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貧困といじめ

〈子どもたちよ 子ども時代をしっかりとたのしんでください。おとなになってから 老人になってから あなたを支えてくれるのは子ども時代の「あなた」です〉

 「クマのプーさん」や「ピーターラビット」などの翻訳で知られる児童文学者、石井桃子さん(1907~2008)が晩年に残したメッセージである。

 心から安心して笑い、伸び伸びと子ども時代を過ごすことが、その後の人生を支える「生きる力」を育む-ということだろう。

 経済の成長が鈍ったとはいえ、日本は今も総じて平和で豊かな国である。にもかかわらず、おびえや不安を抱えながら、日々を送る子どもがたくさんいる。

 石井さんの言葉をかみしめながら、子どもを取り巻く切実な現状に改めて目を向け、問題解決の在り方を考えたい。

 ●負の連鎖を断ち切るには

 厚生労働省は今年7月、平均的所得の半分に満たない世帯で暮らす子どもの割合を示す貧困率(15年時点)を公表する。公表は3年に1度で、前回(12年時点)は16・3%と過去最悪を更新した。

 子どもの貧困率はこの20年ほど、おおむね上昇傾向にある。歯止めはかかったのか。最新のデータを踏まえ、政府は貧困対策の成果と課題を検証する必要がある。

 西日本新聞は子どもの貧困などを考えるキャンペーン「子どもに明日を」を展開している。

 貧困の実態をつぶさに報じる一方、子どもたちに食事と居場所を提供する「子ども食堂」の開設を後押ししてきた。九州各地の子ども食堂はこの1年で10倍以上も増え、約120カ所に上る。地域の絆と包容力を示す活動である。

 その一方、運営資金や人材の不足といった課題も浮かび上がってきた。広く市民の理解を得ることはもちろん、自治体や企業による援助や協賛の輪を広げ、息の長い取り組みとして支えていきたい。

 無論、世代を超えた貧困の連鎖を断ち切るには、親と子を対象とした包括的な支援が不可欠だ。

 ひとり親世帯の実に5割以上が貧困状態にある。実効性のある就労支援や住宅の確保、教育費負担の軽減など、支援のニーズは多岐にわたる。当事者の要望を踏まえ、着実に実行へ移したい。

 貧困の背景には、不安定な非正規雇用の増加や所得格差の拡大など社会の構造的な問題がある。税負担と社会保障のバランス、所得再分配の在り方など国民的な議論を深めることが重要だ。

 ●「生き地獄」という現実

 〈生き地獄のような毎日でした〉。新潟市の男子高校生が昨年11月、電車にはねられて死亡した。自殺とみられる。親が公表した遺書に、いじめを受けた日々の悲痛な思いがつづられていた。

 〈楽しい〉はずの子ども時代が〈生き地獄〉に暗転する。その苦しみと憤りは察するに余りある。

 いじめ防止対策推進法(いじめ防止法)の施行から3年が過ぎた。教育現場では、いじめ根絶を目指す懸命の努力が続く。

 教員はいじめに敏感になったという。確かにいじめの認知件数は増えている。だが、児童生徒千人当たりの都道府県別の認知件数は最大約26倍もの開きがある。防止法の精神が幅広く浸透しているとは言い難いのが現実ではないか。

 残念ながら、いじめを苦に自殺に追い込まれる子どもは後を絶たない。第三者委員会が調査した結果、学校側の対応の鈍さが明らかになることも珍しくない。

 スクールカウンセラーなどが教員と協力する「チーム学校」の実現などで、教職員が余裕を持って子どもと向き合える環境を整えることが喫緊の課題だろう。

 学校任せにせず、地域もできることから協力したい。いじめられた子どもの避難所のような場所が地域にあって相談相手もいれば、助かる命はきっとあるはずだ。

 いじめも貧困も、教育や医療・福祉の専門家だけで解決するのは難しい。子ども食堂の開設や運営で発揮されたコミュニティーの力が必要だ。深刻化する児童虐待の防止にも通じることである。

 言うまでもなく、子どもは私たちの「未来」そのものだ。貧困によって将来の可能性を不当に制限されることなく、いじめや暴力とは無縁の環境で、屈託のない子どもの笑みがはじける-。そんな社会の実現を目指していきたい。