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壮絶ないじめを経験した高2を支えた俳句

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「生きるとは何か 生きるとは『抗う』ことである」

 これは、17才の少年が記した一文だ。先月発売された俳句エッセイ『生きる 俳句がうまれる時』(小学館)の冒頭に綴られている。決意に満ちた言葉に、大人も襟を正さずにはいられない。

 記したのは、小林凜君。高校2年生。小・中学校時代に壮絶ないじめを経験した。それは、命の危険さえ感じさせるものだった。絶望的な思いに沈む彼を支えた1つが“俳句”であった。最新著作『生きる』に込められた凜君の思いを訊いた。

 小林凜君の少年時代は、陰惨なものであった。小学校では、突然背後から突き飛ばされ、左顔面を強打。バイ菌扱いをされたり、凜君が読んでいた本を急に取り上げられ、投げ回されるといったいじめを受けていた。教師や学校に訴えても、まともに取り合ってもらえず、見て見ぬふりをされた。

 いじめは、エスカレートしていく。「消えろ、クズ!」という暴言を吐かれ、殴られる蹴られるといった暴力で、体中に痣や傷が絶えなかった。「なんでいつもぼくなんだ! なんであいつらは!」と、教師やクラスメートに対し“憎悪”の感情が際立っていった。

【いじめられ行きたし行けぬ春の雨】

 そんなつらいことを忘れさせてくれたのが『俳句』だった。

 凜君が俳句を作り始めるきっかけとなったのは、幼稚園の頃に読んだ絵本や教育番組『にほんごであそぼ』(NHK Eテレ)で、俳句に触れ、5・7・5のリズムが心に響いたからだという。

 それから、自分の思いを俳句にのせるようになった。初めは季語や切れ字といった、俳句のセオリーがわからず、型破りの句を読んでいた。それでも、凜君の祖母と母は「秀作!」と大喜びしてくれたという。

 家族の笑顔を見たくて、俳句作りが凜君の習慣となっていった。

「俳句はぼくにとって、支えであり、盾であり、生きるための力です。俳句があったからこそ、嫌なことを一度遮断できた。俳句を盾にするつもりはなかったけど、結果的に俳句を考えていたことで、いじめられていた嫌なことを忘れられていたのかなと思います」

 

【仲直り桜吹雪の奇跡かな】

 そして、いじめを受けた凜君を支えたのは、俳句だけではなかった。いじめを受けている凜君に「外へ散歩に行きましょうか」と学校の外へ連れ出してくれたのが、恩師のS先生だった。

「S先生は諭したり、ベタな宥め方ではなく、ただただ、ぼくの話を黙ってうなずきながら聞いてくださった。否定したり、持論をぶつけたりせず、共感してくれました。ぼくは、その時の感情を暴走させず、抑えるきっかけになったと思います」

 その後、ある日のこと、凜君をいじめていた相手と道でばったり会った。凜君は反射的に心の中で身構えた。ところが、相手の様子がいつもと違った。

「あれっ? 殴りかかったり跳び蹴りしてくるには、距離が離れすぎているぞ」

 人をいたぶることが好きそうな意地の悪い顔つきだったのに、その日のそいつは伏し目がちだった。そして、おずおずとゆっくり近づいてきた彼は「今までいじめてごめんなさい」と頭を下げた。

「いじめをするような人たちが改心するというのは、本当に奇跡みたいなことだと思いました。一生人を痛めつけて、それを喜んで生きていくんじゃないかとさえ思っていた。でも、頭を下げたっていうのは、ぼくにとって衝撃的であり、すごく嬉しいことでもありました」

 桜がふぶくそのワンシーンが今でも忘れられないという。

 人との出会いで凜君の心は支えられ、立ち直っていく。

「ある日、近所を散歩していたら、道端に銀杏が落ちていて、その家には大きなイチョウの木が立っていたので、じーっと眺めていました。そうしたら、家の扉が開き、『(凜君著作の)本、読んだよ』とおばさんに声をかけられました。その銀杏を袋に詰めて渡してくださったのが“銀杏のおばさん”との出会いです」

【銀杏の降る一粒に笑顔かな】

 その日から“銀杏のおばさん”との交流が始まる。おばさんは、本を読んだ感想と、励ましの言葉が綴られた手紙を何度も渡してくれた。“こんな身近にぼくの本のファンがいたなんて”! 自分の作品がなんとも誇らしく感じられた瞬間だった。

「手紙は大切に保管しています。ぼくにとって銀杏のおばさんは、存在自体が支えでした。おばさんとのふれあいは温かい思い出です」

 銀杏のおばさんはかつて幼稚園の先生で、生徒の中に吃音に悩む子がいた。返事がうまくできないその子を、周りの子供たちが笑った。それを見たおばさんは、子供たちを強く叱ったという。

 また、その状況を看過していた他の先生も叱った。身体的特徴を、からかいの対象として責める行為は卑怯で低劣。それが許せなかったのだという。

「ぼくは将来、銀杏のおばさんのように、間違ったことをしっかり大きな声で言える大人になりたいです。ぼくがこうしていられるのは、支えてくれた人がいるから。大きな声まであげられなくても、ぼくが今度は同じ立場である人を支える人間になりたい」と凜君は語る。

 俳句によって交流の輪が広がり、俳句とともに凜君は成長していった。

 

 昨今、いじめが原因で自ら命を絶ってしまう子も少なくない。今、いじめで苦しむ人へ向けて凜君は「とにかくその場所から逃げてほしい。離れることがいちばん」と、体験者としてのメッセージを送る。

 親は、いじめを受けているわが子にどのように接するべきか。

「むやみに詮索するよりも、できるだけそばにいてあげることが大事だと思います」

 実際、凜君が小学生の頃、母がずっとそばにいてくれた。やさしく見守ってくれた。凜君の体にできた傷を目にし、いじめを受けていることに気づいてくれた。

「家にいる間だけでもずっとそばにいて、異変に気づいてあげてほしい」

 現在高校生となった凜君に「学校生活は楽しいですか?」と質問した。即答だった。

「親友もできて、授業も受けられて楽しいです!」