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いじめメモの隠ぺい、識者はこうみる

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 神戸市垂水区で市立中学3年の女子生徒が自殺し、いじめをうかがわせる他の生徒からの聞き取りメモが神戸市教委首席指導主事の指示で隠蔽(いんぺい)された問題が、波紋を広げている。この件から見えてくるものは何か。子どもを自死で亡くした母親、情報公開に詳しい弁護士、教育行政の研究者の3人に話を聞いた。(聞き手・西見誠一)

遺族の立場から 小森 美登里さん

 神戸市教委の首席指導主事らによる隠蔽行為は二重、三重の意味で罪深い。まず再発防止のためには真実に向き合い、何がいけなかったのかの検証が不可欠なのに、ふたをしてしまったこと。第二に、真実を知りたいと願う遺族の思いを踏みにじったこと。第三に、いじめの加害者の更生の機会を奪ったことだ。

 私は1998年に高校1年生だった一人娘を自殺で失った。娘は吹奏楽部でいじめを受けていたが、学校が部内で聞き取りをした調査結果を、「個人情報だから」との理由で見せてもらえなかった。

 昨年、「保護者の切実な思いを理解し、対応に当たること」をうたった文部科学省のいじめ調査のガイドラインができたのに、いつまでこんなことを繰り返すのか。行政がガイドラインを平気で無視するのなら、いじめ防止対策推進法に罰則規定を盛り込むことも検討すべきだと思う。

オンブズマンの立場から 新海 聡さん

 行政が集めた情報は誰のものか。政策遂行には正確な情報が欠かせないから、行政自身のものではある。同時に市民のものだ。たとえいま公開できなくても、将来的に市民が行政の判断をチェックできるようにしておく必要があるからだ。

 だが国、地方を問わず、事実の軽視が進んでいる。

 今回の問題は、南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報を、「廃棄した」としながら実際は保存していた陸上自衛隊の問題と似ている。公開しない理由を説明できないから、ないものにしてしまおうという構図だ。だが、事実をもとにしなければ議論もできないし、検証もできない。これでは行政判断の正当性が担保できない。

 証拠保全を決定した裁判所を欺いたことにも驚かされる。ほかの情報公開でも、神戸市教委は同じことをしているのではないかとの疑念すら浮かぶ。

教育学者の立場から 山下 晃一さん

 いじめ防止対策推進法は、被害者や保護者に対して必要な情報を適切に提供するよう定めている。首席指導主事なら専門性をもって実務にあたらなければならないのに、法の趣旨への理解が不足している。

 そもそも聞き取りメモが「存在しない」と言う選択肢はありえない。見せられない正当な理由があるのなら、説明を尽くした上で非開示にする方法もあったはずだ。その場合、当然、組織内で多角的に検討しなければならない。そういう意味でも、首席指導主事の独断を許していた神戸市教委の責任は重い。「縦割り」や「他人任せ」の文化があったのではないか。

 教育委員会制度は、市民の信託の上に成り立っている。様々な専門的判断も、市民に成り代わって行っているという自覚が必要だ。神戸市教委は、この原点に立ち返って組織文化を変えてもらいたい。

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 こもり・みどり NPO法人ジェントルハートプロジェクト理事。各地でいじめ防止の講演を続ける。

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 しんかい・さとし 弁護士。全国市民オンブズマン連絡会議事務局長。

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 やました・こういち 神戸大学准教授。専門は教育制度論。

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 〈いじめ調査メモ隠蔽問題〉 2016年、神戸市立中学校の3年の女子生徒が自殺した。いじめをうかがわせる他生徒からの聞き取りメモがあったが、市教委の首席指導主事が当時の校長に指示し、遺族に対しメモを隠蔽。遺族側の申し立てによる裁判所の証拠保全の手続きでもメモを提出しなかった。市教委は関係者の処分を検討しており、久元喜造(きぞう)市長は新たな調査委員会を立ち上げる方針を明らかにしている。