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ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』に期待<若者いじめの現実を描く>

2016年1月~3月のテレビドラマの視聴率はひと言で言えば「ドングリの背比べ」。好き嫌いだけで言えば、筆者は『お義父さんと呼ばせて』(テレビ朝日)を面白がって視ています。しかし、若い方には魅力が乏しいようで視聴率は5%を下回る回もあり、平均では7%以下です。

もうひとつ筆者が注目しているのが『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ)。ありがちなせつないラブストリーとしか思えないタイトルですが、坂元裕二さんのオリジナル脚本ですからやはり単なる恋愛ものではなさそうです。

有村架純さんと高良健吾さんを中心に高畑充希さん、西島隆弘さん、森川葵さん、坂口健太郎さんの6人の若者の群像劇なのですが、このドラマの背景設定には脚本家の徹底的な意志が貫かれているように受け取れます。

有村架純さんは北海道のさびれた町で女手ひとつで育ててくれた母を亡くし、恩ぎせがましい養父と寝たきりの養母と暮らしているという役どころ。ドラマはいきなりのようにシングルマザーと貧困、老人介護といった現代的な背景をぶつけてスタートします。

時は2010年秋。この時間設定は3・11をストーリーに取り込む覚悟が透けて見えます。そのとおり、高良健吾さんは福島で農業を営む祖父に育てられ、東京で小さな引越専門運送会社に勤めているという役を演じています。給料は安く勤務はきつい。本来なら会社が弁償すべきものを従業員に支払わせるなど零細企業の現実と若者の貧困が背景となっています。

有村架純さんは自分の未来をあきらめることをやめ、北海道から東京へ家出し、老人介護施設で働きます。もちろん派遣労働で低賃金、そして慢性的な要員不足からサービス残業、長時間労働の強要など、身も心もボロボロになりながら必死に頑張りますが、それでも一方的な雇用契約の打ち切りを通告されたりします。

その老人介護施設の親会社はほぼブラック企業。そのオーナーの愛人の子どもで施設に勤めるのが西島隆弘さん。親会社から現場で働くスタッフの権利など無視した理不尽な要求指示に苦しみます。

第6回からは、5年以上たった2016年に転じてドラマが進行します。有村架純さんは介護福祉士の資格を取り同じ介護施設で働いています。

この回のワンシーン、有村(役名・杉原)さんが今月で契約が切れる同僚Aと、元同僚だったBと女子3人で食事に出かけた時の会話です。

杉原(有村)「何食べようかな」

A「ねえ、杉原は介護福祉士の資格取ったんでしょ、給料上がった?」

杉原「給料上がるってなんですか?」

B「むかし、そういう世の中あったらしいよ」

杉原「仕事の量は3倍に増えましたけど」

*オール380円のメニューを見る

杉原「タンシチュー、おいしそう!」

*B、メニューを裏返すとオール280円のメニュー

B「はい、こっち」

杉原「サラダでもたのみます?」

B「この間、社員さんにさ、ちゃんと自炊してサラダとか食べなさいよ、とか言われてさあ。サラダとか作れるお給料もらってないんですけどって・・・」

A「私なんか今日で切られるんですよ」

B「私ら派遣はさ、これから3年ごとに職場変わることになるんだしさ」

杉原「すいませ~ん、注文お願いします。

*(中略)路上

3人「バイバーイ」

*3人別れる。遠ざかる有村の後ろ姿にむかってBが叫ぶ。

B「杉原~! 生き残れよ~!」

*右手を挙げてこたえる杉原

「生き残る」ってなんでしょう。このシーン、なぜかとてもせつないです。さらにこの回には、サービス残業パワハラを受けたあげく派遣切りに合う別の女子の話も挿入されます。

一方で2016年の高良健吾さんですが、しゃれたスーツに身を包みヘアスタイルもすっかり変わっています。彼の仕事は他では仕事にありつけないような若者を見つけては極端に安い時給で派遣する悪徳派遣会社のスタッフになっていました。もちろんそこから転身するのですが。

坂元裕二さんがここまで徹底して現代の若者たちが直面する負の現実を描くのなら、このドラマが単なる恋愛ドラマで終わるはずはありません。

ですから筆者は、若者たちの「せつない恋の行方」よりも、まるで若者いじめのような現実の中で、坂元裕二さんが若者たちをどう生きさせて行くのか、あるいはどう現実に立ち向かわせて行くのか、これからの物語の行方に強く興味をひかれ、期待しています。

まさかとは思いますが、「若者たちはそれでも与えられた環境で精一杯生きて行く」なんてオチだったら筆者は『いつかこのドラマを思い出してきっと泣いてしまう』ような気がします。