今や私たちの生活に欠かせないスマートフォンや携帯電話。大阪府教育庁は3月、災害など緊急時の連絡手段として、今年度から小中学校にこれらの機器を持ち込むことを認めるガイドライン(指針)を発表しました。文部科学省も、「持ち込み禁止」の方針見直しを検討しています。私たちは座談会を開き、当事者としてこの問題を話し合いました。
授業などで便利
――皆さんの学校ではスマホや携帯の持ち込みについてどうなっていますか?
益子 私立の中高一貫校ですが、携帯電話の持ち込みは以前から許可制で認められています。数年前に校則が改定され、高校生は自己管理となりました。
大久保 私の高校も持ち込みは許可制です。フィルタリングソフトを入れることなどが義務づけられていて、登校後は、下校時まで先生に預けます。登下校中の使用も禁止で、緊急時だけ使えます。
丹羽 私の学校も緊急時だけ使えますが、普段は電源を切ってかばんにしまっています。
木下 僕の学校はスマホについて特にルールはありません。自分たちで時間や場合を考えて使っています。
水谷 僕は公立中で、体育祭や卒業式などの行事も含めて持ち込みは禁止されています。
――持ち込みが認められている人は、実際にはどのように使っていますか?
益子 私の学校では、担任の先生が出したアンケートにスマホで回答したり、先生が動画投稿サイトにアップした英語の発音の動画を見るように言われたりと、学習や授業で活用することがあります。掲示板に貼り出される試験範囲やお知らせも、スマホで撮影して無料通話アプリ「LINE」などで共有できるので便利です。
木下 校内で、部活の場所などを生徒同士でやり取りしたりしています。
――学校にスマホや携帯を持ち込むことで、ネット依存やいじめなどを助長するのではないかと懸念する声もあります。
益子 私の学校ではいじめは聞いたことがありませんが、授業中にこっそりSNSやゲームをしている人はいます。ただ、ネット依存やいじめは以前からあるので、持ち込みと結びつけるのは短絡的だと思います。
大久保 スマホ持ち込みが自由で、校内でも使用できる公立校に通っている友達は、LINEで言葉の使い方が原因でけんかになったことがあると聞きました。
教育活動には不要
水谷 友達が遊び半分で動画投稿サイトに動画を投稿したところ、名前や学校、住所を特定されたことがありました。そういうことが起こるのは怖いです。スマホは教育活動に必須ではないので、学校への持ち込みは必要ないと思います。みんな家ではパソコンやスマホを使えますから。
大久保 ただ、学校で使えないと、家で使う時間が増えるということもあるのではないでしょうか? 帰宅後しか友達への返信ができないので、寝るのが遅くなることもあります。
緊急時に有効
――大阪府は、震災など緊急時の連絡手段として、携帯端末の持ち込みを解禁するとしています。
益子 私は、「緊急時」とは災害だけではないと思います。私の友達は学校帰りに男性につきまとわれて、スマホで親に連絡して迎えに来てもらっていました。つきまといや痴漢だって緊急事態ではないでしょうか。
丹羽 私の学校には公衆電話がありますが、電車が止まったときなど、親に連絡するための長い列ができるので、スマホや携帯が使えると便利だと思います。
――では、どうしていったらいいでしょう?
益子 スマホや携帯のない時代には戻れません。私の学校のように学習などで活用している学校も増えているので、すでに持ち込みを認めている学校を参考にしたらよいのではないかと思います。ネット依存についても、今は、保護者が子供のスマホ画面をロックしたり、使えるアプリと使用できる時間を設定できたりする機能もあります。
罰則の検討も
木下 大阪府のガイドラインは、トラブルを未然に防ぐことに重点が置かれていますが、実際にトラブルが起きたときの対処法や罰則なども考えておくべきだと思います。
大久保 受験生のときは、SNSからアカウントを削除するなど、自制する人も多かったです。
水谷 スマホを使わない時間を家族で決めるなど、大人が一緒に取り組んでもいいのではないでしょうか。
益子 私の学校では、休み時間のスマホ利用を検討する「ICT委員会」というものを生徒で新設しました。ルール作りに参加することで、守らなければ、という自覚を持てるし、自分のスマホの使い方と向き合うことができます。各自治体も、話し合いに子どもを入れたらいいと思います。
(高3・益子百花、木下純一、高1・大久保礼、中2・丹羽美貴