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韓国で広がる「暴too」芸能人のいじめ

韓国の放送・芸能界が大きく揺れている。韓国のアイドルや俳優らが学生時代に行ったとされるいじめ疑惑が次々と浮上し、業界全体を巻き込んだ大騒動に発展。SNSでは、いじめを告発する「暴too(暴力 me too)」運動が急速に広がっている。なぜこれほど大きな社会現象と化したのか、ソウル在住のKDDI総合研究所特別研究員・趙章恩さんが解説する。

韓国のSNSで、「暴too」という学生時代に受けたいじめを告発する動きが広がっている。発端は2月7日、東京五輪のバレーボール女子代表選手、イ・ジェヨンとダヨン姉妹による過去の壮絶ないじめが発覚したこと。CMなどにも出演するスター選手だったこともあり、騒動は拡大。2人は謝罪したものの、代表の資格を剥奪される事態になった。  だが、世間が受けた衝撃は大きく、「暴too」は芸能界にも飛び火。最も問題となっているのが、韓国公営放送局(KBS)だ。KBSの新ドラマ『DEAR.M』の主演女優パク・ヘスに、学生時代にいじめを受けたと主張する被害者が次々と現れ、同局は2月26日、ドラマの放送開始の延期を発表した。またKBSは、今春から新しく始まるバラエティー番組『カムバックホーム』も、初回放送分の収録直前にレギュラーの出演者を入れ替えた。こちらも理由は、学生時代に行ったとされるいじめ疑惑が浮上している俳優のチョ・ビョンギュが出演者の1人だったからだ。  このほか、韓国文化放送局(MBC)も、16年目を迎える人気歌番組『ショー!K-POPの中心』の進行役だった8人組男性グループ「Stray Kids」のメンバー・ヒョンジンを、いじめ加害者疑惑で急遽入れ替える事態に。ケーブルテレビのオーディション番組でも、番組の途中で出演者が自発的に降板するケースも見られた。  これらは全て、出演者が学校暴力の加害者だったというSNS上の告発が引き金だ。韓国の「学校暴力」の予防及び対策に関する法律によると、学校暴力とは「学校内外で学生を対象に発生した障害、暴行、監禁、脅迫、略取・誘拐、名誉棄損・侮辱、恐喝、強要・強制的なお使い及び性暴力、仲間外れ」などのこと。つまりは「いじめ」である。2月に入り、韓国のSNSで有名なK-POPアイドルや新人俳優らを名指しして、「学校暴力の加害者」だったと告発する被害者らの書き込みが相次いでいるのだ。  名指しされたアイドルや俳優らの多くは加害者疑惑を全面否定しているため、本当に加害者だったか断定できない状況だ。しかし、こうした状況が取り沙汰されている以上、テレビ局としてはそのまま出演させるわけにはいかない。KBSの場合、「視聴者権益センター」という視聴者掲示板に「公共の価値を重視する公営放送として、加害者疑惑が明白になるまで『DEAR.M』の放送を延期すべき」と2100件を超える抗議の書き込みがあったという。もし何事も無かったように放送すれば、「KBSは学校暴力を深刻に受け止めていない」としてさらなる抗議を招く可能性があるが、だからといって疑惑だけで降板させるわけにもいかず、いったん放送延期や出演保留という形で対応せざるを得ないのだ。

 

実は過去にも、何度か新人アイドルのいじめ加害者疑惑は浮上していた。また、10年ほど前はいじめの加害者だったという告発があっても「若気の至りでした」という謝罪コメントを発表する程度で芸能界に復帰出来ていたが、今はとても考えられない雰囲気だ。学校でも社会でも、いじめは深刻な“犯罪”と認識されるようになった。社会全体の認識が変わると被害者の声に耳を傾ける人も増え、勇気を出して告発する被害者も徐々に増えていった。今回、騒動がここまで大きくなったのは、被害者として名乗り出たのが1人や2人ではなく、事の大きさにファンも背を向け始めたからだろう。  SNSの影響も大きい。過去の書き込みや写真などを簡単に検索できるようになってから、芸能人に対するファンの要求もだんだん変わり始めている。ネットが無かった時代はテレビやスクリーンに映る姿が全てで、その姿だけを見て好きになったり応援していたが、今は情報が溢れている分、ファンも芸能人の過去を知ることができる。K-POPアイドルファンが集まるコミュニティサイトを見ると、「芸能人は大衆に愛されて成り立つ職業だけに、才能だけでなく人間性も評価されて当然」という意見や、「本人が否定しても、加害者疑惑があるというだけでファン心が覚めてしまう」という書き込みも多く見られた。  告発により加害者が社会からバッシングを受け、いじめを認め謝罪し自粛することが主なファン層である10代に対し「いじめは犯罪」という強い印象を与え、いじめを減らす効果につながる一方で、こうした流れを問題視する向きもある。告発の中には全くのデマもあり、事実確認がしっかりされないまま騒動がエスカレートしたり、法に則った処罰ではなく大衆が加害者を断罪し懲罰を与えるような流れになってはいけないと報じるメディアも少なくない。  世間のバッシングを受けてか、『ショー!K-POPの中心』の進行役を交代したヒョンジンは、疑惑を一度は否定したが、その後認めて謝罪した。所属事務所のJYPエンターテインメントは2月26日、ヒョンジンのいじめ加害者疑惑を認め、本人が被害者らと対面し謝罪したと発表。報道資料で、「明白な事実確認は難しかった」としながらも、「ヒョンジンの未成熟で不適切な言動で傷付き被害を受けた方がいらっしゃいます。ヒョンジンもその部分を深く後悔し反省しているため、本人が(ネットに告発文を書いた)掲載者らにお会いして謝罪しました」と説明した。  ヒョンジンは、2月27日から全ての芸能活動を中断し自粛している。JYPエンターテインメントはどの事務所よりもアーティストの人間性を強調していただけに、がっかりしたファンも多いようで、ヒョンジンのグループ脱退を求める声明文をSNSに掲載するファンもいた。今後は、芸能事務所らがアイドルになる前の練習生を選抜する過程でいじめ加害者だったかどうかの調査も加わることになりそうだ。 【趙章恩】 ジャーナリスト。KDDI総合研究所特別研究員。東京大学大学院学際情報学修士(社会情報学)、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。韓国・アジアのIT・メディア事情を日本と比較しながら分かりやすく解説している。趣味はドラマ視聴とロケ地めぐり。