろ。多くの同級生から「死ね」と言われ、暴力もふるわれた。いじめは次第にエスカレート。児童は体調が悪くなり、ストレスで髪も抜けた。しかし、相談に行った学校からの返答は耳を疑うものだった。

「調査したがいじめはない。気のせいではないか」

 昨年には、同級生にけがをさせられたとして、警察にも相談。今では児童へのいじめは収まったが、「いじめが終わったとは思っていない。いつまた始まるか」と不安を打ち明ける。

「来年度から改めたい」

 いじめは数字に表れるものだけではない。

 「全国学校事故・事件を語る会」代表世話人で元公立中学教員の内海千春さんは「深刻ないじめの場合、被害を訴え続ける保護者をモンスターペアレンツと判断するなど、学校が別の問題にすり替えているケースもある」とし、「100%という高すぎる数字からは、神戸市が簡単ないじめだけを認めているのではないかという疑いが生まれる」と話す。

 法政大の尾木直樹教授(臨床教育学)も手厳しい。

 「年度内の話なのに年度をまたいだらデータとして成り立たない。これでは隠蔽といわれても仕方ない。そもそも解消率自体、文科省でも正確かどうか判然としないとして検討課題になっている」

 尾木教授によると、いじめの定義は「本人がいじめと思うかどうか」という。「被害者がいじめだといえば学校はいじめを認めて動く、というのが文科省が進めるいじめ対策の方針」とし、教育委員会や学校がいじめについて「解消した」とすること自体がおこがましいという主張だ。

 報告書についての市教委との面談に参加した「全国学校事故・事件を語る会」の別の男性は「100%が続くと、教員がいじめを報告しづらくなるとも考えられる」と別の問題点も指摘した。

 一方、市教委の担当者は「隠蔽しようというつもりは全くない。現場の先生たちがいじめを追いかけ続けて頑張っている事実を伝えたかっただけ」と、非難されることは予想外だったと困惑。こうした反響を受け、「来年度からは公表の方法などを改めたい」としている。