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いじめられていた僕が伝えたいこと…

いじめを防ぐため、国内で初めて法制化された「いじめ防止対策推進法」施行から来月で4年になります。しかし、いじめが原因で子どもたちが命を絶つ悲しい事件は一向になくなりません。

 追い詰められている子どもをひとりでも助けたい ── 。そんな思いから、涙活プロデューサーで離婚式などの活動を手がける寺井広樹さん(37)が、ミュージシャンのTM NETWORK木根尚登さんといじめをテーマにした絵本を作成しました。「いじめられていた過去が恥ずかしくてずっと話せなかった」という寺井さんの実体験も描かれています。

「生きている意味がない、価値がない、なんて思わないで。長い目で見てほしい」。時計の針を逆回転させ、つらかったあのときの自分へ。そして現在苦しんでいるあなたへ。心に負った何層もの傷も、やがてかさぶたになり、はがれ落ちていくように、今だから伝えられる想いとメッセージが絵本にこめられています。

「いじめを受けた体験生かせないだろうか」

高校時代の実体験を基に、TM NETWORK木根尚登さんといじめをテーマにした絵本『「おに」と名づけられた、ぼく」を出した寺井広樹さん

 絵本のタイトルは『「おに」と名づけられた、ぼく』(寺井広樹・原案、木根尚登・文、もずねこ・絵:TOブックス、2017年7月10日出版)。きっかけは昨夏、涙を流すことで心のデトックスを目指し開かれた7月9日泣くの日にちなんだ寺井さんの涙活イベントに、木根さんが出演したことでした。

 会場で木根さんは、10年前にNHKみんなのうたで放送されていたいじめを題材とした自身の曲「ノックは3回〜Knock Three Times〜」を披露。寺井さんが「高校時代にいじめを受けた自分の体験を生かせないだろうか」と打ち明けたところ、「是非、一緒にいじめ撲滅・自殺防止の活動をしよう」と提案され、今回につながった、といいます。

ひとりぼっち トイレで食べた弁当

 「20年経ってもいまだに心の傷が癒えていないところがある」。絵本に取り組む中、寺井さんはあらためて気づかされました。

 「おに」と名づけられた主人公の男の子が、クラスで仲間はずれにされ、居場所がなく、トイレの個室でひとりぼっちで弁当を食べる場面。それは多感な高校生のとき、ひとりでいるところを見られたくなくて、生物の実験室やトイレの中で弁当を食べていた寺井さんの実体験がもとになりました。

「何がきっかけなのかわからなかったですね。高校2年になって、突然気が付いたときには、周りに誰もいなくなって、ひとりっきりになっていましたね」。

 無視され、からかわれ、物を投げつけられ……。やがて絵本の「おに」は、鏡に映った自分の姿を見ながら、悲しくてたまらないのに、涙が出てこないことに気づきます。

「防衛本能が働くんでしょうか。ひどいことされていても、当時は不思議と涙が出なかった」。
 当時の寺井さんの心境を「おに」の姿と重ね合わせました。

「お母さんはあなたの味方」 ── 必ずだれか愛してくれている

トイレでひとり弁当を食べた思い出を反映させた絵本の一場面

 泣けないほど追い詰められ、心を閉ざしていた寺井さんには大切な忘れられない思い出があります。

「お母さんはあなたの味方よ」。

 自分は生きている意味があるんだろうか……。修学旅行先で、そんなことを考えながら、開いた弁当箱には母親からのメッセージが添えられていました。

「大好きな家族に心配かけたくなくって、いじめられていたことは言えなかった。でもちゃんと親はわかっていたんですね。私は幸運なことに親に恵まれていました。不思議ですね。つらくても泣かなかったのに、あったかくされて、思わず涙が出ちゃいました」。

 ようやく自分の体験を話せるまでになった、という寺井さん。だからこそ、自分の存在意義を否定するような考えに凝り固まってしまっている思春期の子どもたちに「必ず地球上のだれかが愛してくれている、って伝えたい」と語ります。

「好きな人同士」 先生の言葉が“ひとり”を再認識させる

「学校の先生の意識も変えなきゃと思っている」と、寺井さんはいいます。

「いじめられる方にも原因があると思っているのか、先生は助けてくれなかったですね。見て見ぬふり」。

 2013年施行のいじめ防止対策推進法は、いじめの早期発見や対応など、学校の責務を明確化しました。しかし昨年、文科省が発表したいじめの認知件数は過去最高で、いじめが原因と見られる自殺は一向になくなりません。

 寺井さんは「学校の生活は閉ざされていて、子ども達にとっては世界の全て。逃げ場がない」と訴えます。

「グループをつくるときに『好きな人同士で組んで』と先生が指示しますよね。ひとりでも別にいいや、と思っている子もいるかもしれないのに、その言葉でひとりでいることを再確認させられるんです。友達はいなきゃいけない、自分はひとりだ、と再確認させられる」。

 無料通話アプリのLINEや会員制交流サイトSNSという新たなツールが普及したことも、子どもたちの関係をより複雑にしていないか、心休まる時間がなくなる原因になってはいないか、気にかけます。

「今の子どもたちは、SNSの擬似友達、薄い友達関係に慣れてしまい、そんなことはたいしたことではないのに、グループから外されたり、悪口書かれたり、いつ仲間はずれにされるか気が抜けないのでは。これでは、せっかく学校から離れて家にいても、見なくていいものまで見えてしまう」。

 周囲の大人が、ますますいじめの実態を見つけにくくなっている可能性がある。だから自ら「親でも、信頼できるのなら、近所のおじさんだっていい。必ずだれかに助けを求めてほしいですね」と強く願います。

「人と違うことは立派な個性になる」 ── 願いをこめて9月10日にはいじめ撲滅のイベントも

 世界自殺予防デーの9月10日、寺井さんは木根さんといじめ撲滅と自殺予防をテーマにしたイベントを都内で催します。木根さんが絵本の読み聞かせをするほか、いじめで悩んでいる子どもたちに寄り添い、少しでも勇気が湧いてくるよう願いをこめて寺井さんが作詞、木根さんが作曲と歌を担当した新曲『ともしび』の披露などを予定しています。「いじめは大人も、正面から向き合いにくいテーマだと思う」。そこで、将来的には多方面で活躍するアーティストに参加してもらい、いじめフェスを催すなど、工夫を凝らした働きかけができれば、と考えています。

 かつていじめを経験し、大人になって話せること。「人と違うことがいじめの原因になるかもしれないけど、やがて立派な個性になる」。思春期は視野が狭くなるかもしれないが、絶対に長い目で見てほしい。「いじめからは逃げて。でも生きることからは逃げないでほしい」と言葉を続けます。

 絵本では「おに」が自分がいかに愛されて生まれてきたか、必要とされている存在なのかを知り、ほかの人とは違う自分を受け容れることで強くなります。

「本を読んでもらってひとりでも救えたら、いじめられた甲斐もあった。今はそう思えます」。