子供に好かれる保育士は同僚に嫌われる
男性の彼女にしたい職業の上位に常にランクインする保育士や幼稚園教諭。子供好きなところや、清楚で素朴などいいイメージも多いが、職場は女の園。世間で騒がれている低賃金よりも、陰湿ないじめで退職する人も少なくないという。そのいじめはいかほどのものなのか。過去に陰湿ないじめにあった元保育士さんにその実態を聞いた。
2児の母で現在は専業主婦として家庭を支えているSさん(30歳)は黒髪を後ろに1つに束ね、化粧気はないものの目鼻立ちがハッキリとしたかなりの美人。彼女は短大を卒業後に幼稚園教諭として1つのところで2年間正規として働き、その後1年ほど属託として働いていた過去を持つ。
「1つ目の職場は新卒で採用されて、周りは母親ほど年齢の離れた人たちばかりでした。だから最初は本当に色々親切に教えてくれたりしていたんです。子供たちが帰ってからピアノを練習する時なんて、練習にも付き合ってくれていました」
しかし、子供たちから好かれたことで職場の雰囲気は一転したという。
「2人で1つの教室の担当になっていたのですが、もう1人の先生より自由時間になると私のほうへ子供たちが集まることが増えていったんです。そしたら急に態度がガラっと変わって、いじめに遭うようになっていきました。
私は2人組のサポート側だったので、そこから子供たちに関わる時間のほとんどで雑務ばかりを命令されましたね。子供たちとの接点を無くされたんです。さらに、1日で終わらない作業を命じられるのは当たり前、1日の保育終了時に先生同士での話し合いの会があったんですが、作業が遅いとか、どこかダメだったかを逐一他の先生に報告されていました」
さらに、女性同士だから黙認されてしまうようなセクハラまがいのことも受けていた。
「『子供を産んでないくせに』と男性から言われたら明らかにセクハラになる言葉を浴びせ続けられていました。子供がいないから、子供の気持ちがわからないと。ニュースでは子供を産む順番があるなんてものが流れたりしていましたが、私の園では逆でしたね」
最後には子供たちの父母にSさんの失敗エピソードを膨らまして言われたり、失敗したことの一覧を紙にまとめられ、園長や他の先生に配られたこともあったそう。
続いて話を聞いたのは、保育士として3年前まで働いていたIさん(28歳)。彼女の職場では多勢によるいじめが行われていたという。
「そこは経営者と園長がズブズブで、絶対的な権限を持っていたんです。他の先生たちがいかに園長に気に入られるのかの合戦が毎日行われていました。その園は2つ目の職場で、1つ目が平和だった分、その流れに気付くことができなかったんです」
Iさんはたった一度だけ、経営者家族の家へのお呼ばれを断ってしまったことでいじめの対象になってしまう。
「お呼ばれの時は家族の用事でどうしても参加できませんでした。断った時は園長は笑顔で理解してくれたのに、次の日出社すると今まで仲良くしてくれていた同期の先生から無視されて……。話しかけられる時は用事の時だけ。パソコンなどで作った園だよりなどの資料のデータが消されたことや、手書きで作った保育室の装飾物を破かれていたこともありました。トイレ掃除も新人の分担なのですが、私だけやらされ続けましたね。
本当に辛かったのは、休憩時間は私以外のみんなが輪になって聞こえるように文句を言われること。居場所がなくて、トイレやロッカー、外にある階段の隅っこで時間を潰していましたね……」
Iさんは正規雇用だったこともあり、いじめにあう前から属託の同期には「正規なんだから」と数々の作業を負担させられていたとか。男性がいるところではあまり行われない女性の陰湿いじめ。もちろんいじめなどない園のほうが多いだろうが、働く前に見極めることが難しい。あの癒し系の笑顔の裏にはこんな苦悩が隠されているのかもしれないのだ。