小4~中3が作った映画を対象にした「日本こども映画コンクール」(毎日映画社、毎日新聞社主催)の入賞作品が発表された。グランプリに輝いたのは、島根県の出雲市立浜山中の放送部が、いじめをテーマに作った9分弱の「届かない声」だ。すっきりしないラストシーンを見て、頭グルグルだ。いじめられる役で出演している放送部長の長島紗子さん(中2)に、映画にこめたメッセージを聞いた。【編集長・西村隆】
--なぜテーマにいじめを選んだのですか。
保健の授業で、自殺が中学生の死因の上位にあると知って、心に残っていました。病気や事故で命を落とすことは、運命かもしれません。しかし、いじめによる自殺はそうではないと思います。いつかいじめを作品にしたいと思っていました。
--考えさせるラストシーンにした理由は。
台本では、いじめが解決して仲良くなるハッピーエンドと、後味の悪いバッドエンドの両方用意していました。先生や親からは「せっかくだからハッピーエンドにしたら」と言われました。でも本当のいじめに終わりなどありません。ハッピーエンドは物語の中だけです。
--自分の体験を参考にしましたか。
小学3、4年生のとき、いじめというより「いじり」にあいました。いじめる側にはいじりでも、される側にとってはいじめでした。「周りが気づいてくれない」「親に話したら迷惑がかかる」と当時書いたノートが出てきたので、映画作りの参考にしました。
--どのようないじめだったのでしょう。
「こびとづかん」が人気だったので、つい「こびとは本当にいる。見たことがある」とうそをついたのです。中学生の今から振り返るとたわいないうそです。毎日、朝礼と終礼の時間に「こびといるんだろう。こびとを見せろ」と責められました。「見せるよ」と家に呼んでしまい、さらに「いないじゃないか」と責められました。4年の後半に、これではだめだと勇気を振り絞り、「やっぱりこびとはいなかったけん。ごめんなさい」と告白しました。
--いじめに悩む小学生にアドバイスをください。
仲良くしようとか、助けようとか、できないことを言うつもりはありません。一人でいいので周りの誰かが声をかけてほしい。ただ話しかけるだけで、いじめられている人は落ち着きます。
--「届かない声」を見る人にメッセージを。
ラストシーンの授業風景の端に、いじめられ役の私が映っています。だれも気づかないように入れました。それを見て、物語の続きを考えてください。
※「日本こども映画コンクール」で検索して、ホームページから「第2回結果発表&作品上映」をクリックすると「届かない声」を見ることができます。