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いじめの加害者や傍観者にも目を向けよう!遺族らが学校事故、虐待などの調査・研究を行う団体「ここから未来」を発足 !

いじめや学校事故、児童虐待などの調査・研究を行う一般社団法人「ここから未来」が設立した。代表理事には「指導死親の会」の代表も務める大貫隆志さん。教育評論家の武田さち子さん、子どもをいじめ自殺で亡くした篠原宏明さん、真紀さんも理事に名を連ねている。

団体としては、機関紙やブックレットの発行のほか、講演会を通じて、子どもの命や人権問題について普及、啓発していく。9月9日には東京都港区内で、設立記念シンポジウムを行なった。基調講演では、南部さおり日本体育大学准教授が「子どもの心への『攻撃』」と題して講演を行った。

いじめ自殺で子どもを失った父親「被害者責任論では子どもは絶望する」

シンポジウムでは理事の3人が話題提供をした。2010年6月、中学3年(当時)の篠原真矢(まさや)君が自宅で自殺した。友達をいじめから守れなかったと告白しながらも、自身がいじめられていることは言わなかった。真矢君もいじめられていたことがわかるのは調査報告書ができてからだった。父親の篠原宏明さんはこう語る。

「いじめはあくまでも被害を受けた側の立場で考えるべき。被害をうけた子どもに“あなたも悪いところがある”という被害者責任論では間違いなく、子どもは絶望する。“悪いところがあるからいじめられても仕方がない”というのと同じ」

また、いじめ被害を訴えても、学校側の不適切な対応により、いじめが悪化していくこともある、とも指摘する。

「最悪の場合、当事者を呼び出して、握手して仲直りという対応をする、とも聞く。いじめの疑いを抱いた場合、当事者から直接聞いても、被害者は認めたくないし、事を荒立てたくない。加害者は隠す。冷静なのは周囲の子。外堀を埋めてから対処してほしい」

一方、いじめの加害者にも目を向けるべき、とも指摘する。

「いじめは加害者の問題として捉えることができ、背景に目を向けることが重要。『学校の成績のことで親に叱責された』『部活でしごかれている』『自分を認めてくれない』『家でも学校でも居場所がない。いじめているときだけ注目される。そこが居場所だった』という声も聞く」

真矢君へのいじめに関しては、

「加害生徒へ指導や教育はまったくしてない。地元警察が『加害行為に向き合わせるために、被害届けを出して欲しい』と言うので届け出た。反省の機会を奪ってはならない」

「傍観者と呼ばれる子どもたちは加害者でしょうか。『怖くて話助けられなかった』と言っていた生徒もいた。『もし注意したら、自分がやられる』と思っていたとのこと。傍観者も被害者ではないのか」

自殺で子どもを失った母親「命を預かっている意識を持って」

亡くなった真矢くんとの会話などを踏まえて
話をした篠原真紀さん(撮影:渋井哲也

また、真矢君の母親、真紀さんは、学校で友人がいじめられている話を真矢君から直接聞いている。

「元気がなかったので、『学校で何かあったの?』と聞いてみると、『友達がいじめにあっているんだ」と言っていた。名前は教えてくれなかったが、友達の名前を一人ずつ読み上げ、その子の名前になったら『うん』とうなづいた。『あんないいやつをいじめるなんて許せないんだ』と言っていた」

「真矢は、いじめられていた彼を尊敬していた。加害者は4人。『戦うなら、戦いなさい』と言ってしまった。学年が変わって、クラス替えがあると、いじめがなくなったと言っていが、家庭訪問のときに担任に『注意をして見てください』とお願いをした」

そんな中、真矢へのいじめはほとんどなくなるが、他の生徒へのいじめは続き、真矢君は加害生徒の教科書をカッターで切ってしまう。

「『こういうやり方だと、真矢が悪者になっちゃうよ』と言うと、『お母さんは偽善者だ』と言っていた。『あんなやつらに何を言っても無駄。形だけ謝っといた』とも。のちの調査で分かりますが、カッターで切ったのは教科書の名前の部分。真矢の行為は許されませんが、『怖くて何もできなかった』『よくやってくれた』という声もありました」

真紀さんは振り返る。

「いじめられている友達を庇ったら真矢も標的になった。真矢へのいじめ行為を教師は見ていたが、『あんたたち、何をしているの?』と注意をしただけ。真矢は絶望を感じたのではないでしょうか。母としても、心の内面を汲み取ってあげられなかった。ただ、いじめの多くは学校の中で起きる。子どもの命を預かっている意識を持って、先生は寄り添ってほしい」

教育評論家「教師に相談しても、何も対応しない場合や、教師がいじめる側について追い詰めた例もある」

いじめ防止対策推進法の成果と課題を語った武田さち子さん(撮影:渋井哲也

教育評論家の武田さんは、いじめ防止対策推進法ができたことについて、不十分な点も指摘されているとしながらも以下のように話した。

「法がなければ成し得なかったこともある。かつては(子どもがいじめ等で自殺をした場合)望んでもまともな調査をしてくれなかった。ただ、調査や遺族対応についてはガイドラインができたものの、自治体によってばらつきがある。報告書は、時間とお金、労力をかけて、関わったすべての人の心の傷をえぐりながら作るものであり、大切な教訓だ」

いじめ防止対策推進法では、いじめにより自殺や不登校などが生じると「重大事態」と位置付けられ、調査委員会が設置されることになっている。武田さんのまとめによると、法施行後の4年間で、自殺と自殺未遂に関する外部調査委は、把握できた範囲で57件。このうち、報告書が提出されたのは39件で、いじめを認めたのは29件だ。

「背景にいじめがあったと報道されたもののうち、法施行前は3分の1しか統計に載っていない。法施行後も報告書が出てから文科省に報告しても、統計の訂正時期を過ぎると反映されない」

また、「先生やお父さん、お母さんに相談しよう」と言われているが、57件中、30件(小学生で2件、中学生で22件、高校生では6件)は相談しているという。

「SOSの声をあげないからではない。教師に相談したが、何も対応しない場合や、教師がいじめる側について追い詰めた例もある。これまでの蓄積である程度の知見はある。しかし、教師は勉強をしてない。一方で、環境を整えずにいじめの問題を学校現場だけに押し付けていることにも問題がある」

南部准教授「加害者にとっていじめはストレスへの適応行動」

基調講演をした南部准教授(撮影:渋井哲也

パネルディスカッションに先立って、講演を行った南部准教授は、現在、日本体育大学でスポーツ危機管理学を担当しているが、もともとは児童虐待を研究していたという。児童虐待防止法では、身体的虐待、心理的虐待、ネグレクト、性的虐待に分類されているが、心理的虐待についてこう言及した。

心理的虐待は家庭内や学校など周囲と遮断された閉鎖空間で行われることが多いため、被害を受ける子どもにとっては逃れられず、反抗することも、周囲に被害を訴えることができない」

いじめの指導では、加害生徒の背景についても考慮する必要があるとして、

「家庭内で親から繰り返し乱暴で支配的な言葉を受け続けると、その子にとって家庭は安心を得られる『安全基地』ではなくなります。それでも、こうした心理的虐待に耐えるしかないため、そのストレスを学校で晴らす。このような子にとって、いじめは一種の適応行動です。いじめ加害者が抱える問題性に向き合うことがないまま、一方的に叱責をしてしまうと、加害生徒はより一層のストレスを抱えることになり、問題行動はエスカレートすることになります」

と述べた。