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いじめで自殺をさせないために、親がするべき事

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これまで様々ないじめの現場に出向き、そしてことごとく解決してきた現役探偵の阿部泰尚(あべ・ひろたか)さん。そんな阿部さんは自身のメルマガ『伝説の探偵』で今回、ある高校生のいじめ事例をあげながら、夏休みにこそ子供の「いじめ被害の有無」を確認すべき時だとして、「子供が話しやすくなる親の態度」などについて記しています。

 

夏休み中にいじめは確認してください、キーワードは対価交換?

高校2年のA君の場合

A君は東海地方の県立高校の2年生。彼はいじめられていることを必死で隠していた

本人曰く、親に言うのは恥ずかしく、迷惑をかけたくなかった、友人らにも何か厄介ごとに巻き込んでしまうようで嫌だったし、自分で解消しようと考えていた。また、担任には無関係と考えており、部活顧問については、過去いじめを放置しより悪化させたことがあり、絶対に相談したくないと思っていた。

だから、彼は夏前に部活を辞めたいと部活顧問に申し出たのだが、無為に慰留され、保留という扱いになった。A君は、もう辞める意思は申し出たから、夏休み中は一切部活には出ないと決めていたが、「なぜ来ないのか?」「内申点に影響するぞ」などLINEでの嫌がらせ的な連絡が頻繁にあり、そのストレスで胃炎を発症した。

A君の様子がおかしいことは、保護者もわかっていた。だが、高校生でもあるから、本人が自ら話してくれるまで様子を見ていた。

A君の場合、いじめ被害を訴えでていなかったが、部活に出てこいという顧問の先生からの連絡が重いストレスを与え、結果的に体調を崩していじめの事実が明るみに出ることになる。

A君は心配する父の問いかけに、いじめられているという内容を話した。そして、保護者と顧問が電話で話すことになったが、改めてA君から直接話が聞きたいと顧問が要請し、A君はそれを話すために学校に行った。

しかし、顧問は部活内でいじめの調査をしており、A君が部活内でいじめられているというのは、デマカセであり、頑張っていないだけだと責められる場になっていた。

本人曰く、「俺だって家族がいるのに、休みたいのに、部活の顧問だから頑張って学校来てるのに、お前はなんだ? いじめ? そんなの誰もしてないって言ってるぞ。仲間を陥れて、自分だけ楽しようなんて、なんて奴だ!!」と顧問に言われたそうだ。

その後、保護者も入っての話し合いとなったが、話し合いは完全な平行線となった。そこで調査となったわけだが、調査では、部活加害者側のグループLINEを入手し、これに基づきいじめの証明を行った。

この部活は、地区大会などで1回戦は突破できることが多いが、2、3回戦で敗退するようなチームであり、顧問は生徒らに活動を任せ、ほぼ不在という典型的な放置系部活であり、リーダー性のないいじめ加害の主犯がキャプテンであったため、内実、反発的な意見をもっている部員が多かった

何かチャンスがあれば、追い落としてやろう、そういう空気が部活内に漂っていた。さらに、私が勝手に見学した段階では、別の部員がいじめの対象となっていた。だから、容易に接触容易に証拠を入手することができたのだ。

顧問は唖然とし、すぐに主要ないじめの加害者からスマートフォンを取り上げて、このグループを確認した。私が報告した内容がグループトークと一致していることや既にいじめのターゲットが変更されていて、別のいじめが発生していること、女子マネージャーについての卑猥な表現や練習試合の応援に来てくれた部活顧問の妻の隠し撮りなど様々な内容を確認することになった。

この件は現在学校側が対処を検討するとのことで、一時的に部活は休止となっている。対外的には、部活のブラック化など、社会的要因のための一時的な休部としている。

夏休みこそ子どもの様子がわかるとき

いじめを受けている子どもは、我慢を強いられる。そして、強いストレス状態で過ごすことになる。夏休みになっても、その緊張状態は残るが、学校に行かなくてよいことで、加害者と顔を合わせないから、学期中よりは緊張の糸がほぐれるわけだ。つまり、普段より変化が起きやすくキャッチしやすいということだ。

私の経験では、多くの子が「朝寝をしやすい傾向がある。それは、夜寝る時間が遅くなる傾向があったり、寝つきが悪くなるということもさることながら、ストレス緩和には睡眠が重要な鍵を握ることが多いから、自然と睡眠を確保するようになる。

もちろん、休みだから通学に間に合う時間に起きなくてもよいという心理もあるとは思うが、傾向としては、「朝寝」は出やすいのだ。

いじめの被害シーンを思い出してしまうトラウマやいじめのことが引っ掛かって物事に集中できなくなるという傾向もある。特に夏休みが残り10日も無くなってくると、落ち着きがなくなったり、イライラすることが多くなったりする傾向やその真逆の傾向が出やすくなる。

お盆や夏の休暇などで親子で過ごす時間は多くなるであろう。その時、よく観察して欲しいのだ。注目すべきは普段との差であり、ロジカルに考える必要はない、直感として違和感を感じたら、それを信じて欲しいのだ。

例えば、私は調査活動で聞き込みなどをしている時、質問への反応を見ている。言葉は参考程度で、反応としてのボディランゲージの方を重視する。いじめを受けている子の多くが、自らいじめを隠そうとするのだから、言葉だけをそのまま間に受けていたら、いつまで経っても本当のことは聞き出せないだろう。

もちろん、恋愛関係の悩みを抱えているかもしれないし、将来についての不安や勉強についていけないなどで悩んでいるかもしれないから、いじめと決めつけずに観察して欲しい。

 

A君がなぜいじめられていることを話したのか

A君の父親は、A君がいじめられているのではないかと、ずっと疑問を持っていたが、A君が否定をしていたので、その言葉をなるべく信じようと心がけていた。私への相談はこの父親からであった。

いじめられているかどうかわからない中で無償の調査をしてくれという要請には、一切私は応えない方針だ。なぜなら無償対応であり、それは親力、親子関係で行うべきだと考えるからだ。もしも、それでもやってくれというならば、断るか有償調査での依頼かの2つの選択肢しか用意できない。

だから、私は、A君の父親に次のようなアドバイスをした。これは多くの教員や保護者が、不意に子どもからいじめ行為の告白やいじめ被害の話を聞く事が出来た際に同様の体験をしているので、それを私は話したのだ。

ルールは3つだ。

1つ目は、警察の取り調べではあるまいし、そもそも認めさせる強制力はないと考える事

2つ目は、論理的に理詰めで追い詰めて行こうと考えても、否定には根拠はいらない、意思のみで事実とは異なっても否定されてしまえば、それで話は終わってしまうという事

3つ目は、無駄話や自分の失敗談などが意外な呼び水になる事が多いという事

ある小学校の校長は、校内で起きるいじめ行為に頭を悩ませていた。校長自身、児童一人ひとりの名前も顔も知っており、いろいろな子の相談も時間が許す限り校長室を開放して受けていた

あるとき、学級担任からいじめ行為をしているかもしれないという児童と校長室で、校長が子どもであったときの遊びの話をしているとき、この児童は、唐突に、友達が羨ましくて、その子の靴を他の下駄箱に隠してしまったと告白を受けた。脈絡も質問もしていなかった中で突然の告白に驚いたようだが、その後、校長が間に入って、見事に和解に漕ぎ着けた。

私はこの校長がこれまで築いてきた児童との信頼関係が土壌にあり、心の重荷になるいじめ行為を話したのだと考えた。ロジカルな世界で生きている大人には理解できないかもしれないが、心を開くというのは、システムやテクニックではなく、現場にいると、もっと泥臭いものなのだ。

A君の父親は、一緒にテレビを観ているときに、そのテレビの内容に合わせて、自分が子どもであったときの失敗談を何と無く話をした。すると、A君はしばらくしてから、「部活を辞めたいのは、孤立させられたり、集合場所や時間をわざと間違えて教えられたり、嫌がらせが酷いんだ」と話した。

後に、私がA君になぜその時に、いじめの被害を話したのかと質問すると、彼はしばらく考えて、「対価交換かな」と答えた。つまりは、父親も恥ずかしい話をしてくれたから、以前から質問されていた部活を辞めたい理由を話したというわけだ。

私はこの回をどうしてもお盆前に「伝説の探偵」で報せたかった。世の中には、机上の空論とどのような条件下で取られたデータかわからぬ統計を用いて、いじめの専門家だという者もいる。そうした者は、確かに論理的だし、話もわかりやすいが、現場を知らない。実際にいじめられている者の話を直接聞いたことはほとんどないのだ。だから、使えないもしくは使われた事がない何かのテクニックなどの情報が世の中には溢れている

例えば、ある教育委員会では多額の予算をかけて、いじめ予防の動画を作っているが、運転免許の更新時に見せられる事故の映像と効果的には大差がない。そもそもこうしたものが響く層は、予防教育がなくてもいじめに加担はしづらいが、いじめの加害常習者には何の感情も警鐘もない

共働きやお金や時間に追われる親世代も多い事だろう。簡単な方法やシステム的な方法が目につけば飛びついてしまうかもしれない。

だから、お盆などで休みがあり家族の時間が比較的多く取れるであろうこの時期、そして、実際、近年は夏休み明けは9月1日と決まっているわけではなく、地域によって20日ごろから夏休みは開けてしまうので、その前に子供と心と心で向き合ってほしいと伝えたかったのだ。

いじめによって、これ以上犠牲者を増やしてはならない。子供達が夏休みの今こそ、親にはできる限りなどと勝手に自分に上限を作らずに、子どもを1人の人間としてみてしっかり向き合ってほしいと思う。

 

編集後記

毎年、9月1日は子どもの自殺が激増するとのデータから、「いじめ自殺防止のための共同宣言」というのを、NPO団体や有志の方々を集めて行っています。メッセージは、強烈に、学校に行きたくなかったら学校に行くな! というのが冒頭に来ます。

世間ではこれを無責任だという人もいます。教育の機会が失われるではないか! というわけです。私はこれに強く反発しています。命より大事なものはないからです。命を危険にさらしてまで、学校に行く必要はないし、それで教育が受けられないというならば、命と天秤にかけるなと言いたいのです。

また、私は塾の講師の経験がありますが、成績の面で言えば、学校より効率的に分かりやすく勉強を教えることは可能だと断言できます。学校に行くことが全てではない、そういうところから意識を改革していく必要があるのではないかと思うのです。一方で、学校は行きたい、と思えるような魅力的な学校になってほしいです。

冒頭9月1日としましたが、実際は夏休み明けです。今では夏休み明けは地域によって違います。メディアの方々は、それを知ってかしらずか、9月1日に「自殺はやめよう」というメッセージを合わせようとしますが、はっきり言って遅いです。そこからは自殺をなんとか止めたいということではなく、話題に乗っかりたいというメッセージしか残りません。

できれば、自殺はやめようというメッセージを送り続けてもらいたいと思います。