いじめニュース速報@イジ速

いじめ事件 ・イジメ ニュースを発信中!スマホいじめが増加!子供達をいじめから守ろう!

いじめ撲滅 「BE A HERO」プロジェクト

f:id:ryoushinn11:20180725182413p:plain

文部科学省の2016年度問題行動・不登校調査では、いじめ認知件数が前年度より10万件近く増え、過去最多の32万3143件に上った。「いじめをなくすために何ができるのか」。教育現場の長年の課題に対し、科学的な研究結果を生かし、いじめが起こらない集団を作ろうという取り組みが始まっている。いじめ撲滅のための授業が行われた中学校を取材した。【金秀蓮】

 ●海外の研究を基に

 授業は公益社団法人「子どもの発達科学研究所」と、米大リーグ・マリナーズ岩隈久志投手が監修する「IWAアカデミー」が共催するいじめ撲滅プロジェクト「BE A HERO」の活動の一環。昨年11月に浜松市内の中学校で始まり、今年度から他都県の小中学校を中心に少しずつ広まっている。

 プロジェクトの特徴は海外で先行するいじめの研究結果を基にアプローチしていることだ。学校でのいじめは、周りの子ども、つまり傍観者が「いじめはだめだよ」と声を掛けると、加害者の過半数が数秒以内にいじめをやめることが、カナダの研究者の報告で明らかになっている。いじめは少数の加害者と少数の被害者の間で起こっている場合がほとんどで、多くは傍観者だ。そのため、プロジェクトは傍観者の役割も重視する。

 同研究所主席研究員の和久田学さんは「加害者や被害者と違い、傍観者は簡単に見つけられる。傍観者にもいじめとは何か、いじめをなくすためにどのような行動が必要かを教えるのが大切だ」と話す。

 ●場面設定して討論

 <あるクラスでの出来事です。いつも休み時間になると鬼ごっこが始まります。楽しいのですが、気になることがあります。鬼になるのはAさんだけ。みんなでAさんを避け、Aさんから逃げます>

 6月末、東京都港区立赤坂中学校(全校生徒100人)であった「BE A HERO」の授業。そこで示された、いじめに関する四つのエピソードのうちの一つだ。

 このエピソードに対して(1)Aさんがいつも鬼で避けられるのはいじめだ。やめた方がいい(2)Aさんも笑っているし楽しそう。これは遊び--という二つの意見をあらかじめ紹介。子どもたちがどう思うかグループで考えさせた。すると3分の2の生徒は「笑っていても楽しくないかもしれない」などと(1)の意見に賛同したが、3分の1は「楽しんでいるからいい」などとして(2)の意見を支持した。

 和久田さんは「いじめられている側は『やめて』とか『嫌だ』と言えない。自分がAさんの立場だったら笑っていられるか想像してほしい」と語りかけた。四つのエピソードを通して「助けを求める勇気を持つ」「相手の気持ちに共感する」「相手を自分と同じように大切に扱う」「広い心でみんなを受け入れる」ことを確認した。そして、それらの考えを基に具体的にどのような行動を取るかを考え、生徒一人一人が行動宣言を記した。3年の女子生徒は「今までは、何かに困ったり悲しんだりしている人がいても声を掛けられないことがあった。これからは自分で話を聞いて、誰かに知らせるという行動をとりたい」と語った。

 ●集団の考え変える

 16年度のいじめは小学校23万7256件、中学校7万1309件、高校1万2874件、特別支援学校1704件。

 いじめが大人の目が届かないところで起き、被害者が助けを求められないことが多いことを考慮すると、認知されないケースもあるとみられる。

 「起きてしまったいじめを解決するだけでなく、いじめをしない子どもを育てることが大切だ」と和久田さん。IWAアカデミーの木村匡宏さんは「いじめを防ぐために、子どもがどう行動すればいいか分かることで、学校の雰囲気も集団の考え方も変わっていく」と話した。

大人が「悪い手本」見せない

 いじめをなくすために大人ができることは何なのか。プログラムを開発、主導する和久田さんは「いじめをする子どもには『いじめをするモデル』となる親や先生、年長者がいる可能性がある」と指摘し、「大人が人をいじめないこと。大人が変わるべきだ」と強調する。

 幼い子どもの考え方や行動は、母親や父親のまねから始まる。学齢期になり部活に入れば先輩や顧問の行動をまねる。なぜなら子どもにとって、父母や年長者は「尊敬する人」だからだ。和久田さんは「母親がいつもいらいらして誰かを攻撃する行動を取っていると、子どももいらいらしたときに誰かを攻撃してしまうようになりがち。先生が立場や権力を乱用して生徒を支配しようとすると、そのような考えをまねてしまう」という。

 「分別のある大人なら『自分がされて嫌なことは他の人にしない』という発想になるが、発育途上にある子どもは暴力や虐待を受けると『力がある者は力で支配してもいい』と学んでしまう場合が多いことを認識する必要がある」と話す。

 いじめられた子の救済やいじめている子の指導だけでなく、いじめをしない子を積極的に育てようという発想のいじめ撲滅プロジェクトを通じて身に着けさせようとしているのは、いじめはだめだという価値観だけではない。

 和久田さんは「いじめられていれば助けを求めていいこと、相手の気持ちを考えること、独りぼっちになりがちな友だちを一人にしないことなど、子どもたちの『言葉や行動を具体的に変えること』を促している。このプログラムが子どもたちの将来を守る教育になればと期待している」と語った。

www.ijime-a-true-story.com