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いじめ探偵が告発する座長試案の許せぬ改悪部分

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NHKスペシャル「いじめと探偵 ~行き場を失った“助けて”~」で、山口の大島商船高専のいじめ自殺事件をはじめ、いじめ被害者に寄り添い、問題を隠蔽しようとする者に対してはとことん詰め寄る姿勢が大反響となっている現役探偵の阿部泰尚(あべ・ひろたか)さん。そんな阿部さんが今回、自身のメルマガ『伝説の探偵』で、抜け穴だらけのいじめ防止対策推進法を改正すべき出された馳浩文部科学相による座長試案のあまりの酷さを、痛烈に批判しています。

いじめ防止対策推進法改正が暗礁に

いじめ防止対策推進法は平成25年6月28日に公布され、同年9月28日に施行となった。

いじめに対応する活動をする者として、いじめの定義や学校の責任などが書かれた法律があることはよりどころとなる事が多かったが、その一方で努力規定を理由に何もしない学校や法を逆手にとって隠蔽に走る教育委員会など、悪用されることもあった。

これまでも遺族会の働きかけや有志の活動によって、この法律は改正の機運はあったが、国会での法案の関係で改正されることはなかった。今期、超党派の議員らによって「いじめ防止対策推進法」は、改正あと一歩のところまできている

しかし、平成31年4月10日、超党派の国会議員の座長であった馳浩議員の座長試案によって改正に大きな影が落ちてしまった

まずは、即座にいじめで子供を亡くした遺族から一斉に反発が起きた、そして、専門家も超党派の議員として改正案をそれまで話し合ってきた議員たちも改正ではなく後退だと批判をしているのだ。

実は、平成30年12月6日の段階で、超党派の議員らは改正案の条文のたたき台(以下、「12月改正案」という)を作っていたのだ。この「12月改正案馳座長の試案の差はあまりに大きいものであった。もはや、馳座長の暴走とも言える試案の公表とも言える事態になっている。

 

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総務省の勧告は無視

平成30年3月16日総務省は「いじめ防止対策の推進に関する調査」の結果に基づき、文部科学省法務省に「勧告」を行なっている。この勧告では、様々ないじめについての予防の不備や対応不備を指摘されているが、簡単に言ってしまえば、「何もなってませんよ」と突きつけたのである。

しかし、馳浩座長の試案では、これをことごとく無視したものになっている。例えば、いじめの定義は、第2条

「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。

と定められているが、問題が起きている学校では、実際にいじめが起きているのに、これを限定的に解釈していじめでないとして対応をしないというケース総務省調査でも確認されている。

私もこうした限定解釈という事例は多く当たっている。例えば「継続性がないからいじめではない」とか「学校がいじめを認知していなかったので、いじめではない」などいじめの定義を無視している場合が多い。

そこで、12月改正案では、いじめの定義がある第2条に追加して、「限定解釈を行なってはならない」旨が書き足されていた。しかし、馳座長試案では、これは何の打ち合わせもなく削除されてしまったのである。

保護者への負担強化

12月改正案においては、マスコミが注目した「教職員などへの懲罰」規定についても明記されていた。ただし、これは管轄する各地方に委ねるとした内容のものであり、直ちに処罰というものではない。

12月改正案では、「学校の職員は、いじめを受けた児童等を徹底して守り通す責務を有し、いやしくもいじめ又はいじめが疑われる事実を知りながらこれを放置し、又はいじめを助長してはならない。」と追記されたが、馳座長試案では、これは削除されている

その一方、12月改正案では保護者の責務は従前のままになっていて「努めるものとする」という「努力規定」であるが、馳座長試案では、一部努力規定は改正されており、「~ものとする」となっている。

これは国や地方公共団体、学校の設置者や学校が行ういじめ防止への協力を保護者に対して行う場合の責務のことであるが、私が見る限り、効果的な対策を行っているところはごく僅か。無意味やっているだけの実績作りの懸念が否めないというところがほとんどなのだ。

これを世間では時間の無駄とか時間泥棒というのだが、保護者からいえば、そんなくだらないことに時間を割くより、子供のケアや最悪の事態を回避するための行動をした方が有意義であろう。

つまり、12月改正案では教職員への負担は微増レベルであり、馳座長試案では、教職員の負担は減り保護者の責務が重くなっているのだ。

児童等の声は無視

さらに12月改正案では、

この法律の運用に当たっては、いじめを受けた児童等に寄り添った対策が講ぜられるように留意するとともに、いじめ防止等について児童等の意見が反映され、その主体的かつ積極的な参加が確保されるように留意しなければならない。

とあり、児童等(小学生を指す児童だけではなく、生徒にあたる中学生高校生を含む)の主体的な取り組みを推奨したが、馳座長試案では、これは削除された。児童等の主体的ないじめ防止への取り組みは、現場では実績と効果が高く確認されており、特に足立区立辰沼小学校における取り組みは高い実績がある。

また、教育委員会が大好きな子供らを使った啓発運動や作文コンクール、標語の類についても、取り組み方によってはいじめ予防のみならず未発見であったいじめの発覚に繋がるものだが、これも児童等の取り組みや意見と考えれば、馳座長試案では(削除したということは)無視するとしたことになる

三者委員会は利害関係者が委員になってもOK

私が最も驚いたのは、馳座長試案における「三者委員会の条項である。この場合、第三者委員会は、生命、身体、財産などの危害を意味するいわゆる重大事態が発生した時に発足して、いじめの経緯などを調査したり分析したりする委員会のことになる。

特に「第三者委員会」は、その言葉のイメージから世間一般では、中立で公平な組織でやることが大前提と思われているが、いじめ問題で出てくる第三者委員会は、利害関係者で固められていたり、バイアスのかかった組織構成であるものは珍しくない。

馳座長試案

 

当該調査を実施する者は、専門的見地に基づいた中立、公平かつ公正な調査が行われるよう、調査を行う組織の委員に利害関係がない者を2名以上含まなければならないこととすることその他の必要な措置を講ずるものとする。

とされている。多くの第三者委員会は、5名程度で構成されることが多いため、つまりは3名は利害関係者で良いことになり、最も権能を有する委員長も利害関係者で良いことになってしまう。これは絶対に許されてはならない改悪である。

12月改正案では、

調査を行う組織の委員及び事務局の長は、利害関係の無い者でなければならない。ただし、事務局の長については、特別の事情がある場合においていじめを受けた児童等及びその保護者の同意があるときは、この限りではない。

とある。どこで、「2名以上の利害関係の無い委員」という言葉が出てきていたのか疑問も生じ得るが、少なからず、超党派の国会議員が専門家などを呼んで意見を聞いたり、遺族から話を聞いたりして話し合って決めていった「12月改正案は大半が無視され馳座長の暴走で試案が公表されたことになろう。

改悪は許されない

馳座長は試案を出すにあたり、「教員のやりやすさ実現可能なものを優先した」とコメントをしているが、限定解釈問題は多くのいじめ放置事案の「あるある」原因であるし、限定解釈をしてはならないことが条文になることは、教職員のやりやすさに関係はない上、実現的問題として取り上げられている地方公共団体の予算などにも影響しない。

さらに 第三者委員会の中立公平性についても、馳座長試案では「中立公平かつ公正の意味においても問題が生じるし、やはり、教職員らのやりやすさや行政予算に実現不可能となる程影響するところではない。

今回、この改正案について意見を多く求められていた専門家らに聞くと、いじめ防止対策推進法が議員立法でできるときも、ワーキンググループなどで出していてみんなが承認していた条文とは大きく異なっていたということであった。結局、当時も座長であった馳議員による最終的な独走状態で立法されたのだということで、今回の改正案についても、また土壇場でひっくり返すのではないかと心配されていたそうである。

その上での、12月改正案をほぼ無視した馳座長試案であったので、「またやられた!というのが本音だそうだ。そして、その原因は何かと話を聞いていくと、様々な教育関係の団体から12月改正案について、それは、厳正にいじめに対処する内容であることから、強い反発があったそうだ(現在、意見書などを確認中)。

なぜ、12月改正案は厳正になったのか(私からすれば飴ほど甘いと感じるものでもあるが)、それは、子どもの命の問題の直結するいじめ問題をなんとかしたいと考えたからである。つまり、座長試案は、子どもの生命より教職員や学校の設置者地方公共団体や私立校理事会他)がこの出来てしまった法律に縛られないようにする方を優先したのである。

いじめ法の改悪は絶対に許してはならない。

多くの専門家や遺族会などが必死で声を上げて馳座長試案に反対を表明しているが、この声は届くのだろうか。

未だ利権まみれの全国学力診断テストを続け、さらには海外から大学の評価システムまで取り込もうとしている文教族には、その声は届かないであろう。彼らにとって、他人の子どもの命など、自らの利権の前ではどうでも良いことなのだろうから。

※馳座長試案は遺族会などの即座の反対を受け、イメージダウン甚だしいことから、その内容は各種メディアに控えるように指示があったようです。ですので、一部のWEBサイト以外では、掲載されていません。私の手元に全資料がありますが、現在メディアの方々、記者さんらには自身の会社のニュースサイトなどで、12月改正案と馳座長試案を公開するようにお願いしています。