いじめニュース速報@イジ速

いじめ事件 ・イジメ ニュースを発信中!スマホいじめが増加!子供達をいじめから守ろう!

「判断が分かれた理由」 鹿児島男子高校生「いじめ」自殺

ãããããã¯åå°ã§çºçãã¦ãããâ¦

4年前に起きた鹿児島県立高校1年生の男子生徒(当時15)の自殺を巡り、原因を調査している県の第三者委員会は11月18日、背景にいじめがあったと認定した。19日朝刊に地元の南日本新聞鹿児島市)だけではなく、全国紙にも掲載されたので記事をご覧になった方も多いと思う。実は、これに先立って行われた県教育委員会の第三者委員会は「(いじめを)裏付けることはできなかった」と結論付けていた。同じ県の役所なのに、なぜ県と県教委で結論が異なったのだろうか。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

事実を知りたい母親の願い

 男子生徒は鹿児島市の田中拓海さん(ご遺族が氏名公表をご希望のため、実名で表記します)で、2014年8月、自宅で首を吊っているのが見つかった。遺書や理由を示す文書はなかったとされる。

 母親は「拓海は自殺するような子じゃなかった。親として、何があったか知りたい」として学校に調査を要請。これを受けて同学年の生徒を対象にアンケートを実施したところ、いじめがあったことをうかがわせる記述があったという。

 母親が2015年6月、いじめ防止対策推進法に基づき、県教委に第三者委員会の設置を求めた。同法については後述するが、学校や教育委員会は自殺や不登校などの重大事態が発生した際、いじめがあったか不明確でも保護者や生徒・児童本人の申し立てがあれば調査しなければならない。

 県教委は要請を受けて第三者委員会を設置。同12月に初会合が開催された。

 会合は非公開で協議されたが2017年3月、第三者委員会は「(学校の)事後の調査が不十分。遺族への対応にも配慮を欠いた」とし、いじめが疑われる複数の情報を確認したとしながら、「自殺の要因となるいじめの存在を特定できない」と結論付け、いじめがあったと断定せず、自殺との因果関係についても言及しなかった。

母親は納得せず同12月、「調査は不十分」とする意見書を提出。県はこれを受けていったんは県教委に再調査を要請し、県教委も応じる構えだった。しかし、母親が県教委の再調査を望まず、県が知事部局主導での第三者委員会を設置していた。

 県の第三者委員会は今年6月、初会合を開き、県教委の第三者委員会と同様、会合は非公開で行われた。

 そして11月18日、田中さんがクラス内でバッグに賞味期限切れの納豆巻きを入れられたり、履物を隠されたりするいじめを受けていたと認定。このほかにも、からかいなど嫌がらせを受け、心理的苦痛を受けていたと認め「(いじめかどうかは)本人が心身の苦痛を受けていたかどうかを指標とした」と説明した。

 県の第三者委員会はいじめと自殺の因果関係についても引き続き調査を継続する方針だという。

背景にお互いの保身

 実は、県の第三者委員会がいじめと認定した根拠の内容は、県教委の第三者委員会も聞き取り調査で認識していた。

 ではなぜ、結論が正反対になったのか。それはそれぞれの「立場」に起因している。

 教育委員会は戦後の1948年、教育基本法に基づいて成立した機関で、都道府県教育委員会と市区町村委員会がある。当初は自治体の首長や教育行政官の意思ではなく地域から選ばれた住民が管理運営していた。しかし1956年、首長が議会の同意を得て任命する制度に変わる。任命制ではあるが、建前上は独立した機関であり、委員長はほとんどが教職員出身者だ。

つまり、教育委員会の委員長や管理職は学校の教職員と上司と部下の関係にあり、いわば身内である。教職員出身者の教育委員会に教育現場の教職員をかばう雰囲気が生まれるのは当然の成り行きなのだ。

 また、第三者委員会は一般的に「利害関係のない公正・中立な立場」の弁護士などの有識者らで構成されるというが、もちろん無報酬のボランティアではない。

 依頼を受けて報酬が発生する雇用主と被雇用主の関係になる。世間一般の常識として、雇われた側が雇い主の不利になるような結論を出すことはまずない。

「疑いはあるが裏付けられなかった」という判断は、はっきり言えば「あったけれども、なかったことにします」と言っているのと同じ意味なのだ。田中さんの母親が納得できないのも当たり前だ。

 一方、県の第三者委員会はどうか。

 実は「知事部局」主導というのがポイントだ。いうまでもなく、県知事は選挙によって選ばれる。この事件(※「問題」ではなく「事件」と表記した理由は後述)に関しては、記者会見で母親の肉声を聞いたマスコミが同情的な報道を続け、世論は完全に母親支持に傾く。

 ここで「県教委はけしからん結論を出した。県はみなさまが納得できる結論を出しましたよ」と“大岡裁き”を見せる。県知事は有権者の心をぐっとつかむことができたに違いない。県教委が再調査の意向を示したにもかかわらず、1ヵ月もたたず県知事部局が名乗り出た理由がここにあるだろう。

いじめは「犯罪」と認識すべき

 前述した「いじめ防止対策推進法」は2013年、大津市で中学2年の男子生徒がいじめにより自殺した事件が発端となり成立した。事件を巡る学校と市教育委員会の悪質な隠ぺい体質が報道によって発覚、市教委は強烈な批判を浴びた。

 事件は大津市内の中学校で発生した出来事で、被害生徒は「トイレで殴られた」「廊下でおなかを蹴られた」「鉢巻きで首を絞められた」「体育大会で集団リンチのようなものに遭っていた」などの暴力を受けていたほか、「金銭要求」「万引きをさせられた」ことがアンケートで判明。

「暴言・嫌がらせ」は日常的に受け、「おまえの家族全員死ね」と言われたり、蜂の死骸を食べさせられそうになったり、顔に落書きされたりもしていたという。

しかも加害生徒らは、被害生徒から自殺をほのめかすメールを送られていたにもかかわらず相手にせず、自殺後も被害生徒の顔写真に落書きや、穴をあけるなどしていた。さらにアンケートに「死んでくれてうれしい」「死んだって聞いて笑った」などと回答していた。

 しかし学校はいじめの報告を受けていたにもかかわらず「ケンカと認識」とごまかし、市教委も「自殺は家庭環境が問題」と責任逃れに終始していた。

 この事件の際、市教委は隠ぺいに奔走したが、市長の設置した第三者委員会によって事実関係が次々に明らかにされた。そして「教育委員会の隠ぺい体質」がクローズアップされ、国会が法の制定に乗り出したという経緯がある。

 この事件では、被害生徒の父親が暴行や恐喝、強要、窃盗、脅迫、器物損壊の罪で加害生徒を刑事告訴し、民事訴訟も起こしている。

 各地で同様の事件が発生するたび、各教育委員会は「いじめ」と総称し、学校内で起きた軽いいざこざのような説明をするが、実はすべて“犯罪”行為だ。

 被害生徒の父親が告訴したのは「やりすぎ」などではなく、実に正当な訴えなのだ。

 殴ったり蹴ったりすれば「暴行罪」、金銭を脅し取れば「恐喝罪」、万引きをさせれば「強要罪」、物を隠したりすれば「窃盗罪」、周囲に仲間外れを強要したり死ねと脅せば「脅迫罪」、物に落書きすれば「器物損壊罪」、父親の告訴内容にはないが、けがをさせれば「傷害罪」が該当する。

 学校内で毎日のように、当たり前に“犯罪”が行われていると考えると恐ろしいことなのだが、少年事件を多く手掛けてきた警察関係者によると、こうした児童・生徒は成人した後、やはり警察のご厄介になる傾向は強いらしい。加害者は“犯罪者”予備軍なのだ。

 だからこそ、教育・指導のプロ集団である学校・教育委員会は保身のための隠ぺい工作などをせず、積極的にいじめをあぶりだし、既に“犯罪”行為に手を染めている児童・生徒らの更生に手を差し伸べるべきだろう。