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果たして… 第三者委員会は本当に遺族の希望をかなえられるのか?

わが子が学校でいじめにあったら、家族はどう対処したらいいのか。教育委員会や学校のあまりにも形式本位で不誠実な壁が親たちの前にたちはだかっていた。番組が神戸と青森の事例から指摘したのは、教育とも事実調査ともあまりにかけ離れた実態だった。

   【神戸の中学校】おととし(2016年)10月、私立中学校3年の女子生徒(当時14)が自宅近くの川で自ら命を絶った。前の日まで何度も学校を休んでいたのを案じる母親に、娘は「何もない」「大丈夫」「友達はいる」と答えるばかり。死亡後「なぜ、こんなことに」と悩んだ母親は教師や同級生50人に聞いて回った。

   すると、クラスの中心グループから「顔面凶器と言われていた」「消しゴムのカスを投げつけられた」といった証言が得られた。学校に問いただしたが、担当教員は明確に答えず、市教育委員会は問い合わせに応じようとしなかった。

いじめのメモを隠し続けた学校、校長の交代で事態が動いた

   実はこの時、学校にはいじめの内容を聞き取ったメモがあった。これを知った母親は公開を求めたが、教育委員会は応じなかった。番組では触れなかったが、当時の校長は「メモは存在しない」と言い張り、教育委員会の首席指導主事も公表に待ったをかけたという報道がある。メモは学校に保管され、事実が隠蔽され続けた。

   驚いたことに、この間、母親と教育委員会とのやり取りの中で、いじめが認定されるには「学校がいじめとして指導したことが必要」という見解が示されたことだ。学校がいじめに気づかなければ、いじめが実際にあったとしてもなかったことにされてしまうわけだ。

   なんと理不尽な条件があったものだ。形式主義もここまでくると、ことなかれ主義とかけあわさり、常識も良識もなくなってしまう。

   事態が動いたのは、校長が変わってからだ。新校長が教育委員会に7か月間にわたり対応を求め、ようやくメモの存在が認められた。生徒の死亡から1年半余り、市教育長は「きわめて不適切だった。組織としての体をなしておらず、許されない」との談話を出した。それでも、担当者は「今さらメモを出すことはできない。開示すれば処理が煩雑になる」と最後まで抵抗したという。

   これには番組の武田真一キャスターも「保護者の切実な願いを踏みにじった教育委員会の対応に憤りを感じます」とコメントをしたが、これですまされるのだろうか。

   ウソをついてメモを隠しまくった前校長も、事務処理が煩雑と信じがたい言葉を吐いた指導主事も、教育者や行政マンとして悪質すぎる。犯罪的な行為だ。まさか今も教育や行政にかかわってはいないだろうなと、怒りがわいてくる。批判の一言二言で免責してしまえば、第2第3のウソ校長や無責任指導主事が現れかねない。

「遺族が気の毒だから」と聞き取りをしないで調査になるのか!

   【青森の事件】2016年8月、青森県の中学2年生、葛西りまさん(当時13)が電車に飛び込んで死亡した。スマホに「ストレスでもう生きていけません。二度といじめたりしないでください」とあった。この事件には第三者委員会が設けられた。

   第三者委員会は全校生徒にアンケートを実施し、100人近い生徒から聞き取りをし、SNSの記録も調べた。しかし、りまさんの父親・剛さんは報告書の原案を見せられ、愕然とした。「思春期うつ」と書かれていた。根拠を求めたが、納得できる説明はなかった。「本人に会ったことも、診察したこともない人がうつと決めつけることが許されるのか。二度殺された思いです」という。

   第三者委員会の委員長を務めた大学教授、櫛引素夫さんは今、「委員は初めての経験で手さぐりだった」と明かす。「遺族に寄り添っていなかった」とも語ったが、だとしたら、これで事実をまともに調べられるのか。オソマツすぎる。「調査」は今も続いている。

   いじめ自殺事件が起こるたびに第三者委員会が設けられるようになった。大学教授、弁護士、医師といった「専門家の調査」がうたい文句だが、調査能力がなく機能不全に陥っている委員会もあるらしい。現在、全国でいじめ自殺の第三者委員会が69件あるが、うち13件で遺族から委員の交代や調査のやり直しが求められている。

   NHKが全国の委員にアンケートしたところ、98人から回答があった。「(調査の)強制力がない」「非協力的な関係者がいる」などの問題が指摘される一方で、こんな実態も浮かび上がった。

   委員の1人が遺族から聞き取り調査をしようとすると、他の委員が「それをしたら遺族が気の毒すぎる」と反対し、実現しなかった。この反対委員は遺族に触らないことが善意だと思ったのだろうか。本心だっだら、とんでもない考え違いだ。

   神戸や青森のケースでは、真実を知りたいという遺族の願いに、自分勝手な価値観と「善意」がフタをしてしまった。こういう「専門家」に事実調査ができるわけはなく、委員に選ぶこと自体がもはや有害でしかない。

   教育評論家の尾木直樹氏は「遺族からの聞き取りは当然で、具体的な調査が必要」、弁護士の横山巌氏は「遺族との信頼関係があれば納得してもらえる」と指摘する。

   いじめ自殺の再発防止には、まず事実を正確に調べて、対策を講じるしかない。その調査段階で隠蔽工作や偽善の押し売り行為が横行していた。

   ことをあいまいにすませず、いじめ発生前後の当事者や指導者の責任まではっきりさせなければいけない。必要なら刑事責任も問う。「かわいそう」「気の毒」と言うだけでは何も改善されない。

   ※NHKクローズアップ現代+(2018年7月30日放送「『いじめ自殺』遠い真相解明 ~検証第三者委員会~」)