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アメリカのいじめ相談アプリを日本展開!

今年、千葉県柏市に導入され、注目を集めているいじめ相談アプリ「STOPit(ストップイット)」。昨年から私立校などで導入が広がり、柏市含め、利用者は25校、約1万2000人に広がっている。米国で開発されたこのアプリを日本の学校に導入する代理店「ストップイットジャパン」を経営するのが、谷山大三郎さん(34)だ。「日本の学校でも、このアプリを活用してほしい」。日本での導入に向けた原動力になったのは、自身のいじめ体験だったという。

調理実習のサンドウィッチ自分だけ配られず、つらい思い

当時を振り返る谷山さん

 谷山さんは小学校5、6年生のときに、いじめを受けた経験があった。

 「1学年1クラスの学校だったんですが、いじめられていました。猫背だと、からかわれたりして。それを誰にも言えずに、親にも相談できずに、悩んでいました」

 「よく覚えているのが、調理実習で、みんなでサンドウィッチを作ったんですが、作り終わっても、自分の分のサンドウィッチが置かれていなかったんです。でもそのときに、自分の分がないよ、ということも言えなくて。あまりこのことを大げさにはしたくない、という気持ちも働いて、そのまま食べずに実習を終えました。今では笑って話せるけど、当時はつらかった」

 そんな状況を打破してくれたのが、当時の担任の先生だった。パワーのある男性の先生だったが、いじめに気がついた先生は、当時話題となった、愛知県の大河内清輝君(13歳でいじめを苦に自殺)の話を出し、「このクラスにも大三郎君に対してひどいことをしている人がいる」とクラスで宣言。いじめをやめるように呼びかけたという。

 「このやり方がよかった、とは言い切れないと思いますが、自分は救われました。その後には、友達から、『いじめに気がついていたけれど、止めなくてごめん』と謝られたりして、実は周りの子もいじめに悩んでいたこともわかった。自分の経験から、いじめがあると気軽に報告できる窓口が、いじめられている子や、見てみぬふりをして悩んでいる子のためにも必要だと実感していたんです」

 このときの経験がきっかけで、教員を目指し千葉大学教育学部に進学することになった。

米で話題のアプリの記事を見て「日本の子供をこれで助けたい」と一念発起

ストップイットの報告画面。上の白枠にメッセージを書き込んで赤い送信ボタンをタップするだけでいじめを匿名で報告できる

 教員を目指していたが、教員採用試験に不合格になってしまったことをきっかけに進路を変更。同大の大学院を卒業後はリクルートに就職した。その後、早期退職し、大学時代から関わっていたNPO法人で、企業が学校でキャリア教育の授業を行う際のコーディネート業などを行っていた。教員ではない形で、教育に関わりたいという思いからだった。そんな中、2015年4月ごろ、あるインターネット記事が目に飛び込んできた。

 「そこに、STOPitのことが書かれていたんです」

 STOPitは2014年8月に米国でリリースされたアプリ。当時の米国では、インターネットの発達により、メッセージアプリなどを使ったネットいじめが横行していた。開発者は、「いじめの被害者とそれを目撃している人たちの両方に、いじめがどこで行われていようと、いじめを追跡できる手段をもたらしたい」と思い、アプリが生まれたという。

 STOPitは、子供がアプリをダウンロードすれば、ボタンのワンタッチで匿名のまま、学校や教育委員会といった第三者に助けを求めることができる。嫌なことをされたときにスクリーンショットや動画で記録し、学校側に報告することもでき、名乗らずに担当の大人とメッセージをやりとりすることもできる。報告やメッセージを受け取った教育委員会や学校には、学年や学校名など学校側や教育委員会側であらかじめ設定した送信先がわかるため、匿名であっても学校と連携を取り素早く解決に乗り出すことが可能だ。

 「これは日本にも必要だ、と直感し、問い合わせフォームからすぐにメッセージを送りました。日本でも同じことが起きているので、ぜひ日本の子供も助けてくれませんか、と」。

 すぐには返事が来なかったが、4回メールを送り続けると、やっと返事が返ってきたという。

 2015年8月、開発したInspirit Group, LLC社を谷山さんが訪問し、日本での導入に向けて事業が動き出した。

8ヶ月後、日本語版が完成

 アプリの日本バージョンを作るために、日本の教員や有識者の方にアドバイスをもらったり、米国のInspirit Group, LLC社の担当者とスカイプで何度も打ち合わせをするなどして、日本独自のシステムを作っていった。2016年の4月頃にようやく、デモ版が完成。2016年6月に、国内で初めて大阪の私立学校「羽衣学園中学校」で導入が決まった。同校では、導入以降、抑止効果が生まれ、いじめの報告が減っているという。

 その後、私立の学校を中心に、いじめが発覚した東京学芸大学附属高校や岡山県の県立高校などでも導入が広がり、現在は25校約1万2000人が利用する。今年柏市に導入されたことをきっかけに、問い合わせが50件以上来ているという。

いじめの傍観者にならないよう呼びかける授業プログラムも開発

脱・傍観者プログラムを受ける柏市の中学校の生徒たち(ストップイットジャパン提供)

 柏市の導入が注目される背景には、STOPitだけを導入するのではなく、導入時に特別な授業を行っているからだ。千葉大学教育学部の藤川大祐研究室が監修した脱いじめ傍観者プログラムとストップイットの合わせ技が効果を発揮している。

 同プログラムは、千葉大学の藤川大祐教授を中心に、柏市教育委員会、ストップイットジャパンなどが連携して開発。クラスの雰囲気がいじめの発生に関わるという千葉大学名古屋大学静岡大学の共同研究成果を元に、子どもたちが「脱・傍観者」の視点に立ち、いじめの予防や解決方法について話し合う授業プランで、道徳の時間や学級活動で活用できる。

 谷山さんによると、「このプログラムを受けてから、STOPitの案内をすることで、いじめられている当事者だけではなく、傍観者の通報も促すことができる」と説明する。

 柏市ではこのプログラムを中学1年生を対象に行った後、全中学生にSTOPit導入の案内をしたが、すでに昨年より多く、いじめの相談が寄せられている。 

 また、プログラムは、7月から無料配布を始めたが、すでに約500部配布されたという。

今いじめに悩む子に伝えたい思いとは

 自身の経験を糧に、いじめ対策を進める谷山さんに、今いじめに悩んでいる子供たちへのメッセージをいただいた。

 「いじめられている子は誰が味方かもわからず誰にも話せないでいる子が多いのではないか。自分も最後まで周りの人にSOSを出すことはできなかったので、その難しさはわかる。それでも、振り返ってみれば、周りには必ず1人は味方がいるものです。だからとにかく声を上げてほしいと思います。また、周りの子も、気がついているなら、絶対に誰かに言ってほしい。あの時何もしなかった、行動を起こせなかった、と後悔している人が、世の中にはたくさんいるんです」

 谷山さんは、いじめについて、なかなか相談しにくい現状を変えていきたいと語る。

 「電話相談やメール相談もありますけど、電話って子供にとってはハードルが高いですし、メールはやったことがない、という子供も多い。そういう中でSTOPitが少しでも役立ってほしい。これからLINEでも相談窓口を開設する自治体もあるそうですが、LINEでもSTOPitでもどちらでもかまわないと思います。相談へのハードルが下がることが一番だと思います。

 また、脱いじめ傍観者プログラムもどんどん広げていきたい。きれいごとかもしれないが、一番大切なのはいじめが起こらないクラスをつくること。このプログラムはいじめが起きやすい雰囲気について考える内容なので、このプログラムもSTOPitと合わせて広めていくことで、いじめ自体が減少するはずです」。