いじめのはじまり 修学旅行の写真に「×」
口げんかをきっかけに、殴る蹴るの暴行を受けた。反撃せず逃げたのに追いかけられ、さらに頭を力いっぱい殴られた。その晩から熱を出したり吐いたりして学校を休んだ。体調を戻し登校すると、廊下に張り出してあった修学旅行の記念写真の自分の顔に、「×」の傷がつけられていた-。
平成25年11月、当時大阪市立小6年だった男児が実際に受けたいじめだ。男児はこの直後から不登校になり、通学できないまま翌春、卒業。保護者の訴えから27年6月に設置された第三者委員会が今月10日、市に提出した調査報告書で、この生々しいいじめの実態を公表した。
報告書では担任らが「どっちもどっち」「ケンカ」などと扱い、重大さに気付くのが遅れたとしているが、再発防止の提言では、次のような下りがあった。
「児童たちには、いじめ等の対人トラブルを発見し、自分たちの力で解決できる集団になってもらいたい」
私の高校時代の話をする。あるおとなしい男子生徒が、同級生から繰り返し小突かれたりからかわれたりするいじめが起きた。だがある時、別の生徒が「こういう状況に腹が立つんだ」と突然叫んだ。割って入ったことで、その場は収まった。
子供たちに、こうした理不尽な行動を黙認しない空気があれば、いじめの大きな抑止力になると思う。
第三者委はいじめの背景の一つとして「暴力を振るっても他の児童から激しい非難は受けないと子供が思ったからだ」と指摘した。
教師や保護者は、子供に「いじめは嫌いだ」という意識、大げさにいえば理不尽さを受け入れない「美意識」を養うことができないか。いじめをなくすことは難しい問題だが、子供の力にかけたい。