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「いじめを訴えた子」への残念な対応の実態が「自殺へ」繋がる…

2013年に「いじめ防止対策推進法」が施行され、学校にいじめ予防のチームを設置、重大ないじめ事件が起これば第三者委員会が調査にあたることが義務づけられた。これで状況が改善されるかと思いきや、いじめ被害者の家族たちは委員会に対して不満がたまっていて──。

「理由を知りたい」

「息子は科学者になりたいと言っていたんですが、なんでこんなことに……」

2015年9月27日、ひとりの男子高校生が亡くなった。東京都立小山台高校1年生(当時)の高橋博司くん(人名はすべて仮名)がJR中央線大月駅山梨県)で電車にはねられ死亡した。母親の里美さんは悲しみながらも、疑念を持つ。

「なぜ、亡くならなければならなかったのでしょうか。その理由を知りたい」

里美さんが異変に気がついたのは、当日の夕方だった。博司くんのLINEに死をほのめかす投稿を見て心配になった友人が里美さんに連絡。状況がよくわからない中で里美さんは、自宅周辺や最寄り駅付近の立ち寄りそうな場所を探したが見つけられず。

「事故がありました」

捜索願を出していた警察から連絡があり、一緒に探していた知人と担任と副校長の4人で大月駅へ向かった。病院で博司くんと対面した里美さんは泣き崩れた……。

 

死の真相を知ろうと、里美さんは奔走。1週間後に博司くんのスマートフォンのバックアップから一部のデータを復元した。

いじめの有無は不明だが、その可能性を示すLINEでの友人とのやりとりやSNSでの書き込みを見つけた。

《死んでしまいたい》《飛び込みたくなった》

などと、自殺を連想させるような投稿があった。

博司くんが使っていた机

亡くなる直前、博司くんはSNSに《なんか全部のことにあきらめがついてきました》などと書き残していたことから、何らかの悩みを抱えていたことがわかった。

また、親しい友人複数と頻繁にメッセージ交換をしており、友人からは《君を助けたい》というメッセージも残されていた。

それらのSNSの投稿を見た里美さんは、「いじめがあったのではないか」と学校側に相談したのだった。

「“調査中だから説明できない”は本末転倒」

2013年9月に『いじめ防止対策推進法』が施行。いじめの疑いがある自殺や不登校などの場合、学校や教育委員会が調査することが義務化された。

しかし博司くんが亡くなった後、同校では記名式で「心と身体の健康調査」を行ったものの、いじめ関連の調査は行われなかった。

学校の調査が不十分と感じた里美さんは昨年末、同法に基づく調査を都教委に要望。そして今年1月に都教委は、「いじめ問題対策委員会」のもとに「調査部会」を設置した。都教委としては初めてのケースで、いじめの有無や自殺の原因、学校や都教委の事後対応についても調査するもの。

しかし実施された生徒へのアンケートは遺族が要望した内容ではなかった。「中間報告をしてほしい」という要望も受け入れられず、調査の進捗は不透明。“ずさん”な対応に遺族の不満はたまっていく。都教委は「調査部会があるたびに、遺族に説明をしている」というが、里美さんは「具体的な内容が知らされることはない」と話す。

 

少しでも内容を知りたいと里美さんは情報公開請求をした。すると今度は、調査委の資料だけでなく、生徒の「交友関係」を示した資料も、「調査の争点」との理由で、黒塗りだった。わかったのは、亡くなった9月だけでも4回、保健室に行っていたということだけ。

里美さんが情報公開請求して得た資料。ほとんどが黒塗り状態

その後、都教委と交渉した結果、調査の一部は開示されたのだが、いじめの有無、他の生徒との関係、将来の進路に関する悩みなどについても知らされることはなかった。

里美さんは「調査内容は形式的なことしか教えてもらえず、資料も黒塗りでは何が書いてあるかわからない。親の知る権利を侵害しているのではないでしょうか」と語る。

都教委の担当者に問い合わせると「遺族に納得してもらえてないことはわかっています」としながらも、「事実を調べ尽くしたというところまで調査します」と回答。

しかし、『いじめ防止対策推進法』の立法者で民進党小西洋之参議院議員によると、

「学校や教育委員会は調査内容を被害者家族の方々に説明する責任があると法律で義務づけられています。学校や団体が“調査中だから説明できない”というのは本末転倒ですし、まことに遺憾です。誰よりもお子さんを大切に思う親御さんに説明することが委員会の役目なので“説明できることから逐一してください”と常に伝えています

法律で定められているはずの調査報告をしないのなら、被害者側が怒るのも当然だ。

「市教委の対応にはバカにされていると感じた」

2013年11月、神奈川県相模原市内の中学2年生(当時)の横山徹くんが自殺を図り、搬送先の病院で息を引き取った。

徹くんは発達障害アスペルガー症候群)と診断され、友人とのコミュニケーションが得意ではない子だった。

「小学生のころからいじめを受けていました。相性がよい子と悪い子の差がありました」(母親の祐巳さん)

自殺当日の夕方、妹の樹里さんが徹くんに用事があって部屋に行くと、自殺を図ったところを発見。すぐに救急車を呼んでその際は一命を取りとめたものの、10日後に病院で死亡が確認された。

「学校でのいじめか、その対応が理由なのかと思っていました。それがなければ死を選ばないと思います。家では自傷行為もしませんし、まさか、自分の子どもが自殺するなんて……」(前出・祐巳さん)

 

当初から祐巳さんは学校側に「自殺の背景調査をしてほしい」と訴えていたが、学校や市教委は、調査を渋った。調査委設置を希望した際にも不満が残った。祐巳さんは「遺族推薦の調査メンバーを入れてほしい」と希望したのだが、相模原市の市教委からは「中立公正でなくなる」と断られたという。その後に調査委が設置されるが、生徒へのアンケート調査も行われない日々が続いたという。

「2年生の終わりごろ“きちんと調査をしてほしい”と言っても、なかなか動いてくれませんでした。結局、卒業間近にアンケートをすることになったのです」

アンケート調査の動き始めも遅く、しかも同じクラスと部活のメンバーに限定。

「学校でも市教委でも、重大事案と認識していませんでした。そのため、当初は教員に対する聞き取りだけ。市教委の対応にはバカにされていると感じました

「子どもがどれだけ苦しんでいるか理解しているのか」

同じ相模原市で2015年9月のある夜、小学4年生(当時)の渡辺春樹くんが自殺を試みようとした。たまたま通りかかった警察官に保護されたのは幸運だったのだが―。

家を飛び出て行く直前、春樹くんは「しにたい」などとメモを書き残す。実はその数日前、日記にこう書いていた。

《何でいじめはなくならないのですか? ぼくをいじめる〇〇に消えてほしいです。みんなが消えないなら、僕がしにたいです》

家を飛び出て行く直前、春樹くんが書き残したメモ

警察に保護されて8日後、学校側が家庭訪問に訪れた際に、父親の慎也さんは思いの丈をぶつけた。

「1年生のときもいじめを受けていて、当時からの学校対応の悪さを考えれば、怒らない父親はいないと思います。子どもがどれだけ苦しんでいるのか理解しているのか」

 

春樹くんが自殺未遂をする数日前に書いた日記には悲痛な叫びが

保護者も学校も“当事者”のため、中立性のある調査委ができればいいのだが、設置には至っていない。慎也さんはこう語る。

「息子も一歩間違えれば死んでいました。このままでは加害者のほうが天国。市教委では“いじめがあったと認識している”が、調査はしないと言うのです」

教育委員会や市町村は自分たちの責任にしたくない」

学校や市教委、調査委の対応が遺族の納得を得られないことがある。

いじめ問題に取り組むNPO法人『ジェントルハート』理事の大貫隆志さんは初期調査について問題を指摘する。

「(重大事態の)直後にアンケートを取らないと難しい。時間がたつと噂が回ったり口止めされたりして子どもたちの記憶が新鮮でなくなります」

調査委が被害者家族の知らない間に設置されていることも多々あるという。いったい誰のための調査なのか。

「対策委員会はあまり機能できていないのが現状です」

と話すのは、『いじめの構造 なぜ人が怪物になるのか』(講談社)の著者で、明治大学文学部の内藤朝雄准教授。

「いじめ事件で“重大事態”と認定されると、第三者委員会が発足して調査にあたるのですが、被害者の家族ともめるケースは非常に多いです。というのも、地元の教育委員会や市町村は自分たちの責任にしたくないという思いから事実を隠蔽する体質があるからです

『いじめの構造 なぜ人が怪物になるのか』(講談社)の著者で、明治大学文学部の内藤朝雄准教授は、調査委員会などを頼りきることに対して警鐘を鳴らしたうえで、

「犯罪にあたるいじめが起こった場合は、隠蔽することが利益になる学校や教育委員会、調査委員会に頼らずに弁護士と一緒にすぐさま警察に駆け込むことが大切です。弁護士を伴うことで警察も本腰で調査にあたらなければならなくなるからです。仮に子どもが暴力、精神的なダメージを受けて不登校になった場合は、病院でもらった診断書を出せば有力な証拠になります

いじめ自殺を未然に防ぐために

いじめ発生後の調査はもちろんだが、大切なのは、いじめによる自殺を絶対に防ぐこと。『いじめ防止対策推進法』の立法者で民進党小西洋之参議院議員は、

「“予防・早期発見・事案への対処”の3つが肝要です。これらを達成するために『いじめ防止対策推進法』を作り、その中で“すべての学校にいじめ対策チームの設置”と“いじめ防止プログラム”の義務化に至りました」

過去のいじめ事件を踏まえた結果というのが同法。

「過去の自死事件で、いじめの対応能力がない担任教諭がひとりで抱え込んでしまうケースがありました。しかしチームならば複数の教諭の力で対応できる。さらに、チームの活動を生徒側が認識すれば“学校が総力をあげて対策をしている”と感じることで、被害者もその周りもいじめを通報できる雰囲気になっていくはずです」(前出・小西氏)

しかし現状は、これらの存在を知らない子どもや親が多い。

「いまだにこれらの対策が浸透していないことが自死から救えていない最大の原因です。法改正の議論も始まり、今までの条文よりも詳細で強固な記述にするつもりです」(前出・小西氏)

一方で、前出の内藤氏は「親は、“子どもが本気でやろうと思えば、いじめられていることを完璧に隠すことができる”ということをしっかりと認識することが大切」だと語る。

「その認識を持ちつつ、何かのキッカケで気づいた場合、教員がよっぽど信頼できるときは学校に相談してもいいと思いますが、そうでないことも多いので、すぐに法的手段をとる、あるいは損失が少ない段階で転校する、といったことも選択肢のひとつです」

悪口などのコミュニケーション系のいじめは“記録”を取ることが大事なんだとか。

メモや録音などできちんと記録を取り、弁護士に頼んで加害者に“やめなければ法的措置をとることも考慮している”という内容証明郵便を送るという手段もあります。相手の親は驚いて“もうあの子とは接触するな!”となりますし、加害者本人も“いじめで損はしたくない”“これ以上やると面倒なことになる”と思ってくれるかもしれません」(前出・内藤氏)

調査委員会の対応もしっかりしてほしいものだが、それ以上にいじめによって苦しむ子どもをひとりでも減らすような社会を大人がつくらなければならない──。