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夜間中学 いじめで引きこもり ここからやり直せる

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小学校入学と同時にいじめが始まった。次第にエスカレートし、ついに中学1年の夏、学校に行けなくなる。それから10年余り、自宅から一歩も出なかった。再び社会と関わるようになると、簡単な計算ができず、漢字も書けない事態に困り果てた。「夜間中学に行ってみては?」。友人がそう勧めてくれた。

 ■現実からの避難

 引きこもりから脱し、大阪府東大阪市立意岐部中学校夜間学級に通う大野典子さん(45)。3年目に入った夜間中学生活を「同級生と触れ合うことで少しずつ自分を出せるようになりました」と語る。

 アクションゲーム「マリオブラザーズ」に夢中になったファミコン世代。おとなしくて引っ込み思案の子供だった。小学校でいじめの標的にされた。「ばい菌扱いされて『近づくな』と言われたり、ランドセルを廊下に蹴り出されたり、上靴を隠されたり…」

 中学校では他の小学校出身の生徒たちもいじめに加わった。小学生の頃から休みがちではあったが、保健室登校、遅刻、早退を繰り返すようになった。中学入学から2、3カ月でとうとう通えなくなった。

 「学校に行かないといけないという気持ちはありましたが、行けばいじめられるので行けない」。終わりのない葛藤。「ずっと罪悪感がありました。それが一番苦しかった」。家からも出なかった。「どこで同級生と会うかわからない。怖くて出られませんでした」

 テレビを見たり、ラジオを聞いたり、本を読んだりの日々で、話をするのは家族だけ。着替えもせず、風呂にも入らず、髪も伸ばしっぱなしだった。「外に出ないので気にしませんでした」

 引きこもりは学齢期を過ぎても続き、10年以上に及んだ。「なぜなのか、今も自分でもわかりません。あの頃は時間の感覚がなかった。昼も夜もない、一日が長いも短いもない。というか、関係なかった」

親がいつまでも生きているわけではないのに、どうするつもりなのか-。こうした問いがしばしば引きこもりの当事者に投げられるが、「当人からするとそういうことを考える、考えないではなく、考えが及ばない。抜けているという感じです」と当時を振り返る。「現実がつらいから、現実を見られない。引きこもりは現実からの避難でした」

 大野さんが再び社会と接点を持つようになったのは24歳頃だった。

 ■病気が転機に

 ある日、耐えられないほどの息苦しさに襲われ、救急搬送された。甲状腺の機能が低下する病気で、定期的な通院が必要となった。結果的に、それが引きこもりから抜け出すきっかけになった。

 ほとんど動かない生活だったので筋力が落ち、少し歩くだけで足が痛む。我慢して近所を散歩し、徐々にならしていった。闘病中に友人もできた。「一緒にお茶をしたり、買い物に行ったりして、生きるって、こんなに楽しいんだと思いました」。止まっていた人生の時計が動き出した。

 「色鮮やかな外の世界」を満喫する中で、大野さんはこれまでほとんど学んでいないことを思い知らされる。買い物に行っても計算ができず、書類にも簡単な漢字が書けない。誰にも言えないまま、長い歳月が過ぎた。思い切って友人に悩みを打ち明けると、夜間中学への入学を勧められた。

 平成29年4月、夜間中学生となった。

 ■弱み話せる仲間

 「お年寄りが通う学校というイメージがありましたが、全然違っていて驚きました」。入学したときの東大阪市立長栄中学校夜間学級(再編整備で今春閉鎖)にはベトナムやネパールなどの生徒が多く、現在通う意岐部夜間中学は中国残留孤児の関係者が多い。多国籍の生徒がいる特色は授業などにも生かされ、「それぞれの国の文化や風習や言葉を教えてもらうのは楽しい」と笑顔で話す。

少人数で学ぶ方式も大野さんに合っていた。「分からなかったことが分かるようになり、勉強が楽しい。ここでは、一つ一つ学んでいくことができます」

 夜間中学に大野さんをいじめる人はいない。いや、むしろ、大野さんと同じようにつらい経験をした人たちばかりだ。「お年寄りも外国人も他の人も、みんながいろんな背景を持っていて、苦労をしてきた仲間。だから、自分の弱さも含めて何でも話せる。のびのびできる。人と会うことすら怖かった私が、一緒に学ぶことを楽しんでいます」

 いじめを引き金に、長期間にわたった引きこもり。前向きになれた今、「いじめや引きこもりで悩んでいる人たちに、いくらでも取り返せる、やり直せると言いたいです」。

 夜間中学は、時代状況を反映しながら学びを必要とする人たちを受け入れてきた。大野さんは言う。「私のように義務教育を十分に受けられなかった人はいっぱいいる。夜間中学の存在をぜひ知ってもらいたい。ここは決して勉強だけをする場所ではありません。私は、夜間中学に来ることができて、本当によかった」