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日本の学校では年間32万件のいじめが認知

兵庫県で小学5年生の女子児童が昨年5月に自殺した件で、第三者委員会はいじめが要因になったと結論づけた。こうした事件は世間の耳目を集めるが、遺憾ながら氷山の一角に過ぎない。

国内のいじめの状況の包括的な調査としては、文部科学省による『児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査』がある。本エントリでは平成28年度(2016年度)の本調査に基づき、日本の小中高及び特殊教育諸学校におけるいじめの状況を俯瞰したい。


自殺の状況

 


 

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まず学校から報告のあった児童の自殺数の推移について見てみよう。自殺数は近年徐々に増加しており毎年250人弱に上っていることが分かる。この国ではおよそ3日に2人の割合で、未来があるはずの児童が自ら命を絶っている。小学生の自殺さえ毎年コンスタントに数件発生している。

2016年の自殺者の状況は、不明が半数133名(54.3%)、家庭不和と進路問題がそれぞれ27名(11.0%)となっている。いじめの問題が確認されているのは10名(4.1%)に過ぎない。ただ、これはあくまで確認された数字であって、実態がもっと多いであろうことは、以下の調査結果を見れば容易に想像がつく。

いじめの認知件数

 

 

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いじめの認知件数は、いじめの定義が変わるタイミングで大きく変動するが、2013年度からは「児童生徒に対して,当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係にある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって,当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの。なお,起こった場所は学校の内外を問わない」として調査されている。

ただし直近の増加は定義の変更のタイミングとずれていることから、「いじめはどの子どもにも、どの学校においても起こり得る」という教育現場の認識の変化が大きいと思われる。いじめの隠蔽を防ぐという基本姿勢が浸透してきた結果であろう。

2016年を見れば、いじめの認知件数は32万件、そのうち24万件は小学生で発生している。1日あたり800件強のいじめが発生する計算になる。1校あたりの認知件数を見れば、8.6件。小学校では11.7件、中学校では6.8件、高校で2.3件となっている。1校1学年当たり2件程度は発生していると見て良い。

ただ、この数字さえおそらく過小だ。

都道府県別のいじめの状況

 

 

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    :マウスポイントすると都道府県をハイライトする。

上図は都道府県ごとのいじめの状況を示したものだ。一番左はいじめの認知件数であり、緑色は解消しているもの、赤色は解消に向けて取組中の件数である。最も多い千葉県は32,228件、一方最も少ない香川県は537件である。生徒数が異なるので、中央の1,000人あたりの認知件数を見るほうが適切だろう。最も多い京都府は1,000人あたり96.8件の認知件数、最小の香川県はわずか5件である。その差は20倍。こんなことがあり得るだろうか。

もしかすると香川県佐賀県など認知件数が少ない都道府県ではいじめに対する取組が進んでおり、いじめを効率的に抑制できているのかもしれない。一方で京都府は取組が遅れていていじめの発生を助長しているのかもしれない。

しかし、20倍の格差についてより納得できる仮説は各都道府県のいじめ報告に対する姿勢が異なるのではないかという疑念だ。おそらく全く同一の事象が起こったとしても、京都府では報告されるが、香川県では報告されないのではないだろうか。あるいは香川県やいじめ発見の取組が不十分で認知さえされないのかもしれない。

一方、いじめ解消率(上図右)は全体で90.5%に達するが、これを額面通り信じるならば、毎年30万件のいじめが発生し、27万件が解消されている計算になる。都道府県別のいじめ解消率を最上位の愛知県と最下位の山口県では20.5%の差がある。愛知県には超優秀な先生が揃い、山口県には問題解決力の劣る先生が多いというのだろうか。

1,000人あたりの認知件数と解消率の分布を見てみると、興味深いことに、解消率が高く認知件数が少ない優秀なグループ(●)と、認知件数は多いが解消率が高いグループ(▲)と、認知件数は少ないが解消率が低いグループ(×)に分かれて、不思議なことに認知件数が多く解消率も低い都道府県(左上のエリア)は存在しない。どうも実態を反映した調査になっていない印象を受ける。

近年急速認知件数が増えていることとあわせて考えると、おそらくそれなりに実態を反映した結果が出るまでの過渡期と考えたほうが良さそうだ。

いじめの様態と加害生徒への対応

 

 

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いじめの様態を見ると全体の62.5%は「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる」という暴力を伴わない嫌がらせとなっている。暴力行為が少ないように見えるかもしれないが、本調査において暴力はいじめとは別カテゴリとして集計されている(2016年度59,444件)。ここに挙げられているのはあくまでいじめとカテゴリされたモノだ。障害や強盗・窃盗に該当しそうなケースがいじめとして対応されていることが分かる。また、高等学校になると「パソコンや携帯電話等で、ひぼう・中傷や嫌なことをされる」というようにネットを用いた嫌がらせの割合が増える。ネット時代の新たないじめの形と言えるだろう。

いじめに対する対応としては、最も多い保護者への報告が148,454件で全体の半数弱(45.9%)だ。いじめられた児童生徒や園保護者に対する謝罪の指導も138,173件(42.8%)なのだが、この実施率でどうやって90.5%も解消しているのか疑問だ。ひょっとして自然に解消するまで待っているのだろうか。

ネットでよく見られるのは警察に通報すべきという主張だが、2018年警察等の刑事司法機関等と連携されたのはわずか870件(0.3%)に過ぎない。先の調査結果と合わせて考えると、障害や強盗、窃盗に該当するケースでも警察への通報はほとんどなされないという実態が浮かぶ。

まとめ

この国の学校では年間32万件のいじめが認知されている。少なくとも32万人の児童がいじめに苦しめられている。本来青春を謳歌すべき彼ら彼女らの学校生活は悲惨なものだ。

この国では年間250人の児童が自ら命を断つ選択をしている。その原因は様々だが、彼ら彼女らが若くして人生に絶望する何らかの事象があったことだけは確かだ。

この国におけるいじめの状況は実態さえまだ十分に把握できていない。彼ら彼女らは今この瞬間にも助けを必要としているのに──