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元クラスメート全員の抹殺”を企てる衝撃的サスペンスが日本上陸!いじめ復讐劇?

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深刻な社会問題である「いじめ」。被害者に一生消えない傷を負わせながらも、いじめた側の当事者、そして傍観者は「いじめられる方にも理由がある」などと開き直り、「過去のこと」として忘れてしまうこともある地獄。だが、ひとたびそうした被害者が「完全なる復讐」を誓ったとき、どんな悲劇が待ち受けるのか――。ここ数年人気を集める北欧ミステリ界に登場した期待の作家による『刑事ファビアン・リスク 顔のない男(ハーパーBOOKS)』(ステファン・アーンへム:著、堤朝子:訳/ハーパーコリンズ・ジャパン)は、過去の「怨み」を培養させ、ついに「元クラスメート全員の抹殺」を企てるという前代未聞の惨劇の一部始終を描いた、きわめて衝撃的なサスペンスだ。

 舞台はスウェーデンの地方都市・ヘルシンボリ。壊れかけた家族とやり直そうと故郷の街に引っ越し、しばしの休暇を楽しむつもりだった刑事、ファビアン・リスクのもとに、基礎学校9年生(日本の中3にあたる)時代の同級生・ヨルゲンが殺されたと新しい上司が伝えにくる。密閉された母校の技術室で惨殺された遺体の上には、被害者の顔に×がつけられた9年生時代のクラス写真。殴るなど「手」を使った暴力を奮うクラス一のいじめっ子だったヨルゲンの遺体からは、両手が切断され失われていた。

 犯人の不気味なメッセージをいち早く察知したヨルゲンの親友・グレンは自分にも復讐の手が及ぶことを警戒するが、あえなく次の犠牲者に。脚での攻撃を得意としていた彼は直視できないほど残虐な姿に変わり果てていた。やがて犯人として捜査線上に浮上したのは、彼らから凄惨ないじめを受けていたクラース・メルヴィークだった…。

 ファビアンをはじめとする捜査側の視点と、その裏をかく犯人の視点が交錯するスリリングな展開はスピード感満点。時折挿入される「いじめを克明に記録した謎の子供の日記」が犯人の強い動機を裏付けるよう作用する一方で、読者が安易に同情するのを冷笑するように陰惨な殺人が次々と起こるのもショッキングだ(なにしろ殺し方も因果応報的な後味の悪さで、怨念のおそろしさがじわじわくる)。ちなみにヘルシンボリデンマークと国境を接しているため捜査地域が両国にまたがり、スウェーデン警察とデンマーク警察の確執で捜査スピードが鈍化するという愚挙も描かれ、なんとも生々しい。

 実はこの物語、単純な「いじめ復讐劇」だけでは終らないのも大きなミソだ。ファビアンらが犯人と思われるメルヴィークを追いつめたと思われた矢先、予想を覆す思いもよらない秘密が私たち読者に明かされることになる。捜査がゼロに戻り大混乱する警察を尻目に、無関係の者をも巻き込みながら同級生の犠牲者は次々と増えていく。果たしてメルヴィークの他に、そこまでの強い動機を持つ人間などいたのだろうか……そしてこの謎ときこそが本作のタイトルにも通じる大きな「闇」にスポットを当てることになるのだが、そこはぜひ読んでのお楽しみにしてほしい。恐ろしいのは自己愛が肥大化した現代において、無意識の行動が相手の孤独の魂を深め、時に大いなる狂気を生み出すことがあるということ。ここまでいくケースは尋常じゃないが、私たち自身も気がつかないうちに誰かを傷つけ、加害者になっていることだってあるのかと思うとかなり後味が悪い。

 さて、最後に個人的におすすめの楽しみ方を。千街晶行氏も巻末解説でヘルシンボリをネット検索すれば地図でデンマークとの関係も納得できると指摘しているが、あわせて街の風景もチェックしてみてほしい。NYやLAなどの大都市ならいざしらず北欧の地方都市のイメージはわきにくいもの。実際に中世の面影が残る街並みをちょっとでも見ておくと物語をさらに鮮やかに感じることができるだろう…というか、こんな美しい風景の中で血も凍るような殺戮が秘密裏に繰り返されたかと思うと、石の壁に人々の怨念がじっとりと塗りこまれているような気がして思わずゾクッとするだろう。