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中川翔子さんが「いじめ」を経験したあの頃「今は楽しそうな大人の背中を見せたい」

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「思春期には30歳くらいの先生が、別の惑星の生き物に見えた」。そう話すのは、中学時代にいじめを経験した歌手で女優の中川翔子さんです。2019年の夏には、自身の体験などを『死ぬんじゃねーぞ!!』(文藝春秋)としてまとめ、いじめ問題の深刻さを訴えてきました。

大人になった今、中川さんはいじめられていた「あの頃」をどう見ているのでしょうか? また、現代のいじめをどのようにとらえているのでしょうか。また、今、学校で「ひとり」になっている人たちになんと声をかけてあげればいいのでしょうか。話を聞きました。

「授業のあいだの10分がすごく長かった」

ーー『死ぬんじゃねーぞ!!』は、大人でも共感できる部分が多いですね。

中川:思った以上にいじめを受けたことがあって、その傷がまだ癒えてない人、いじめ問題に心を痛めている大人がものすごく多いってことですよね。だから、発信し続けなければいけないんだなってすごく思いました。

いじめは人間の本能としてわきあがってしまうかもしれませんが、理性があるのも人間なので、それをどう見て、未然に防いだり、被害者を守るかということは、大人がしっかり考えなければいけませんよね。

ーー本では自身のいじめ体験についてもマンガや文章で記していますが、当時をあらためて振り返るつらさはなかったのですか?

中川:もう20年近く時が経っているので。だけどあの頃って、学校にいる時間全部が空気を読まなければいけなかったり、誰かに言われたことを何度も反芻しちゃったり。「あの時こうすればよかった」ってずっと考える長い日々。授業のあいだの10分休みとか先生がいないときにトラブルが起きるから、その10分がすごく長かったんです。学校でも家でも悩んでいたから、切り替える方法も知らなかったんですよね。経験値としてわからない。

そういう「すごくしんどかったな」、「重苦しい空気だったな」っていうのはおぼえていたので、そういう景色を絵にしていきました。

ーー思春期に見た「大人」と、現在の「大人」像は違いますか?

中川:思春期には、30歳くらいの先生が別の惑星の生き物くらいに思えました。それくらい大人って想像つかないというか。あと、基本的に信用してなかったかもしれない。先生とか大人がよかれと思って言ってくれたことすらも、ちょっとでも的がはずれていると「なに適当なことを言ってるんだ」みたいに思ったこともおぼえていて。「卒業したら楽になるよ。私もいじめられていたから」って言われたときに「私は明日も学校に行かなきゃいけないんだよ。あなたと違って!」みたいな。だから本を書くときは言葉選びが本当に難しかったんです。

ーー今は「大人」というものをどうとらえていますか?

中川:大人になってみると、思っていた大人とまったく違う。いまだに『ポケモン』とかゲームが大好きだし、自由が広がって、それこそ自分にご褒美を与える喜びもあるので、しんどいことがあってもなんとか。美味しいものを食べるとか、趣味も増えていくし、その趣味もちゃんと自分の意志でできるし。だから忙しいですね。ありがたいですね。

思っていた大人よりは知識も足りていなかったり偏ってたりするとは思うんですけど、大人になったからこそ見つけることができた気持ちもたくさんあって。歌うときも、この本もそうですけど、言葉を発するとき、残すとき、「大人って楽しそうだな」って背中を見せることが大切なのかもしれないですね。

ーー「楽しそうな背中を見せる」っていうのはいいですね。

中川:大人に絶望したくないじゃないですか。もちろん大人にも、想像もできなかった理不尽とか、「なんだよこれ」ってことがあるんですけど、それよりも「なんか楽しそう」ってことがにじみ出ているといいなって思いますね。

ーー大人として当時の自分に声をかけられるとしたら、なんと言いますか?

中川:30代になって子供たちと接しているなかで角度が変わったというか、「生きててよかった」って思える風が吹く日って、急に来るんですよね。あの頃って将来のことなんて考えたくもなかったし、考える余裕もなかった。「どうせ私は」とか「なんで私がこんな目に」とか「どうせ私の悪口言ってるんでしょ」とか「どうせ私は」っていう心の口癖がついちゃって。

高校で環境が変わって、直接的に何かされることはなくなったんですけど、それでもやっぱり引きずって。ちょっといやなことがあると、「ああ、やっぱり死にたい」とか、そういうことばかり考えて。実際に何度か死のうとまでして。

でも、本当に生きていてよかったなって今一番思っているので、当時の自分には「しんどいかもしれないけど、このままネットやゲームや本、夢中になることに没頭してなんとか生き延びて」って伝えたいかな。

 

「自分の『好き』を誰かに否定される筋合いなんてない」

ーー若い人たちと話をするなかで、現在の「いじめ」について感じたことはありますか?

中川:この本をきっかけに、講演会とかいろんなところに呼んでいただいて。とある高校生たちと話し合う機会があったんですけど、(いじめは)完全にSNSですね。「死ね」とか書いてくるんですね。誰がやっているか、なんとなくわかっちゃう。

たとえば今、芸能界で働いていると、根も葉もないことを言われたりもしますが、「なに言ってるんだか、ははは!」って笑って見ていられる。でも子供たちはそういうわけにはいかないんです。リアルに知っている人が書いているから。だからずーっと気を使って生きている。もちろんそうじゃない子もいるんですけど、そういう環境で日々、心を削りながら生きているということが実際に彼らと話をしてわかりました。

ーー思春期の人たちは、やっぱり苦しんでいるんですね。

中川:以前、いじめが問題になった大津(滋賀県)で市長さんと子供たちと一緒に話し合う機会がありました。市長さんに直接意見を言える機会でもあるから、子供たちに「なにかありますか?」ってなったとき、ひとりの女の子が「それぞれが好きなことをしていい教室をひとつ作ってほしい。なぜなら大人はちょっと時間があったら喫茶店に入ったりできるけど、私たちはそれも自由にできない」って言うのを聞いて、ハッとさせられました。私たちはあまりにも無意識に、大人としての自由を満喫しちゃってたんだ。なるべくあの頃のことを忘れたくないとは思っているんですが、感覚が遠く大人になってしまってたんだなって。

子供たちはそういうこと、居場所を探すのに本当に苦労していたりする。それぞれが絵を描いたり勉強していたり、ギター弾いていたり、好きなことをできる教室があるだけで何か変わるかもしれないっていう発想自体が、学校で日々戦っている子だからこその発想だなってびっくりしました。

ーー彼らに、外には世界が広がっていることを伝えるには、どうすればよいのでしょう。

中川:やっぱり今の子は空気のようにネット、YouTubeとかを見て過ごしているから、面白いものを自分で見つけられると思うんです。好きなこと、心が動くことを。「趣味がない」っていう人もいるかもしれないけど、好きなことはあると思うんです。そういうことをいっぱい見つけてほしいなって思います。自分の「好き」を誰かに否定される筋合いなんてまったくないし、攻撃してくる人なんて他人だし、どうでもいいですよね。

それより自分の命と時間を大事にしてほしいと思います。先祖代々の奇跡が連鎖して、その奇跡の最先端にいるのが今の自分だから、自分にご褒美を与えることを絶対に優先してほしい。「大人がなに言ってるんだ。うるさいな」って思うかもしれないけど、今はあの頃やっていたことに、感謝しているんです。すごく。なので、大人は楽しそうだなってところはやっぱり見せなきゃいけないし、あと、「いじめられる側は悪くない」ってことを発信し続けることが大切ですね。

ーーいじめの問題は、いつかなくなると思いますか?

中川:ん~、なくならないと思います。猫を10匹も飼っていて感じるのですが、個性であるんですよね。いじめっ子気質の子と、いじめられてしまいがちな子。ベストなのは部屋を分けることだったんです。部屋を分けて、それぞれ可愛がるってことで解決してるんです。

学校みたいに個性もバラバラな人たちが集まったら、そりゃあ合わない人だっている。全員と仲良くできる人は才能だから素晴らしいと思うんですけど。合わない人がいるのはしょうがないと思うんです。でも、攻撃し始めるとそれはいじめであり犯罪だと思う。海外では、いじめの加害者を転校させるっていうのがあるんですよね。だけど日本では被害者のほうが学校に行けなくなったりして。

でも言葉って返ってくると思うんです。「言霊」があるとしたら、SNSも自分の好きなものをどうやって褒めようとか、「褒めるゲーム」だと思ってやるほうがいい。誰かを攻撃していると恐ろしいことになるから。許せないし、理不尽だって思うこともあるけど、復讐するんじゃなくて、自分なりに幸せになること。自分なりに「あー、生きててよかった」と思える瞬間を見つけることが一番幸せな気がします。

ーー中川さん自身、今でも孤独を感じることはありますか?

中川:そりゃ思うことも多いですけど。独身なんで(笑)。でも、ひとりっ子気質なんで、大好きなんですよ。自由が、ひとりが。ひとりご飯も、なんでも好きなものを作って食べられるし、ひとりで本、マンガいっぱい読めるし。観たい映画もやりたいゲームもいっぱいあるし、やりたい趣味もいっぱいある。ひとりの時間をとっても大切にしているので。

あの頃は「ぼっち」になるのが本当に怖かったんです。「ひとりでいる」って思われたくなかったから。学校の廊下の影とかトイレに隠れてたんですけど、そういうひとりの楽しさもあるよってことが少しずつ知ってもらえたらいいですよね。