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小6女子達 "悪夢のいじめパーティー"

子供たちはなぜ残酷ないじめに走るのか。そして、もしわが子がいじめ被害者になったら、どんな対応をすればいいのか。これまでに5000件以上の相談を受け、今も解決に奔走する私立探偵が、「いじめの現場」を解説する。連載第1回は、小学6年生の女子グループで起きた「悪夢のいじめパーティー」について――。
写真=iStock.com/Misaki Saito

いじめ行為は、そのほとんどが大人の世界であれば刑法犯に当たる。殴る蹴るなどは暴行罪、悪口を言う、暴言を吐くなどは名誉毀損(きそん)になるだろうし、加害者が被害者を思い通りに従わせているようなケースでは、その経緯に強要罪に当たる行為があるだろう。性的行為が伴うもの、自殺の練習をさせる行為などは、間違いなく犯罪そのものである。
また、仲間はずれについても、人権侵害行為であることは間違いない。限られたコミュニティの中に生きる子どもが、その仲間の中で存在を否定されるのであるから、心への傷害行為に等しいとも言えるのだ。

誕生日を祝ってあげると誘われて

ある小学6年生の女子児童のケースを見てみよう。自分の誕生日をクラスメートが祝ってくれるという話が持ち上がり、彼女はその会場となった友人の家に、目いっぱいおしゃれをして向かった。

実は彼女は、この友人グループ内ではいわゆる「いじられキャラ」扱いをされており、貸した物を返してもらえなかったり、グループ内で自分だけ外された別のグループが作られていたりすることに苦痛を感じていた。だからこそ、友人たちが誕生日を祝ってくれることがうれしかった。前日の日記には、祝ってもらうことの喜びや、普段は冷たい友人たちをほめたたえる言葉が踊っていた。

ところが、用意されたバースデーケーキのろうそくの火を吹き消したとたん、彼女は両脇にいた2人の女の子に後頭部を捕まれ、思い切りケーキに顔面を押し付けられた。顔はケーキまみれ、襟(えり)口なども生クリームなどでベトベトだ。何が起きたかわからずに顔を上げると、他の子たちはスマートフォンで何枚も彼女の写真を撮っていた。その場にいた全員が大爆笑しながら、写真をいろいろなLINEグループに送り始めた。

「やめて!」。そう抗議する彼女を、他の子供たりはむしろ攻め立てた。せっかくあなたがウケを取れるよう、ケーキを1つダメにしてまでみんなでお膳立てして「あげた」のに、怒ったり泣いたりするのはおかしい、と。

とっさにうまく反論できなかったものの、それでもこの場にいることが何より苦痛だと感じた彼女は、そこから逃げるように駆け出した。走りながら、「良かったね」と優しく送り出してくれた母の顔を思い出し、このまま帰ったら母を悲しませると思った。自然と、その足は家路ではない方へ向かった。

公園のトイレで顔を洗い、そのまま向かった先は、小学校低学年まで住んでいた団地だった。このままあそこから飛び降りたら、自分がどんなに苦しかったか、あの子たちにわからせることができるかもしれない。そんな思いと、母の笑顔が、彼女の頭の中で交錯した。

私は、彼女の母親からそれまでにも何度かいじめの相談を受けており、この件の一報を受けたときは、同じ区内で別の打ち合わせをしたその帰り道であった。人を探すのは私の得手な調査であったから、この女子児童が階段の踊り場で階下をのぞき込んでいるところを、無事保護することができた。

しかし、もしも私の発見が遅かったら、母の笑顔を思い出せなかったら――。ボタンが1つでも掛け違っていれば、彼女は自殺してしまっていたかもしれない。

反省しない子、逆ギレする親

この後、私は何が起きたかを聞き取ってから、被害者である彼女とその母とともに、いじめた側の連中に抗議しに行くことになった。彼らがばらまいた例の写真はすでに拡散しており、若干の「炎上」を起こしていた。

その場で反省し、謝罪をする親子もいたが、遊びだったと一切反省をしない子、子供のやることに親が出てくるのは間違いだと、抗議することそのものに反論した親もいた。そのくせ、自分が同じ目にあうことは嫌だとも主張する。

こうした子や親と話していると、未成年に強要して違法行為をさせたり、女性を脅してアダルトビデオに出演させるようなアウトローと、なんら変わらない思考回路の持ち主だということがわかる。そんな加害者とのぶつかり合いを経て、被害者は自らの常識や許容範囲を超えた、到底受け入れられないような別次元の考えを持つ人物の存在に気づくのだ。

ところが、クラス主義で団体行動を基礎とする学校社会では、このような危険な人物がいても、いじめの被害者は彼らと同じ空間で、表面上は仲間として過ごす事を強要される。法律上は、未成年の犯罪行為は刑法犯としては裁かれることはない。だが、いじめの加害者のしていることは犯罪行為と何ら変わらないのであり、被害を受けた者の心身の痛みは、法の定めとは無関係に、犯罪被害を受けた者と同じなのである。

それが、被害者が子どもだからという理由で、容易に癒やされたり回復したりするものだと考えていいのか。答えは否である。

大人になっても残る心のダメージ

いじめ事例ではよく、学校が介入して加害者による「謝罪の会」を急いでセッティングしようとして、被害者側がこれを「時期尚早」と拒否するケースがある。これこそ、学校側も加害者側もいじめ被害を軽く見ているから起きる事態だ。いじめの被害が、冒頭に述べたように犯罪被害となんら変わらず、被害を受けた者の心身の痛みも同等だと考えることができれば、学校も加害者もこんな愚かな対応はしないだろう。だが、実際にはこうした無神経な対応が無数に行われている。

被害者の心のケアなどについても、ほぼ無整備といえるくらい具体的な体制がない。いじめによる心理的ダメージは、被害者によって個人差があり、いじめ行為の状況によっても大きく異なる。そのためか、被害者に向かって「いじめへの耐性をつけるべきだ」とか「強くなれ」と要求するような、誤った指導も横行している。

私はあるSNS(会員制交流サイト)で、元いじめ被害者のコミュニティに参加しているが、30代を過ぎてもいじめのトラウマ(心的外傷)に悩み、心が壊れてしまったり、社会人として就業ができなかったり、人との距離感がうまく取れずに悩み続け、常に重いストレスの中で生活していたりする方が多数いることを実感している。

わが子のフォローは保護者主体で

もしわが子がいじめの被害を受けた場合は、保護者が主体となって、被害を受けた子のフォローをするしかない。学校への登校は、無理をさせる必要はない。特におなかが痛くなったり体調不良が出たりする場合は、欠席も重篤な被害を回避するための効果的な方法だと考えたほうが良い。

本来は、学校がカウンセリングの案内などをすることになっているが、案内がない場合や地域行政としてそのようなフォローがない場合は、自分でカウンセラーを探す必要がある。基本はダメ元ぐらいのつもりで相談し、カウンセラーとの相性が悪ければ、さっさと別のカウンセラーを探す。無償の電話相談などは、匿名で相談できる気軽さはあるが、筋が良ければラッキーぐらいに心得ておく必要があろう。