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社会が「子どものいじめ」を増長?

経営側が最後の最後まで首を縦に振らなかった「パワハラ防止措置」の法制化が、やっと進められることになりました。

 日本は「指導」という美徳のもとパワハラが許されてきた、いわば「パワハラ防止後進国」。企業にパワハラ対策の措置義務を課すだけでパワハラがゼロになるとは思えませんが、大きな一歩であることに間違いありません。

 今後、パワハラ検討会が提示した新たな「職場のパワーハラスメントの概念」が広がっていけば、パワハラへの意識は確実に高まるはずです。

 ……が、それを伝えるメディアが極めて少ないのが、気になるところです。

 ですので、すでに他のコラムで書いているのですが、「自分が加害者にならないため」にも再掲しますね。

 まず、これまでのパワハラは、「職務上の地位や人間関係など職場内の優位性を背景に、業務の適切な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させたりする行為」とした上で、次の「6つの行為類型」に分類されていました。

  1. 暴行や傷害などの「身体的攻撃」
  2. 脅迫や侮辱、暴言などの「精神的攻撃」
  3. 隔離や無視などの「人間関係からの切り離し」
  4. 遂行不可能な行為の強制などの「過大な要求」
  5. 実際の能力や経験と懸け離れた程度の仕事を命じるなどの「過小な要求」
  6. 私的なことに過度に立ち入る「個の侵害」
  photoパワハラ防止対策の法整備が進められることになったが……(写真提供:ゲッティイメージズ

 それに対して今回は、上記の6類型を踏まえつつ、次の3つの要素全てを満たすものを「パワハラ」と定義。つまり、この3要素を事例に当てはめて考えれば、「パワハラに該当するか、該当しないか」が判断できるのが特徴です。

  1. 優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
  2. 業務の適正な範囲を超えて行われること
  3. 身体的もしくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害すること

 これによって、全てのケースで100%白黒つけられるわけではないかもしれません。しかしながら、「パワハラにならない」事例が明らかになれば、「指導とは何か」を考えるきっかけが生まれ、呪いの言葉のように使われてきた「境界線」のグレー部分がかなり薄まることが期待できます。

そもそも私たちは職場に「人格」や「人間性」まで提供しているわけではありません。

 全ての社員が「家に帰れば、誰もが大切な父であり母であり、息子であり娘」です。職場のハラスメントなんかで、うつに至らしめられたり、苦しめられたりしていいわけないのです。

 企業は「はい! 相談窓口設置しました! これでオッケー!」とアリバイづくりに精を出すのではなく、実効性のある措置を「自分たちの問題」として取り組んでいただきたいと心から願います。

増え続ける「子どものいじめ」

 さて今回は、大人のパワハラが子どもの「いじめ」に影響を与えている可能性について、少々お話ししたいと思います。

 先月、全国の小中高などで2017年度に認知したいじめが過去最多の41万4378件だったことが、文部科学省の問題行動調査で分かりました。

 16年度と比べると9万1235件(28.2%)増。増えた背景には、早期対策のため、同省が軽微なものでもいじめと捉えるよう促しているためとみられていますが、いじめが原因で自殺する生徒が後を絶たないなど、深刻な事例はなくなっていません。

 小中高の児童生徒で自殺したのは250人で、16年度から5人増加。小学校は6人、中学校は84人、高校は160人です。原因は「不明」が140人で最も多く、いじめは10人と報告されています。

 また、生命や心身への重大な被害、不登校につながった可能性がある「重大事態」は16年度比78件増の474件で、小中高における暴力行為の発生は6万3325件で過去最多。小学校は7年連続で増えており、中高は減少傾向にあります。

 さらに、インターネットや交流サイト(SNS)の誹謗(ひぼう)中傷が1万2632件と過去最多を更新するなど、表に出にくいいじめに苦悩する子どもたちの姿が浮き彫りになりました。

日本のいじめは「大人社会の縮図」

 「人は、なぜ他者を攻撃するのか?」

 この問いは、古くから心理学者や社会学者たちの間で議論されてきました。

 その中の1人である心理学者のJ.T.テダスキらは、「攻撃は対処行動の一つ」と捉え、「人間は何らかの恐怖を感じたり、危機的状況に遭遇したりすると、相手を攻撃したり強制的に従わせたりするなどの策を講じることで、自分の社会的地位や社会的アイデンティティーを主張する」と説明。これは「社会的機能説」と呼ばれています。

 また、同じく心理学者のアルバート・バンデューラは、「攻撃は社会の中で学習し、身に付け、維持された社会行動である」とし、こちらは「社会的学習説」と呼ばれています。

 どちらも「いじめや攻撃」を、環境が生む病であるとしている点は共通していますが、日本の子どもたちのいじめは、大人社会の縮図、すなわち「社会的学習説」的側面が強いのではないか。そんな懸念が数年前から研究者の間で広まっているのです。

  photo日本の子どもたちのいじめは「大人社会の縮図」ではないか(写真は記事と関係ありません)

 きっかけは、国立教育政策研究所が16年に行った調査結果です。

 これまでの調査で、日本は「暴力を伴ういじめ」が他国よりも少ないことが明らかになっていました。

 そこで研究者グループは、日本同様に「暴力を伴ういじめ」が少ないスウェーデンと共同で「いじめの実態把握」の調査を実施。その結果、次のことが分かりました。

  • 「軽くぶつかる・たたく・蹴る」の暴力を伴ういじめの被害について、小6、中2の男女いずれもスウェーデンが日本を上回った
  • 特に小6男子では、スウェーデンが65.6%だったのに対し、日本は32.8%だった(「今の学期で1、2回」から「週に数回」までの4段階を合わせた経験率)
  • 一方、暴力を伴わない「仲間外れ・無視・陰口」の被害経験率は小6、中2の男女いずれも日本がスウェーデンより高かった
  • 小6女子では、4段階を合わせた割合がスウェーデンで21.4%だったのに対し、日本では倍以上の43.4%。小6男子も同じ傾向だった

 つまり、日本では「仲間外れ」「無視」「陰口」といった暴力を伴わないいじめの割合が高い。「これってさ~、大人もやってるよね。仲間外れなんて昔からあるし、会社で陰口言ってお互いの足を引っ張り合うなんてしょっちゅうだし。大人もしているから子どもも『大丈夫!』って感じちゃうんだよ!」という意見がSNS上だけではなく、研究者や専門家からも相次いだのです。

 さらに、先の調査結果が公表された時期に、福島で原発事故に遭った子どもが「賠償金をもらっているだろう」といじめられていたとする報道もあり、余計に「大人社会の縮図」だと批判されました。

  photo日本では「仲間外れ」「無視」「陰口」といったいじめの割合が高い

子どもたちに伝染する「見て見ぬふり」

 実に残念かつ恐ろしいことではありますが、いじめにはある種の快楽が伴います。いじめをしている間は「自分は相手より上」と感じられるので自尊心が満たされる。それが心地よいのです。しかも、人には「快楽を繰り返したい」という欲求があるため、「攻撃(いじめ)→快感→攻撃→快感」といった“魔のいじめスパイラル”に取り込まれる可能性が存在するのです。

 さらに、いじめを目撃したときの対応(「見て見ぬふりをしますか?(=傍観者)」と「止めに入りますか?(=仲裁者)」)を子どもに尋ね、英国、オランダ、日本の3カ国で比較したところ……。

  • 日本では「傍観者」の比率が年齢とともに上がり続け、中学3年では約60%
  • 一方、英国とオランダは、小学生から中学生に向けてやはり上昇するものの、中学2、3年で一転して低下。英国の中学3年の傍観者比率は約40%
  • 日本では「仲裁者」比率が下がり続け、中学3年ではわずか20%
  • 一方、英国とオランダは、年齢とともに比率は下がるものの中学1年で下げ止まり、中学3年では約45%に反転する

 ……ふむ、なんとも。中学生以上の子どもたちの言動には「社会の影響」いや、正確には「オトナ」が与える影響が大きいと考えられているので、この仮説通り解釈すれば、日本の大人たちはいじめを見ても「見て見ないふり」をし、「仲裁もしない」という、実に残念な結果が得られているのです。

 これはあくまでも一つの調査結果に過ぎません。

 しかしながら、同僚に上司からパワハラを受けていると告白したら「まぁ、うまくやれよ」と流されてしまったり、「ああいう人だから気にするな」と慰められたり、人事部に相談したら「あなたにも何か問題はありませんか?」と内省を求められたりしたという経験を語る人が、私のインタビューに協力してくれた人の中にもいました。

 誰だって、自分がターゲットにはなりたくないし、関わりたくないという気持ちが勝ることもあるかもしれません。

 しかしながら、そんな見て見ぬふりをする同僚たちの行動が、“彼ら”をさらに追い詰め、子どもたちに伝染しているとしたらいかがでしょうか。

 他のメディアになりますが、「何がパワハラで、何がパワハラじゃないのか」の具体的な事例はこちらに詳細に書きましたので、参考にしてください(参考記事)。

 自分や子どもが加害者にならないためにも……。