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第1部「生きる力と教育」不登校 

全児童が探究活動

「芯が折れない鉛筆を作りたい」-。大阪市平野区の大阪教育大付属平野小6年の宮原綸奈子さん(11)は、災害時に役立つ品として着想。開発に向けて試行錯誤し、昨年12月には、授業に招かれた保護者とも対話して見識を深めた。

■「そうぞう」促す

 同校が取り組んでいる「未来そうぞう」科の一環。文部科学省から指定を受け、2016年度から4年間、次期学習指導要領の10年先の教育課程の在り方を追究している。

 各学年の発達段階に応じたテーマで、全児童の探究活動を促進。将来を見通しにくい社会の中で「想像」と「創造」を繰り返しながら未来を切り開く力を育成するのが狙いだ。

 総合的学習の時間や生活科などを一体化して時間を確保。他の教科の学びも探究に寄与するように気付きを促す。四辻伸吾副校長は「未来そうぞう科を核として各教科を結び付ければ、子どもの資質や能力を効果的に伸ばせる」と説く。

 宮原さんは理科の実験時に燃やした木の枝が、鉛筆代わりになると発見。「身に付いた発想力でこれからも課題を解決していきたい」と将来を見据える。

 成果が個々で違う分、適切な評価方法も模索。学習過程のリポートや活動の画像などを蓄積し、保護者といった多様な人からの評価を組み込む。

 カリキュラムの運営指導に当たる大教大の木原俊行教授は「創造性などを育む教育の評価方法は、尺度の多様化が重要。ゴールまでの過程を重視し、チェックはさまざまな立場の人の力も借りながら、一人一人の学びを見つめないといけない」と指摘する。

■根幹の力に課題

 先進的な授業が府内で繰り広げられる一方で、学力の根幹に関わる問題が顕在化している。「国語力」だ。

 18年度全国学力・学習状況調査の小学6年では、主語と述語の関係を問う問題で全国との差が最も大きく、全教科の読解力に課題が見られた。

 府教育庁は「基礎的な言語の力が付いていない」として、17年度には小学校の学年に応じた到達目標を設定し、段階的に習得を促す教材を開発。市町村教委と連携して活用を推進している。

 ただ、大阪は生活保護や就学援助を受ける割合が全国平均より高く、家庭の困窮問題が深刻。世帯の経済状況が学力に影響しているものの、家庭への支援が十分に届いていない実態が府調査などで浮かび上がっている。

 子どもの貧困問題に詳しい大阪府立大の山野則子教授は「学校内に、必要な支援を入れ込む組織づくりが必要」と強調。空き教室などを活用し、学習支援室や朝夕食が取れる食堂、保護者の就労相談の場があるといった形だ。教員の負担が増えないように適切な人材を配置。情報を共有し、個々のケースに即応する。「名ばかりの“連携”ではなく本気で取り組まなければ、子どもの最善の利益を保障できない」と警鐘を鳴らしている。

 生きる力 次期学習指導要領をめぐる中央教育審議会答申では、予測困難な社会の変化に主体的に関わり、感性を豊かに働かせながら、どのような未来を創っていくのか目的を設定。自身の可能性を発揮し、よりよい社会と幸福な人生の「創り手」となる力と捉えられた。
 

児童養護施設 自分を「デザイン」

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火を噴くトウガラシ「とんがらりん」に、ウサギの耳を付けた「不思議忍者」。これらは、大阪市東住吉区の「NPO法人子どもデザイン教室」に通う児童養護施設で暮らす子どもが考案し、企業に販売した「こどキャラ」だ。報酬の25%が考案者の将来資金として支払われる仕組みになっている。

■全て受け入れる

 同法人代表の和田隆博さん(58)が教室を設立したのは2007年。試行錯誤しながら、施設で暮らす多くの子どもたちを見守ってきた。

 死別や経済的困窮などで親と一緒に暮らせない子どもは、全国で約4万5千人。児童養護施設の場合は、およそ半数が虐待や育児放棄といった親の問題行動が原因だ。

 「施設の子は自己肯定感が低く、劣等感がある」と和田さん。教室で自由に絵を描かせると、多くの子どもの手が止まる。質問もせず、途中で投げ出す子もいる。それでも、和田さんは彼らの全てを受け入れる。色がいい、形がいいと。「怒られると思っていた」という子どもたちは、多彩なキャラクターを生んだ。

■三つの力

 第一線で活躍するグラフィックデザイナーだった和田さんにとって、デザインとは「世の中に必要とされているものを形にする」こと。それは「創造力」とともに、他者を理解しようとする「対話力」、そして、最後までやり遂げる「努力」の三つが必要だと説く。

 教室では、中学生以上を対象に、自分の考えを論理的に言語化する「デザイン国語研究レッスン」を、大阪府立大・今宮工科高と共同実施。提案と説明、時に妥協しながら相手に思いを伝えるスキルを遊び感覚で身に付ける。「社会的養護の支援が終わった時、自己肯定感や生きる力がないと、へなへなになってしまう」と和田さん。

■人生を切り開く

 「施設の集団ルールで生活していると、自己主張や自己決定する機会がなく、主体性がなくなってしまう」と、府立大の伊藤嘉余子教授(社会福祉学)は指摘する。

 18歳になると原則、施設を退所し、自立が求められる。家族という後ろ盾がない中、進路決定は個人の“生きる力”に委ねられる。

 デザインは机上の論ではなく、人生を切り開くツール。「人生を自分でデザインしていく。自分から学ぼうとする力、相手に関心を持つ好奇心があれば、毎日を少しでも楽しく過ごすことができる」。和田さんの願いは、未来をつなぐ。

 児童養護施設 児童福祉法で定められた児童福祉施設。保護者がいない1歳以上の幼児から原則18歳まで(場合によっては20歳まで延長できる)が入所する。厚生労働省によると、全国に603カ所あり、約2万7千人が入所している(2016年10月)。
 

キャリア教育 働く親の姿が影響

飛行機を操縦し、バスの中ではガイドさん。店内でピザを焼いたり、マヨネーズを作ったり。兵庫県西宮市の「キッザニア甲子園」は、子どもが主役の街。制服姿の子どもらが目を輝かせ、“お仕事”に打ち込む。

 キッザニア甲子園は、2009年3月のオープンから毎年来場者が70万人を超えるという人気ぶり。リピーターが「6~7割」を占める。

 小学校の校外学習や修学旅行の人気スポットになっているのも大きな特徴。近年はオープン当初から実施している英語の取り組みが好評を得ており、英語プログラムが充実する水曜に「団体予約が集中する」という。

 同施設事業部の林実営業部長は「学校教育に、いかに寄り添うかがキッザニアの生命線。教育現場のフォローというとおこがましいが、学校ではできない体験を提供するよう意識している」と話す。

■身近な大人

 学校内にとどまらない子どものキャリア教育に、今何が求められているのか。人材サービス会社アイデム(東京)は、親の働いている姿を「見たことがある」子どもは、将来働くことを楽しみに感じている傾向にあるという調査結果を発表した。

 調査はインターネットで行い、小学1年~高校3年の子どもと一緒に回答できる男女3489人が回答。将来働くのが楽しみと答えた子どものうち、高校1~3年では父親の働く姿を「見たことはある」は75・7%に達し、「見たことはない」の58・0%を大きく上回った。

 「アイデム人と仕事研究所」の古橋孝美主任は「子どもが将来を考えるときには、身近な大人の働く姿が大きく影響する。大人が自身の働くことについて振り返り、考えることが必要ではないか」と指摘する。

■子どもの参観

 大和リース大阪市中央区)は、2010年から子どもが親の職場を見学する「子ども参観日」を実施している。9回目となる18年は、全国にある39事業所で416人の子どもが参加した。

 大阪本社では、子どもらが勤務中の社員らを訪ねて回り、「いつもお世話になっています」と名刺交換。パズル形式で作成した書類は、上司役の親から押印をもらうなど“職場体験”を満喫、平日のオフィスフロアに和やかな笑顔が広がった。

 この取り組みは「ワーク・ライフ・バランス」の実現に向けた取り組みの一環で、当日は全事業所統一のノー残業デー。イベントの準備なども重要な仕事として、まさに会社が推進してきた。

 本社で子ども参観日実行委員長を務めた業務推進グループの木本葵さんは「私も小学生の時に、会社見学会で父のデスクを見たのを貴重な体験として覚えている」という。

 訪ねる側から迎える立場に変わり、「社員も刺激を受けていて、家庭のコミュニケーションに効果は絶大」と改めて意義を実感していた。

 キャリア教育 子どもが自分の生き方や将来の仕事について考え、社会で自立する力を養う教育。職場体験や進路指導などさまざまな形があり、学校と地域、産業界、関係行政機関など連携の輪も広がっている。
 

 

 

重要な自己肯定感

何らかの心理的、身体的あるいはいじめなどの要因で学校に登校しない、したくてもできない「不登校」。さまざまな要因が複雑に絡み合い、立ち止まってしまった子どもたちに、明確な解決方法がないのが現状。もがき苦しみながらもハードルを乗り越え、前に進み出そうとしている子どもの背中を押す学校やさまざまな取り組みが、子どもたちをサポートする。

■自分を表現

 大阪市西区にある大阪YMCA国際専門学校高等課程表現・コミュニケーション学科(表コミ)は、全校生徒の7割が不登校経験者。入学したばかりの生徒の多くは、過去の経験から自己肯定感が低い。

 表コミでは、人と関わり合う授業やグループワークなどを通し、自分を表現する方法を学び、社会に羽ばたく力を育てる。

 昨年12月、同校で表コミ2年の劇が上演された。いろいろな事情を抱えた高校生が、野球部を立て直していく物語を生き生きと演じた。3年の川本尚弥さん(17)と岩本愛さん(17)は、後輩たちの舞台を見て3月に控えた卒業公演に向けて、意気込みを新たにした。

■はじける笑顔

 2人は小学生の時、いじめを受けて教室に入れない時期があった。岩本さんは家庭以外で話ができなくなる場面緘黙(かんもく)症になり、中学は筆談だった。

 川本さんは、中学の文化発表会でクラスで団結した経験から、「コミュニケーション力を育てたい」と表コミへの進学を決めた。YMCAのクラブに入っていた岩本さんも「中学生の時の自分を変えたい」と入学した。

 表コミの全校生徒は、何らかの形で劇に取り組む。人前で表現する力だけでなく、1人でも欠けると劇が成立しなくなり、信頼関係がないと物語は進まない。「自分はだめだ」と自己否定していた生徒たちは、劇を通して自分が必要とされる経験を重ね、自己肯定感を養っていく。

 「表コミに来てよかった。ここにいる人たちの影響で表情が柔らかくなった」。人前で話せなかったのがうそのように、岩本さんの笑顔がはじける。

 2人は卒業公演に向けた練習を本格化させる。「いかなる状況にも対応できる力を身に付け、後悔しない生き方をしたい」と、川本さんは目を輝かせた。

■個々に合わせ

 大阪府教育庁は、不登校の傾向をキャッチし、保護者の相談に応じるため、臨床心理士スクールカウンセラーを1995~2005年度に全中学校区に配置した。

 複雑に絡み合う要因を見極め、早期発見と対応の観点から一人一人に寄り添う。いかにその人に合った教育が受けられるかどうかが、重要になっている。

 府教育庁小中学校課の石田利伸主席指導主事は「不登校にならないような未然防止の取り組みもだが、幅広いその子に合う教育機会を確保できるかが課題。社会的に自立するのをどのように支援するか、検討を続けていきたい」と話した。(第1部おわり)

 不登校 文部科学省不登校を「病気や経済的理由以外で、年30日以上欠席する生徒」と定義。2017年度の公表数は約10万9千人に上った。大阪府内の公立小中学校では、01年度の1万1523人をピークに減少傾向だったが、近年増加に転じた。17年度は1万204人で、小学生の増加が目立つ。