「ネットいじめ」は、子どもの自尊心にとって重大な脅威となります。私たちは、5歳の子供がiPhoneを手にする時代に生きています。小学6年生ともなれば、良いものも悪いものも含めて、インターネットが提供するあらゆる情報にアクセスすることができます。
子どもを傷つける危険はいたるところに潜んでおり、親がそのすべてを監視することなど到底できません。近年、「ネットいじめ」が注目を集めているのは、親や教師がネットいじめを防止することがほとんど不可能だからでもあります。
親であれ教師であれ、、子どもにインターネットのエチケットを教えることは重要です。しかし、それだけでネットいじめの危機が去るとは思わないでください。いくらやめるように言い聞かせても、実際にどうするかは子どもたち次第です。
私は、大人と子どもに治療・診断サービスを提供している、シカゴの開業医Sankofa Psychological Servicesで働いているときに、ネットいじめについて調査したことがあります。
同僚と私は、ネットいじめとその対策を扱っている心理学の権威文献を調べました。そして、そこから学んだことをプレゼンテーションにまとめ、教師や管理者がこの問題を理解するのを助けるべく地域の学校でセミナーを開き、政策提言を行いました。
ネットいじめを止めるために親ができることが3つあります。
1. ネットいじめが蔓延していることを認める
あなたの子どもも、必ずネットいじめを目撃しているか、被害者となっているか、あるいは加害者となっています。
調査によると、3〜24%の子どもが現在ネットいじめを受けており、72%以上の子どもがこれまで少なくとも1件のネットいじめを体験したと報告しています。ネットいじめは5学年(10歳)から8学年(13歳)にかけてピークを迎え、高校生になると減っていきます。
2. ネットいじめが深刻な結果につながることを理解する
ネットいじめを受けている子どもは、そうでない子どもに比べて、自殺を試みる確率が1.5倍高くなります。
研究により、ネットいじめに遭っている子どもは、昔からあるいじめよりも、うつ病や自殺念慮に陥りやすくなることがわかっています。また、ネットいじめをされている、あるいはしている子どもは、そうでない子どもに比べて、アクティングアウトや問題行動が多く見られます。
ですので、あなたの子どもが落ち込んでいたり、アクティングアウトを起こしたときは、ソーシャルメディアなどで何か問題が起きていないかを尋ねてみてください。また、専門家の助けを借りるのを躊躇してはいけません。
3. 傍観者効果がネットいじめを最も助長することを理解する
傍観者効果とは、周囲に人が多くいると、誰も率先して被害者を助けようとしなくなる社会心理現象のことです。集団の人数が多くなるほど、個人が行動を起こす可能性は低くなります。
ネットいじめでは、傍観者が非常に重要な役割を果たします。傍観者がいることで、被害者が感じる恥ずかしさが強められ、ネガティブな影響が大きくなります。
さらに、傍観している子どもたちが、いじめに追従し、いじめに遭っている子どもを笑うようなことがあれば、被害者の心はいっそう傷つき、孤立感は深まります。逆に、傍観していた子どもたちが口を開き、そんなことはするべきではないと加害者に抗議すれば、いじめが繰り返される可能性は低くなります。
ですので、傍観している子どもたちに、いじめをしている子どもに抗議するよう促すことが、ネットいじめに対する最も効果的な介入となります。いじめを受けている子どもをインターネットから遠ざけても、孤立感を高めることにしかなりません。インターネットを通じた社会生活すべてがなくなってしまうからです。
あなたの子どもがネット上で安全に過ごすことを願うなら、本人や周りの子どもに、ネットいじめに反対し、立ち上がるように話してください。あなたの子どもや周りの子どもが、仲間を助けるために立ち上がれば、いじめも起こりずらくなり、被害を受けた子どもの傷も深刻にならずにすみます。
ネットいじめはすぐにはなくならないかもしれませんが、あなたの子どもに、仲間を守るために積極的に行動するように励すことは、今後の人生を通じて重要なメッセージとなるでしょう。