いじめニュース速報@イジ速

いじめ事件 ・イジメ ニュースを発信中!スマホいじめが増加!子供達をいじめから守ろう!

子どもへの「パワハラ」に気づかない親

  • 子どもにひどい言葉をぶつける親たち

  • ・ 子どもへのパワハラに気づかない親について取り上げている

  • ・ 「しつけのため」という錦の御旗を掲げ、親という権力的な立場に甘えている

  • ・ 親にいじめられている子は、弟や妹、クラスメイトの弱い子をいじめるという

これは私の教え子である小林さん(仮名)から聞いた話です。20代後半の彼女は会社で働いています。今いちばんの悩みは40代の上司である課長のことだそうです。その課長の特徴は次のようなものです。

1. 感情的ですぐキレる
2. 自分の都合や気分で言うことがころころ変わる
3. うまくいかないことは部下のせいにする
4. 叱ってばかりで褒めることができない
5. 上司にはへつらい、部下には威張る

たとえば、こんなことがあったそうです。ある案件の担当者8人と課長が不動産の物件を見に行くことになりました。課長が9時集合と決めて全員にメールで連絡したのですが、当日4人もの遅刻者が出てしまいました。というのも、課長は現地集合のつもりでいたのですが、そのことをメールに明記しなかったからです。間に合った4人はいつも外回りの仕事なので、「集合といえば現地集合」という暗黙の了解がありました。でも、遅れた4人はいつも社内で事務をおこなっている人たちなので、「社内で集合してから現地に行く」という思い込みがあったのです。

課長はキレて遅れた人たちを叱りつけました。もちろん、集合場所を確かめなかった4人にも責任はありますが、集合場所を明記しなかった課長にも責任はあるはずです。でも、自分のことは棚に上げて部下たちを叱りつけました。そして、「減給も覚悟しておけ」と言い放ちました。なんという理不尽な上司でしょう。

部下たちがあきれかえった「コピー機事件」


この連載の記事一覧はこちら

小林さんがいちばん頭にきたのは「コピー機事件」だそうです。ある男性社員がコピー機を使ったとき元原稿をそこに置き忘れて、それを見つけた課長がキレて叱りつけたのです。「こんなにだらしないことでどうする! こういう不注意から情報が漏れるんだ。お前はいつもこうだから、うだつが上がらないんだ」など、罵詈雑言の言いたい放題、まさにパワハラそのものでした。

ところが、その日の午後に、課長の上司である部長がコピー機を使って元原稿を置き忘れました。それを見つけた課長は、その元原稿を持って、いそいそと部長のところに届けに行きました。そこで、(部長)「ありがとう。またうっかり置き忘れてしまったよ」、(課長)「いえいえ、部長もお忙しいですから。私にできることがありましたら、何でも言ってください」などという会話がありました。聞いていた部下たちはあきれかえりました。

まさに最悪ですね。私も小林さんから聞いたときあきれましたが、今お読みになったみなさんもあきれたと思います。普通の良識のある大人だったらこんなことはしません。こんな人が周りにいたらと思うとゾッとします。

しかし、私はここまで小林さんの話を聞いて、「でも、よく考えてみると、実はこのような理不尽な行動を日頃からよくおこなっている人たちがいるな」と思い当たりました。それは誰かというと、”親”という立場の人たちです。

親のひどい言葉や理不尽な振る舞い

多くの親たちが、わが子に対してこの上司のような理不尽なことをしています。たとえば、私はこういう光景を見たことがあります。

ある駅ビルのエレベーターに乗ったとき、小学校の低学年らしき男の子とお母さんが、エレベーターに向かって走ってきました。お母さんが男の子の背中を押して、「急いで、急いで」と言いながら、2人はエレベーターの近くまで来ました。ところが、エレベーターが閉まり始め、お母さんがさらに男の子の背中を強く押したので、子どもがドアに肩をぶつけてしまいました。すると、すかさずお母さんが「何やってるの? ダメじゃないの」と言いました。

私は「お母さん、あなたのせいでしょ」と言いたいくらいでした。本来なら「ごめんね。だいじょうぶ?」と言うべきところです。このお母さんは、自分が子どもをエレベーターに無理に乗せようとしておきながら、ドアにぶつかったといって叱っているのです。自分が原因でそうなったのに叱っているのです。でも、もし相手が大人だったら、このお母さんもそこまでのことはしなかったはずです。

また、こういう光景を見たこともあります。あるイベント会場で食事の配膳をしているとき、子どもが豚汁のお椀を落として床を汚してしまいました。すると、お母さんが「何やってるの! 気をつけなきゃダメでしょ」と叱りつけました。でも、もしこの相手が大人だったら、そんな言い方はしなかったはずです。「○○さん、大丈夫ですか? 服、汚れなかったですか?」などと言いながら、甲斐甲斐しく片づけを手伝ったりするのではないでしょうか?

夏休みのイベントに参加した子が筆記用具を忘れて、お父さんに叱られているのを見たこともあります。お父さんは、「家を出るときに言っただろ。なんでそんなにだらしがないんだ!」などとぐちぐち叱っていました。でも、そのお父さんも、職場の会議中に同僚が「あ、資料を忘れた」と言えば見せてあげるはずです。「筆記用具を忘れた」と言えば、にこにこしながら「どうぞ、これ使ってください」と言いながら貸してあげたりするのではないでしょうか?

子どもに向かって「片づけしなきゃダメだろ! 片づけてないものは捨てるぞ」と脅しているお父さんも、会社ではそんなことは言いません。会社の同僚が「オレ、片づけ下手だから」などと言えば、「でも、アイデア力は抜群ですよ」などとお世辞を言うかもしれません。

親子の間では、このような理不尽なことが毎日起こっています。そして、親たちはそれを理不尽と思わないのです。冒頭で挙げた小林さんの上司の5つの特徴「1.感情的ですぐキレる 2.自分の都合や気分で言うことがころころ変わる 3.うまくいかないことは部下のせいにする 4.叱ってばかりで褒めることができない 5.上司にはへつらい、部下には威張る」がすべて当てはまる親がいかに多いことか……。

権力的な立場に甘えている

なぜこういうことになるかというと、親という権力的な立場に甘えているからです。子どもは弱い存在であり、親は圧倒的な権力者です。喩えていえば、鵜飼いの鵜匠のように、親たちは子どもたちの細い首をわしづかみにしています。締めるも弛めるも気分次第です。

親には「子どものため。しつけのため」という錦の御旗があるから平気なのです。でも、それはただの言い訳です。本当は相手が弱いからです。親は圧倒的な権力者であり、子どもは無力です。弱い相手を一方的に攻撃する……。これは親によるいじめです。親による子どもへの人権侵害であり、ハラスメントといっても過言ではありません。子どもをいちばんいじめているのはほかの誰でもない親です。親にいじめられている子は、弟や妹、あるいはクラスの弱い子をいじめます。親がいじめを教えているのです。

学校や職場など、社会のあちらこちらでいじめ、ハラスメント、人権侵害が起こっています。ところが、今から数十年前までは、それが大きな問題であるとは認識されていませんでした。「人間関係があるところではあって当然のこと」くらいの認識しかなかったのです。最近になってようやく、それは許されないことだと認識されるようになりました。

ところが、いまだに親子の間では「あって当然のこと」くらいの認識しかないのです。子どもにひどい言葉をぶつける親たち、理不尽な振る舞いをし続ける親たち、彼らは誰1人として自分が子どもをいじめているとは思っていません。

もう次の段階に進んでいい時期です。「親のひどい言葉や理不尽な振る舞いもいじめなのだ。親であってもいじめはゆるされない」という認識に至るべきです。

本当に、子どもが叱られている姿を見ると悲しくなります。実につまらないことで親たちはよく子どもを叱ります。家で叱るだけでは足りなくて、楽しい旅行の最中にも叱ります。新幹線の改札口で叱られている子どもを見たことがあります。ついさっきまで、子どもはニコニコ笑顔いっぱいで幸せでした。そこへ親の冷たいひと言……。子どもから笑顔が消え、悲しみが広がります。満開の花が急にしおれるように、子どもはうなだれます。せっかくの楽しいひとときも台なしです。

あなたは、大人同士では言えないようなことでも子どもには言ってしまう、そういう人ではありませんか? もしそうだとしたら、それは何を意味するのでしょうか? それは、あなたはその程度の人間に過ぎないということを意味しているのです。あなたは強い者にはへつらい弱いものには威張る、その程度の人間に過ぎないのです。そういう意味で、子どもは親の真の姿を映す鏡なのです。