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保護者と対立関係になるケースも…

「私たち遺族と話をしているときに、目の前でいねむりをしている委員がいた。娘のことを思い出しては辛くなる中、なにか手がかりになれば、と思い、私たちも一生懸命話をしている最中だった」

3月23日、参議院議員会館でシンポジウム「いじめにかかわる『第三者調査委員会』の問題点」も行われた。主催はいじめ問題に取り組むNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」(代表理事・小森新一郎)。その中で、ある遺族は、こう憤りながら調査委員会の問題点を指摘した。

いじめによって自殺や不登校などが起きた場合、学校や教委の元で調査委員会を設置する。しかし、初動調査がきちんと行われないことや、第三者性を疑問視されるなど問題点も指摘されている。そのため、「ジェントルハートプロジェクト」は同日、文部科学省に対して、「初動調査と第三者調査委員会設置に対する要望書」を提出した。

施行3年をめどに改正されるはずだが、議論が成熟していない

いじめ対策推進法は滋賀県大津市でのいじめ自殺事件をきっかけに必要性が強まり、2013年6月に成立した。いじめを「児童等に対して、一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為で、対象になった児童等が心身の苦痛を感じているもの」と定義されている。これは、インターネットを通じて行われる「ネットいじめ」も含まれている。

地方自治体や学校では、いじめ防止の基本方針を作ることになっている。地方自治体は、いじめ問題対策協議会を置くことができ、学校では、いじめ防止のための組織を作ることになっている。さらにはいじめによって、心身又は財産に重大な被害を生じた場合、あるいは、相当の期間学校を欠席した場合は「重大事態」として、学校の設置者、または学校が、調査を行うことになっている。

また、法律では、施行後3年をめどに、必要に応じて見直すとの規定がある。それが16年6月だが、具体的な法改正の議論が成熟しているわけではない。いじめの定義に関しても、「心身に苦痛を感じている」などの要件の範囲が広すぎるとの声もある。また、いじめによって自殺が起きたり、不登校になるのは「重大事態」とみなされるが、それを判断するのは学校や教育委員会だ。そのため、保護者・遺族との対立関係になってしまうケースもあるなど課題は多い。

「中立性、公平性を疑問視」 茨城・取手市の中3いじめ自殺

2015年11月10日、茨城県取手市の中学3年の中島菜保子さん(当時15)は自分の部屋で自殺した。

当日午後5時40分ごろ、菜保子さんは土砂降りの中、フードもかぶらずに自転車で帰宅した。この日、学校でガラスを破損するトラブルがあり、教員たちは菜保子さんと、いじめの加害者2人を同列に叱責した。母親に「本当のことが言えるわけがない」と言っていた。その後、ピアノ教室に出かけ、午後9時45分ごろ、帰宅して、自室に入った。午後11時ごろ、母親が菜保子さんが首を吊っているのを発見した。

遺影を前に話をする、父親の孝宣さん。遺影を持つのは母親の淳子さん(撮影:渋井哲也

父親の孝宣さんによると、中2までは特に問題があった形跡はないが、中3の5月の修学旅行の後に書かれた寄せ書きには「きらい」「うざい」「くそやろー」「うんこ」「クソってる」などと書かれていた。9月以降は、机の上に「くさや」と落書きされたり、耳打ちをされていた。休み時間のたびにトイレに連れて行かれ、授業に遅刻させられていた。教員はその理由を菜保子さんだけに聞いたという。

 日記には「いやだ もう 学校きらい・・・になった。3年のある日突然から。2年はこんなことなかった」と書かれていた。10月下旬には「毎日が怖い。今日はうまくいくのかいかないのか。家に帰ってからも、そのことばっかり考えて、疲れた。明日もぼっち?それとも上手くいくのかなって・・・、怖くてしかたがない。毎日、不安な夜を過ごしてる。疲れがピーク」などと記されていた。

市教委では12月、生徒にアンケートや聞き取り調査を行なった。しかし、「いじめは認められない」との結果を出した。遺族は納得せずに独自に調査した。その上で、いじめがあったと主張して、17年2月10日、市教委に第三者委員会の設置を求めた。3月、市教委では第三者委の設置を決めた。

 しかし、遺族は、調査委の委員の人選過程で「学校や教委に我々の意見を聞き入れてもらえるように訴えてきたが、第三者委に調査が移っても、これまでと同じような対応になっているのが現実。憤りを抑えることができない。遺族の意向が反映されていない」と訴えた。「子どもやいじめの専門家を入れようとはしない。我々の推薦人も聞きれることもない」とも、専門性が欠如していると指摘する。

また、「地理的にも性別も偏っている。年配の方々がほとんど。特定の所属機関から2人が選ばれている」などと、中立性・公平性について疑問視している。さらに取手市教委が事務局になっていることも問題とした。調査の過程で遺族と市教委は対立したため、「対立する一方が事務局をすることはおかしい」と、学校や市教委は調査のプロセスに一切介入しないように求めている。

第三者調査に対して、調査の方法や日程計画、進捗状況を遺族に対して行うことも望んでいる。

信頼関係なき審議会メンバー 青森市の中2いじめ自殺

また、青森県青森市の中学2年生・葛西りまさん(当時13)は、16年8月25日、電車にはねられて死亡した。りまさんはスマートフォンに「遺書」と題したメモを残していた。自宅のソファにあった番号が書かれた紙をもとに、警察から返却されたスマホのロックを解除したところメモのアプリの中に、メモがあったという。

前日の8月24日は学校の始業式。そこで、新たな噂を無料通信アプリLINEで流されていることを知った。「遺書」というメモが保存されたのは亡くなる1時間半前のことだった。父親の剛さん「同級生達から直接的な言葉の暴力、SNSでの言葉の暴力によるいじめを受け、自ら命を絶った。スマホに残されたメモにはいじめとはっきり書いてあった。何があったのか知りたい。それだけの思いだった」と切実な訴えをした。

りまさんの自殺についての調査について不信感を持ったことを話す父親の剛さん(撮影:渋井哲也

りまさんの自殺に関しては、16年9月7日、市教委が「いじめ防止対策審議会」に調査を要請した。しかし、審議会の調査が始まることをマスコミ発表以前に知らされなかった。「新たに立ち上げることなく、常設の審議会がそのまま調査するというのです。そんな組織があることを知らず、絶望の中で冷静な判断ができない私たちには市教委を疑う余地はなかった。真実を明かしてくれるもの、と信じるしかなかった」と述べた。

 しかし、生徒へのアンケートを見せて欲しいと要望しても、なかなか見せてもらえず、結果を見ることができようになる頃には17年1月になっていた。「肝心な部分は黒塗りだった。りまの名前まで消してしまう意味がわかない」。

審議会のメンバーについては、昨年11月に審議委員が追加になった。現委員に学校に詳しい人がいないから、との理由だった。「市内の小中学校でのいじめに関する審議会なのに、学校に詳しい人がいないというのに驚いた」。

また、12月にも追加になったが、子どものネットリスクに詳しい人を加えたという。どちらも事後報告だ。そもそもの審議会のメンバーはいったい、どのように選ばれたのか、疑問が残るところだ。

冒頭で挙げた調査委員の態度にも剛さんは不信感を持ったという。

「審議会を頼りにしていた。それなのにいねむりとはあまりにも無神経で非常識な行動だ。私たちの話に興味がないのか、聞くにも値しないのか。残念でなりません。審議委員全員と会ったのはこの時だけ。追加の委員を含めて直接話したことはない人もいる。どう見ても市教委の付属機関。都合のいい人選をしているのではないか」 

さらにこうつけ加えている。

「調査に関して聞いても、審議会に権限がない。また市教委は『再調査という方法もあるので』と言っている。再調査ありきだとしたら、これまでの調査はなんだったのか。違和感を覚えている。会長との対話しかない。一人の人間として信用できると思ったが、会長としての発言と個人としての発言では大きな差がある。言いたいことも言えず、苦しんでいるのではないか。どこまで書けるか精査している、ということだった。信頼関係が築けない報告書はいらない。これでは遺族は悲しむばかりだ」

直後に初動調査、中立性の担保、遺族への情報共有、利害関係の排除などを要望

こうした現状から、「ジェントルハートプロジェクト」では、文科省に以下の9項目を要望した。 

1、学校のすべての児童生徒への初動調査体制(三日以内に規定の調査書を利用)を確立させ、その情報を被害者と共有すること

2、調査委員会の検討課題は、事件直後に学校が行なった初動調査内容を基本とすること

3、調査委員会は中立性を保つため、利害関係のない他都道府県のメンバーで構成すること

4、調査委員会には必要書類の開示に関する権限を付与・保証すること

5、調査期間中、調査委員会と被害者が情報共有と情報提供できることを保証し、審議を透明化させること

6、調査内容の公開については、当事者またはその家族の同意を優先すること

7、調査内容の隠蔽や虚偽報告が発覚した時には、学校管理者への責任を法律に明記すること

8、調査委員会は、利害関係を排除するため、重大事案が発生した都道府県以外からの委員によって構成する体制を整えること 

9、ガイドラインを制度として踏まえた内容の真偽と報告書となるよう、文部科学省から支持してください。

要望の9項目にある「ガイドライン」とは、16年3月に作成された「不登校重大事態に係る調査の指針」だ。「不登校重大事態に該当するか否かの判断」について、法的には30日(目安)欠席が続いた場合だが、早期の段階で予測できる場合もあるため、設置者に報告・相談するとともに、準備作業を行う必要があるとしている。

また、いじめと不登校との因果関係が認められないからといって、すぐに不登校重大事態に該当しないとなるわけではない。学校や設置者がいじめがあったと判断しなかったり、いじめと重大被害の間に因果関係を肯定しない場合でも、重大事態として捉える場合もある、としている。

 そもそも、いじめ調査の第三者性とは何か。法律上、調査委員会は学校や学校設置者の元に置かれることになっている。そのために、厳密な意味で、調査委員会は第三者委員会ではない。また、いじめによって自殺、不登校が生じたとするのは誰が判断するのかといえば、学校の設置者、あるいは学校という“当事者”が判断することになる。調査委員会ができたとしても、調査委員は学校の設置者あるいは学校による推薦が多い。保護者・遺族推薦が行われることもあるが、必ずしも明確な指針はない。

シンポジウムには小西洋之参議院議員民進党)も参加していた。いじめ対策推進法成立に尽力した議員の一人である同氏は、こう述べた。

調査のガイドラインについて話をする小西参議院議員(撮影:渋井哲也

 「中立公平性については(衆議院文部科学委員会参議院文教科学委員会での)付帯決議で指摘していた。遺族の立場に立ったものでなければならない。立法時には、調査委員会をどこの元に置くのかという議論もあった。次の法改正では、教育委員会の外に置くように提案していきたい。いじめは救出が一番。法制定3年後になってやっとガイドラインができた。立法者からみれば、これで革命的な変化があるはず」