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いじめではなく「ゲーム、遊びだった」…

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「この6年間で、息子への謝罪の気持ちを持ったことはありますか」。中学生の息子を亡くした父は法廷でこう問いかけた。平成23年に大津市立中2年の男子生徒=当時(13)=が自殺したのは「いじめが原因」として、遺族が元同級生らに損害賠償を求めた訴訟。昨年秋から年末にかけ、大津地裁で元同級生らの証人尋問が行われた。事件から6年を経て、初めて法廷に立った元同級生ら。いじめ防止対策推進法が制定されるきっかけにもなった大津いじめ事件だが、公開の場で元同級生は何を語ったのか。(取材班)

真相解明は民事の場へ

 男子生徒が亡くなったのは、平成23年10月11日。大津市内の自宅マンションから飛び降り自殺した。その後、市教委が学校内で実施したアンケートなどから、男子生徒が同級生からいじめを受けていたことが判明。市が設置した第三者調査委員会は報告書で同級生らによる男子生徒への行為を「いじめ」と認定し、「いじめが自殺の直接的な要因になった」と結論づけた。

 男子生徒の父親は24年7月、3人を暴行や恐喝などの罪で刑事告訴。このうち当時14歳だった2人は滋賀県警が暴行容疑などで書類送検し、大津地検大津家裁に送致。13歳だった1人については、県警が暴行などの非行事実で児童相談所に送致し、児相が大津家裁に送致した。

 大津家裁での少年審判では、あおむけにした男子生徒の口の上にハチの死骸をのせた行為や顔にペンで落書きするなどした暴行を認定。家裁は男子生徒のクラスメートだった当時14歳と13歳の2人に保護観察処分、当時14歳で別のクラスの1人については「頻度が少ない」として不処分の決定を出した。

一方、遺族は24年2月24日、元同級生3人とその保護者、市を相手取り、約7720万円を求めて大津地裁に提訴(後に市とは和解)。訴訟では昨年9~12月に計4回に分け、遺族や被告の元同級生3人とその保護者、当時担任だった男性など計12人への尋問が行われた。

「遊びだった」

 口頭弁論はそれまで20回以上にわたり開かれてきたが、元同級生が出廷する初の尋問には傍聴券を求めて多くの市民が訪れ、関心の高さがうかがえた。

 尋問は傍聴席から見えないよう、衝立をたてて行われた。訴訟の争点は、いじめと自殺の因果関係。これまで元同級生3人はいじめの認識を否定し「遊びだった」などと主張してきたが、今回の尋問でも3人は終始、「いじめだった」との認識を示すことはなかった。

 一方で、男子生徒と元同級生らの当時の様子が直接語られ、状況が少しずつ明らかになった。

 男子生徒と同じクラスだった2人は、趣味のゲームを通じて意気投合したといい、休み時間や放課後を一緒に過ごすようになった。夏休みには大阪市ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に出かけたり、元同級生の親に連れられ、琵琶湖にも遊びに出かけたという。

 元同級生の両親は男子生徒と息子が遊んでいた様子について「仲むつまじいとしか言いようがない」「和気藹々(あいあい)としていた」と証言。別の元同級生の母親は男子生徒について「とても明るくて元気な子」と話し、ゲームをして遊ぶ様子を語った。

「リアクションを楽しむエンターテインメント」

 楽しく遊んでいたはずの男子生徒と3人の関係はいつから変化していったのか。市の第三者調査委員会は、徐々に同じクラスの2人を中心に男子生徒への行為がエスカレートしていったと指摘している。

1つは「プロレスやボクシングごっこ」と称し、男子生徒がヘッドロックをかけられていたことだ。当初は足をかけ合う程度だったが、徐々にエスカレート。クラスメートだった元同級生の1人は法廷で「ヘッドロックや寝技を毎日かけたときもあった」と述べた。しかし、いずれも「遊びだった」といい、「嫌がっているとは思わなかった」と述べた。

 もう1人のクラスメートも「男子生徒以外のメンバーにもかけていた」と遊びを強調したが、「男子生徒から技をかけられたことはなかった」と話した。

 そのうち男子生徒と元同級生3人は遊びとして、じゃんけんで負けたら「罰ゲーム」を課すようになった。尋問で3人は、体育大会で男子生徒を押さえつけて顔や手足に粘着テープやハチマキを巻き付け、蜂の死骸を食べさせようとした行為は認めたものの、目的を問われると1人は「リアクションを楽しむエンターテインメントのようなものだった」と話した。

「死ね」は「あいさつ程度」

 男子生徒への理由のない行為は続いた。顔に一方的にペンで落書きしたこともあった。法廷で「男子生徒の気持ちを考えたことはあるか」と問われたクラスメートの元同級生は「僕が(同じことを)されている立場なら、笑いが取れるのでおいしいと思う。屈辱だけだったと思っていない。(一連の行為で)身体的、精神的に傷つけた認識はない」と述べた。また、男子生徒に「死ね」と言った理由を問われた別のクラスの元同級生は「あいさつ程度」と話した。

 尋問では、2年の2学期以降にエスカレートした男子生徒への行為について、原告側の弁護士らが詳細に行為の内容や目的を問いただしたが、元同級生らは一貫して「遊び、罰ゲーム」と説明。「男子生徒はいじられ役で嫌がっていなかった」としたほか、詳しい話になると「覚えていない」との答えも目立った。

尋問は当時の男性担任にも行われたが、元担任は男子生徒から「家に帰りたくないので野宿をしている」などと聞いたことをあげ、「男子生徒は家族との関係で悩んでいたように見えた。友人関係で困っているとは感じなかった」と述べた。元同級生が男子生徒に馬乗りになっている場面などを目撃したことはあったが、「じゃれ合っていると思った」などと話し、いじめを受けていたとの認識はなかったとした。

「謝りたいことはたくさんある」

 12月14日、尋問はすべて終了。今後は双方が最終意見書を提出し、5月8日に結審する。

 尋問終了後、報道陣の取材に応じた遺族の代理人弁護士は「第三者調査委員会、少年審判、学校の調査と、いろんな角度から光を当てて事件の全体像が見えてきた」と語った。一方で「遺族は率直に心の中で思っていることを聞きたかった。大変複雑な気持ちを抱いている」とも明かした。

 すべての尋問を見届けた男子生徒の父親は、法廷で元同級生3人に「この6年間で、息子へ謝罪の思いを持ったことはあるか」と問いかけた。

 返答は、1人が「彼が生きていたらしゃべりたいこと、謝りたいことはたくさんある。6年間忘れたことはない」。もう1人は「ない」。残る1人は「話し合いたいと思った。何に悩んでいたのかをずっと聞きたいと思っていた」と述べた。

男子生徒の両親や姉は、男子生徒の異変に気付けなかったことを悔やみ、「(元同級生らは)犯した罪に向き合い猛省してほしい」「いじめがあったことを認め、謝ってほしい」と涙ながらに訴えた。

 発生から6年半、それぞれの関係者に深い傷跡を残したいじめ事件。裁判所はどんな判断をくだすか。