いじめニュース速報@イジ速

いじめ事件 ・イジメ ニュースを発信中!スマホいじめが増加!子供達をいじめから守ろう!

ネットいじめ! SNSから「SOS」するとなぜトラブル起きる?

f:id:ryoushinn11:20160404145255p:plain

子どもの間のいじめで、パソコンや携帯電話等が使われることはもう珍しくない。一方、いじめを受けた子どもがツイッターやライン上でつぶやいたSOSが“放置”され、自殺という最悪の事態に至ってしまうこともある(※)。インターネット時代、子どもたちはどんな状態でいじめの危険にさらされ、また、どんな落とし穴に陥ってしまうのか。そのプロセスと子どもを守るための対処法などについて、子どものいじめ問題に詳しい教育評論家の武田さち子さんに寄稿してもらった。

 

※2013年3月、奈良県橿原市で中1女子が自殺した事件。市教育委員会が設置した第三者調査委員会は報告書で、「『仲間はずし』『嫌なことを言われる』『無視』などが、対面での言葉や行為だけでなく、無料通話アプリ「ライン(LINE)」を使う方法でもされており、相当程度のものであった」として、いじめを認定した。

 同年8月、熊本市の県立高校の寮で暮らす高1女子が自殺した事件。ライン上で同級生から脅迫的な書き込みなどがされていたという。

 14年1月に長崎県新上五島町で中3男子が自殺した事件。町の第三者調査委員会が報告書で「いじめで自殺」と結論付けている。男子はラインで自殺をほのめかしていたが、命を救うことができなかった。

深刻化するネットいじめ

 

 私は、ツイッターやラインによるトラブルやいじめで自死に追いつめられた子どもたちの例をいくつか知っています。その中から、なぜ、ラインいじめが多発するのか、子どもたちが死に追いつめられてしまうのか、どうすれば子どもをネットいじめやトラブルから守ることができるのかを、急激に広がりつつあるラインを中心に考えてみたいと思います。ぜひ、親子で読んでみてください。

 文部科学省発表の「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」によると、14年度の小・中・高・特別支援学校におけるいじめの認知件数は18万8057件。そのうちパソコンや携帯電話等を使ったいじめは7898件で、いじめの認知件数に占める割合は4.2%でした。この数字は氷山の一角でしかありません。しかも深刻化しています。10代の子どもたちの集団リンチ事件や殺人、いじめが原因とされる自殺の背景にも、ラインでのトラブルやいじめが絡んでいることが少なくありません。

「よくある愚痴」が「悪口」になってしまった悲劇

 

 まず、一つのケースをご紹介しましょう。

<ケース1>

 Aくんは高校の部活で面白くないことがあったので、中学時代の友だちへのメールにSくんの愚痴を書いて送りました。すると友だちは、悪口を書かれたSくんとも友だちだったので、そのメールをSくんに転送してしまいました。

 Sくんはメールを見て怒り、Aくんは謝罪しましたが、許してもらえませんでした。AくんがSくんの悪口を書いたことを知って、他の部員もAくんから離れていきました。部員を通じてクラスでも孤立するようになったAくんは別の友人に相談していましたが、ある日、思い余って、「空に行くから」と死を連想させるようなことを書きました。

 そのメールを受け取った友人は心配して、Sくんをはじめ他の部員にもこのメールを転送しました。大騒ぎしてみんなが捜していると、Aくんは自宅にいることがわかりました。みんなが心配して大騒ぎをしたのに、死んでいなかったと責められたAくんは、約1か月後に本当に自殺してしまいました。

 

 このケースは携帯メールでのトラブルですが、この後にお話しするラインでも同様のことが起こり得ます。よくある愚痴が悪口になって相手に伝わってしまい、最悪の悲劇を引き起こしてしまったのは、なぜなのでしょうか。 

f:id:ryoushinn11:20160404145542p:plain

“浅いコミュニケーション”の繰り返しが…

 

  • 見えない相手とのコミュニケーションだと冗舌になる?(写真はイメージです)
    見えない相手とのコミュニケーションだと冗舌になる?(写真はイメージです)

 パソコンも、携帯も、スマホも、うまく使いこなせば、とても便利な道具です。とくに、ラインは急速に広がりました。今やクラスや部活の連絡、同級生や趣味の仲間とのやりとりも、ラインが主流です。1人で10も、20もライングループを持つことは珍しくありません。簡単な操作で、会話をするように気軽に送れて、しかも通信料は無料。しかし、その手軽さこそが落とし穴なのです。

 アメリカの心理学者アルバート・メラビアン博士によると、人が会話する時に、態度や表情といった言葉以外の非言語的情報がコミュニケーション全体に与える影響は55パーセント、声の調子や大きさといった準言語的情報が与える影響は38パーセント、言葉そのもの、すなわち言語的情報が与える影響はわずか7パーセントといいます。絵文字代わりのスタンプもありますが、文字だけのやりとりは、対面する以上に慎重に行わなければ、相手に誤解を与えたり、不快な思いをさせたりすることになりかねません。

 今の子どもたちは、少子化や早期からの習い事の影響で、小さい頃から友だちと遊ぶ経験に乏しく、コミュニケーション能力が育っていません。対面だと相手が自分をどう思っているかが気になり、緊張してうまく話せなくても、ネットを介しての会話では途端に冗舌になったりします。相手の姿が見えないと、そこに自分の思いを投影しやすくなるからではないでしょうか。

 ネットを介しての相手なら、嫌になったら簡単に関係を切ることもできます。そうしたひとりよがりの浅いコミュニケーションばかりを繰り返していると、現実の相手とネットで受ける印象とのギャップに苦しんだり、現実の人間関係が苦手になったりして、ますますネットに依存するようになります。

 ネットでは顔が見えないので、相手の感情が読み取りにくくなります。また、声のトーンがわからないので、発信側と受信側で言葉の重さがまるで違うこともあります。ほんの冗談や相づち程度で発した言葉でも、相手によっては強い口調でののしられたと感じたり、悪意を感じたりすることもあります。

ネット介在で急速に広がるいじめの情報

 

 言葉選びに悩まなくても自分の気持ちを簡単に伝えられるスタンプも、発信側と受信側が同じように解釈するとは限りません。狭い人間関係のなかでネット上でのトラブルが発生すると現実世界にも飛び火し、トラブルやいじめに発展します。学校生活でのトラブルが、ネットいじめにつながることもあります。

 しかも、ラインや友人など特定の人間しか見られないようにした鍵付きのツイッターなどは外部から閉ざされ、親や教師、客観的な相手からの批判にさらされることも少ないので、悪ふざけや誹謗ひぼう中傷がエスカレートしやすいということもあります。面と向かっては言えないような言葉も、頻繁に飛び交います。

 「うざい」「きもい」「死ね」などの言葉も、閉ざされたグループのなかで複数の人間に投げかけられると、1人の相手から言われるのとは比較にならないほど深く心に突き刺さります。すぐに消える話し言葉とは違い、文字にしたものは残るので、相手はそれを見るたびに傷つきます。消したくても消えない記憶になります。

 ネットが介在すると、いじめの情報は急速に広がります。部活のいじめがクラスに波及したり、塾や習い事の人間関係にも影響を及ぼすことがあります。いじめが原因で不登校になったり、転校したりしても、悪いうわさがついて回ることがあります。被害者はネット上でも、現実世界でも、居場所を失います。

 

「いじめられている」と親には言えない

 

 ここで、もう一つのケースをご紹介しましょう。

<ケース2>

 B子さんは学校でいじめられ、不登校になっていました。両親はB子さんのつらい気持ちに寄り添い、「学校に行くのがつらいなら、学校なんて行かなくていい」と話していました。学校に行かなくてもメールで悪口が送られてくるので、B子さんは親と相談してメールアドレスを変えました。

 しかし、B子さんの心理状態は、学校に行かなくてもどんどん悪くなっていきました。心配した両親がB子さんにカウンセリングを受けさせました。結果、新しいメールアドレスを親しい数人の友人だけに知らせていたにもかかわらず、いつの間にか、いじめグループにも漏れていて、再び、誹謗中傷のメールが送られるようになっていたことがわかりました。しかし、そのことを親に話せば、携帯電話を取り上げられて、親身に相談に乗ってくれている友人との関係も切れてしまうと思ったB子さんは、親に打ち明けることができずにいました。

 (このケースも携帯メールでのトラブルですが、ラインでも同様に考えてみてください)

 

 このB子さんは親に相談していましたが、誹謗中傷が再開した時にはそのことを話すことができませんでした。子どもはなかなかいじめを大人に打ち明けることができません。大人に告げるということは、チクること、仲間への裏切り行為と考えるからです。また、自分がいじめられる弱い人間だと認めたくない、親に心配をかけたくない、学校で起きていることなので親に言っても解決が期待できない、先生に知られるとおざなりな対応でかえっていじめがエスカレートする、などと考えて話せません。

子ども同士の「寄り添い」の限界と危険

 

  • いじめられているなんて親には言えない…(写真はイメージです)
    いじめられているなんて親には言えない…(写真はイメージです)

 そして何より、子どもは大人ではなく、仲間に助けてもらいたいと思っています。

 学校で、友だちと一対一の時間を確保することは容易ではありません。誰にも知られないよう、子どもたちはラインを使って、仲間に愚痴をこぼしたり、相談をしたりします。しかし、残念ながら、ここにも大きな落とし穴があります。

 相談するときイメージするのは、ひたすら自分の言葉に耳を傾け、気持ちに寄り添ってくれる相手です。しかし、現実は必ずしもそうとは限りません。一方で、ツイッターやラインでは、表情や態度が見えないので、真剣に話を聞くふりをすることは簡単です。「そうなんだ」の一言だけで、共感されているように相手は感じます。悪意から、あるいは軽い気持ちで、相談内容を他人に転送したり、秘密を暴露したりする人もいます。共感してほしくて送ったリストカットの写真を、「きもい」と言って、仲間に転送する子どももいます。

 また、真剣に友だちの悩みに共感している人でも、相手の依存度が増し、相談が繰り返されるうちに、負担に感じることは少なくありません。ラインは会話形式なので、相手が悩みを語っている間中、相づちを求められ、つき合わされます。家に帰ればテレビを見たい、マンガを読みたい、ネットサーフィンをしたい、仲間と楽しい趣味の話をしたい、宿題や勉強もしなければならない。時間はいくらあっても足りません。

 そんな中で、いつ終わるともしれない愚痴や悩みを聞かされるのは、カウンセラーなど、相談を業務にしている人たちでさえ疲れます。ましてラインでは、会って話をする以上に、どのタイミングで話を終わらせたらよいか、切り上げ方が難しいので、長時間にわたることがあります。

 いじめは、いじめる側がいじめをやめない限り、解決しません。悩みを友だちに話せば一時、気持ちが軽くなったとしても、根本的には解決しないのです。しかも、友だちが寄り添って話を聞いてくれている間はかえって、大人に相談する必要性を感じません。聞く方の気持ちが限界に達して、つい、冷たく突き放してしまった一言が、悩みを抱え、うつ状態の相手を死に追いつめてしまうこともあります。既読マークがついているのに返信がないと、見捨てられたように感じることもあります。親身になって相談に乗っていた人が、相手の自死行為で深い罪悪感にさいなまれることも少なくありません。

ラインいじめを防止するために~ルール作りと定期的見直しを

 

  • たわいのない言葉が相手を傷つけている場合もある
    たわいのない言葉が相手を傷つけている場合もある

 子どもはマニュアルなど読まなくても、スマホの操作などすぐに覚えてしまいます。楽しいことは放っておいても身につけていきますが、必要なことは必ずしも自分から学ぼうとはしません。

 そこで、携帯電話やスマホ、パソコンを子どもに買い与える時には、ネットの危険性や対処法について調べてリポートに書くように、子どもに課題を出したり、携帯電話会社やNPOなどが運営しているサイトなどから、親子で一緒に安全な使い方を学んだりします。相談窓口なども調べておくとよいでしょう。また、怪しいサイトは見ない、自分や他人の個人情報を安易に書きこまない、夜の時間帯の使用制限など、あらかじめ決め事をして、紙に書いたものを目につくところに貼っておくとよいのではないでしょうか。

 学校の部活動やクラスなどでラインのグループを作る時にも、あらかじめ、使用目的をはっきりさせ、ルール作りをします。互いの生活に支障をきたさないように、時間内の返信を強要しない、夜の使用制限時間を決める、誹謗中傷や意味のない言葉の羅列を書きこまない、違反したときには3回警告を出したうえで退会させるなど、決めておくとよいでしょう。

 大人が押し付けたルールより、子どもたち自身が話し合って決めたルールのほうが、効果があります。学校で提案してみましょう。

 家庭でも、学校でも、ルールはきちんと守られているか、新たに発生している問題にはどのようなものがあるかなど、定期的に見直します。新たに決めたことも、きちんと文章化しておきます。

トラブルが起きてしまったら~「死」のメッセージ軽視しないで

 

 いじめやトラブルは未然に防ぐにこしたことはありません。それでも、トラブルが発生してしまうものです。そんな時、どうすればいいか。ここからは、特に、友だちとの関係で悩んでしまう子どもたちにまず知ってほしいことを書きます。

 ネット上のトラブルをネット上で解決しようとすると、かえってこじれてしまうことが多いので、対面での話し合いで解決するようにします。また、悪口を書かれたからといって悪口を書きこむと、争いごとの火種はますます大きくなります。相手と同じ土俵に乗らない、自ら下りる勇気が必要です。

 いじめが発生したら、友だちに打ち明け、悩みを聞いてもらうことは心の安定には有効ですが、根本的な解決にはなりません。子どもだけで解決が困難な場合には、信頼できる大人に相談します。とくに友だちが、死について書いている場合、けっして軽視しないでください。多くの子どもたちが、ラインで友だちに、「死ぬ」「死にたい」とメッセージを送り、それが何度か繰り返されて、周囲が「また言っている」「本気ではないのだろう」と思った頃に自殺をしています。

 うつ状態になると、物事を悪いほうへ、悪いほうへと考えてしまいます。自分の思考や感情だけでなく、行動までがコントロールできなくなることがあります。友だちに「誰にも言わないで」と言われていて、約束を破ることになったとしても、大人に相談しましょう。

 あなたの「死んでほしくない」という思いは、いつかきっとわかってもらえるでしょう。一方、相談内容を他の仲間に伝えてしまうと、それがうわさとして広がり、かえって相手を追いつめてしまうことがあるので、やってはいけません。

 いじめ防止対策推進法は、学校外でのいじめやネットいじめも対象にしています。各学校にはいじめ対策チームがつくられていますので、窓口を確認して相談します。ラインやツイッターでの書き込みは証拠になりますので、相手に消される前に、バックアップをとったり、日時がわかるような形で印刷したり、携帯やスマホの画面ごと写真を撮るなどして、証拠を確保します。学校に相談しても解決しない場合や、悪質性が高い場合には、警察に相談します。

 携帯も、スマホも、パソコンも、人間の生活を支える道具のひとつにしかすぎません。振り回されないように、あなた自身がしっかりと主導権を握ってコントロールしましょう。