いじめニュース速報@イジ速

いじめ事件 ・イジメ ニュースを発信中!スマホいじめが増加!子供達をいじめから守ろう!

死なせないため、大人にできること

f:id:ryoushinn11:20180725155406p:plain

どうすれば今を生きる子どもたちが、いじめから抜け出せるのだろうか。岸田雪子氏は、『いじめで死なせない 子どもの命を救う大人の気づきと言葉』(新潮社)の中でいじめを受けた子、いじめた子、そしていじめを知っていた子の、それぞれの背景を取材しまとめている。
続けて、「大人が行動に移せること」を具体的に提言している。いったい、大人たちは何をすればいいのだろうか。提言部分を本書より転載する。

いじめを許さない集団をつくるために重要なこと

いじめを許さない集団をつくるために特に重要なのは、学校・保護者・地域の連携だ。

いじめはメンバーが固定した学校集団で発生する。そしてこれまで見てきたように、保護者や地域の人々が、いじめから子どもを救うきっかけを作ったり、時にはいじめの背景として子どもに影響を与えることもある。だから「いじめを許さない」ことを、学校と保護者、地域で共通した目標とすることが重要だ。

いじめを許さない集団づくりの責任者は、大人だ。そして具体的なアクションの主体となるのは、子どもたち自身だろう。いじめの当事者である子どもたちが、「いじめは自分たちの自由な権利を侵すもの」として拒否する意識を共有し、学校、保護者、地域の大人たちが責任をもって子どもたちをサポートする体制を作る形だ。

2013年に施行されたいじめ防止対策推進法でも、学校ごとに、いじめ防止に取り組む委員会などの組織を設けることが規定されている。そして保護者は子どもの教育の第一の責任者として、子どもたちの規範意識を養い、いじめ防止に協力するよう努める、などとされている。具体的にどうやって子どもたちを守るかは、それぞれの学校・保護者・地域の腕の見せ所だ。

いじめ研究の第一人者、ノルウェーの心理学者ダン・オルヴェウス氏を取材したことがある。世界20か国以上で導入されたオルヴェウス氏の「いじめ防止プログラム」では、共通のルールとして、次の4つの項目を提案している。

「いじめ防止プログラム」の共通ルール

1、私たちは、他の人をいじめません

2、私たちは、いじめられている人を助けます

3、私たちは、一人ぼっちの人を仲間に入れます

4、 私たちは、もし誰かがいじめられていれば、それを学校の大人や家の大人に話します

スローガンで終わらせないために、子どもたちは学級活動などで定期的に話し合う。特に3と4を根付かせることが大切。誰かを排除することはルールに反することで、大人に伝えることはルールを守ることなのだ、と子どもたちに浸透させるのだ。

大人に伝えることの大切さについて私が子どもたちに話をすると、彼らがよく口にするのが「大人にいじめを話した後、その情報がどう扱われるのかが分からないのが怖い」という不安だ。加害側からの報復につながることを恐れる子どもたちの心情はもっともで、大人側の説明が不足してはいないだろうか。

いじめ防止対策推進法の中身を、子どもたちにもわかりやすく伝えてほしいと思う。この法律には大まかにいえば次のような柱がある。

〈いじめを行ってはならない〉

〈いじめかどうかは、被害者が心身の苦痛を感じているか、で決まる〉

〈いじめが確認されたら、学校はいじめをやめさせなければならない〉

〈学校はいじめ防止の基本方針を定め、対策のための組織を作り、いじめの防止、早期発見、対応に努める〉

〈いじめによって子どもの命、心身、財産に重大な被害が生じたり、学校を休まなければならなくなっている疑いがあれば、学校は「重大事態」として特別な組織を設け、調査をしなければならない〉

いじめは法律で禁じられていること、いじめをやめさせることは学校の責任であること、重大な被害があれば調査が始まること、などを子どもたちに理解してもらう。いじめに対応する教師が誰なのか、「いじめ対策委員会」などの組織のメンバーや相談の扱い方を子どもたちや保護者にオープンに示しておけば、より信頼され、情報が集まりやすくなるはずだ。

オルヴェウス氏のプログラムでは、いじめが起きやすい「ホットスポット」の典型例もあげている。〈校庭〉〈ロッカールーム〉〈食堂〉〈トイレ〉〈階段の下〉〈近くに教室のない廊下〉など。そうした場所は、学校の休み時間などに大人が見守りをすることも効果があるとしている。

見守りは教師だけでなく、保護者を含めた地域ボランティアが参加することも有効だ。学校の閉鎖性を解き、多くの大人の目で見守ることは、いじめを許さないという大人のゆるぎない姿勢を行動で示すことであり、抑止にもつながる。

生徒会など、子どもたち自身が見回ることも効果があるだろう。いじめを許さない学校風土を育てることが大切だ。

イギリスのいじめ対策モデル

イギリスの学校で行われるいじめ対策モデルでは「子どもによるカウンセリング」が実施されていた。「反いじめ」に取り組む子どもたちのメンバーを決め、彼らが同級生や下級生のいじめの相談を聞く。

同年代のほうが話しやすい、という子どもは少なくない。クラスの中で孤立した時、別のクラスの友人や、他の学年の子どもとのつながりが支えになる子どももいる。子どもたち自身で解決する力を育てることは大切だ。同時に、子どもだけで抱え込まないよう、大人にも伝えることを前提とした最初のステップとして、子ども相談員は大いに活躍すると思う。

『いじめで死なせない: 子どもの命を救う大人の気づきと言葉』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

一人の独立した市民である、という意識を子どもたちに持たせ、自分たちで学校という社会を過ごしやすいものにしようという主体的な市民感覚を育てることは、いじめから身を守るだけでなく、彼らの将来に役立つ力となるだろう。

もちろん大人の強力なサポートが必要だ。特に少人数の生徒会など固定したメンバーに任せきりにすると、逆に彼らが「良い子ぶっている」などといじめの標的になる可能性があるから注意しなければならない。

繰り返すが、いじめは子どもたちだけの問題ではない。子どもたちは大人を真似している。大人が発する一言が、いじめを誘発することもある。

すべての大人が、社会で子どもたちを育てる意識を持ち、子どもたちの良いモデルとして、関わることが求められているのだ。