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女子生徒が男子生徒に殴る蹴るの暴行を受ける動画がSNS上で拡散

女子生徒が男子生徒に殴る蹴るの暴行を受ける動画がSNS上で拡散され、そのあまりの酷さに衝撃が広がっています。5月に発生したものと伝えられる「事件」の動画が9月になって出回る事態となった裏側には、複雑な事情があるようです。現役探偵でこれまで数多くのいじめ問題を解決してきた阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、自身のメルマガ『伝説の探偵』で当案件を取り上げるとともに、教育界の機能不全を指摘しています。

 

葛飾暴力動画拡散の衝撃

2019年9月5日、衝撃的な動画がTwitterで拡散されていった。河川敷で女の子が男の子に暴行を受けている動画だ。モザイクもなく、そのものがそのまま垂れ流されていた。拡散元はすぐにアカウントが無くなってしまったが、そのコメントにはこう書いてあった。

葛飾の子なんですけどみんなの前で蹴られ殴られ挙げ句の果てには…(中略)とても胸糞悪いお話ですが警察も動いてくれないっぽいので関係者希望で拡散させていただきます。

各社報道機関もネットにトピックとして取り上げ、警視庁などへ取材をした結果を記事にしている。ニュースの大まかな情報は、「葛飾区の女子生徒が江戸川区の男子生徒に、今年5月に江戸川区の河川敷で暴行をされ、葛飾署に被害相談をした。少年事件課や同署が暴行事件として調べている」というものであった。

 

その後、続報として「葛飾教育委員会はいじめの有無を調査中」と出て、この動画を見てもいじめかどうかわからないのかと批判の声が相次いだ。

また、ネットでは犯人探しが加速、動画の中では加害行為者の名前が呼ばれていることもありすぐに特定されていた。現在、関係者の氏名や学校名などがネット上にさらされている状態だ。

拡散された動画の内容

拡散された動画では、男性生徒が一方的に女子生徒を殴り蹴るというようなものであった。

また、動画の撮影者などと会話をしており、「前回よりぜんぜんやっているよ」「やり返していいんだよ」「これじゃリンチになっちゃう」「10分経っちゃうよ、あと2分」「誰に対してのごめんなさいだよ」という言葉はハッキリと聞き取ることができる。

この会話から、この前にも暴行は行われており、それは以前もあったということがうかがえる。また、動画には、複数人の同学年と思われる人物も映っており、集団でこれら暴力を振るっていたことがわかるものである。

誰が見てもこれは一方的な暴力であり、集団で行なったものである。ネットでは「なぜ逃げないのだ」という意見が多少あるが、被害者はこの場から逃げてもまたやられる、次はもっとひどくやられる、今は耐えるしかないと考えてしまうということを全く理解できていないと言えよう。

なぜ5月の事件が9月に

この動画は「葛飾暴行事件」と調べれば、9月9日現在、簡単に閲覧することができるだろう。

初めの投稿者は、警察もなかなか動いてくれないという主旨を出していることから、事件の進展がなかったように感じられていたということなのだろう。

ただ、やはり多くの事案でも同じなのだが、特に少年法で守られる子どもらが起こす事件については、現行犯でもない限りなかなか進展しないことは事実だ。

 

今回はネットの拡散が進むことで、大事件となって大きく動いているように見えるが、報道を確認する限り、「把握している」「捜査していることがわかった」ということのみであり、すでに補導しているなどの事実は報じられていない

 

デジタルタトゥー問題

この件に対して、私刑を止めるように著名人がコメントを出している。今ではデジタルメディアを通じて個人が発信することもでき、記憶に新しいあおり運転事件のガラケー女として別人物が一夜にして、犯人だと取り上げられてしまった誤報もある。

 

一方で、この件では、被害者がモザイクもなしで晒されており、被害者に関しても同様に厳しい立場に置かれている実情が問題になっている。少なくとも動画に関しては被害者の顔などがわからないように加工するなりする必要がある。

一部報道によれば、この動画は20万ツイートされており、動画を保存してさらに拡散しているユーザーも多いことから、実態数は数百万を超える可能性がある。

特定された犯人とされる生徒の情報もさらに多く拡散されており、この情報は消すことは難しい。

 

ただ、多くのいじめ事案の中で私は同様の動画を確認している。その都度、私は警察に報告している。それは、このような暴力は、いじめの定義上、いじめになり得ても、行為自体は犯罪そのものであって、教育上の指導でどうにかなるような問題ではないからだ。

また、ネットで拡散するということは、被害者の特定も進む可能性があることから、被害者がそのリスクを覚悟して望んでいても慎重に判断する必要がある。それは被害者の想定を上回り後で後悔することが予想できるからだ。

氷山の一角に過ぎない

この暴力動画を見て、多くの人が、「胸くそ悪い」「見ていられない」と表現していた。しかし、これは氷山の一角に過ぎない。例えば、この暴力動画は、1分少々であり、その前があり、その後がある。また、動画内の会話からも、前回があることがわかる。この動画だけでも、実は一部分に過ぎないのだ。

私は前後のものを確認したが、正直ここでも書けない内容であり、一部拡散しているものを探して、削除要請を管理人にしたところだ。つまり、世に出ていないものは無数にあり、それらはより酷い内容であったのだ。

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ネットの管理者や発信をしている方へ

今回の葛飾暴力動画については、被害者の姿そのものが特定できる状態で晒されています。今後、さらに拡散することもあると思いますが、少なくとも被害者の顔はモザイクなどで加工していただくなどの対応をしてください。追加で別の動画をアップしないでください。被害者への配慮をしてください。
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私はそうした現場を数多く確認してきた。ほとんどは、調査をしていて動画の提供を受けて、それを確認するのだ。それでも、私が確認できた被害者はごく少数に過ぎないだろう。

世に出ていないだけで、まるで黙殺されたかのように同様の被害を口にできず泣き寝入りしている被害者もいるはずだ。

こうした動画が「胸くそ悪い」というのはそのままの表現だろう。

ただ、それを見ても、「加害者にもそうなった背景がある。加害者こそ被害者だということを平然と主張してくる自称評論家風情にも胸くそが悪くなる

本件については私は担当していないので、被害者との直接の交流はないが、普段の調査では被害者本人やその家族、私に告発をした友人らなどと私は直接話を聞いている。

だからこそ、「何かあったら、人に暴力を振るっていいのか?被害者はどんなに苦しくて辛かったのかそういうところに心を配った上で加害者こそ被害者だと言えるのか?」問いたいのだ。

結果、社会が悪いという話に落ち着くのだが、「社会が悪かったら誰かに暴力を振るってもよいのか」と問いたい。

 

そして、教育委員会にも警察にもうまく取り合ってもらえず、メディアも取り上げないとき、被害者が唯一声を上げる場はネットなのかもしれないと思うのだ。今回の暴力動画は被害者にモザイクなどの加工を加えるべきであったのは確かだが、そうする以外、他に方法がないときは、有効な手段になることを実証したことになる。

 

いじめ防止対策推進法の遵守

いじめ防止対策推進法第27条では、「学校相互間での連携協力体制の整備」が定められている。これは被害生徒と加害生徒が違う学校に在籍している場合であっても必要な支援や指導が行えるように学校相互が連携し協力する体制を整備するというものだ。

 

本件の暴力動画のような場合は、いじめ法が定められる以前から「問題行動」についての連携や協力関係の整備は進んでいるはずなのだ。例えば、古くは暴走族対策なのでは、地域が異なる在籍者で構成されていることが多いから、警察とも連携して情報の把握などを行なっていた

ただ、事件が起きたのは5月で動きが出たのは9月、しかも未だに何らかの処分などが行われていない実情から、連携が機能していてもそれ自体は情報の共有であって、その情報共有について以上のことはなかなか実行されることはないということは問題だろう。

結果、被害関係者を動画投稿へと追い詰めたのは、後手後手になっている教育界の機能不全とも言えるだろう。

 

私はこれをいじめ犯罪であると捉えている。いじめ法で言えばいじめであるが、実質は犯罪そのものだという意味だ。仮にいじめ法で言えば、26条には出席停止の処分があるが、これは「被害を受けた生徒が安心して学校に通えるため」という主旨だ。残念ながら、この運用は加害者に対してではなくほとんどは被害者に適用されるという、とんでもない現実があるのだが、教育委員会などはこうした処分を加害者にすることができるのである。

他のいじめでも同じだが、加害者に対して適切な処分をせず、被害者が恐怖で学校に通えない状況となるのは、一重に学校や教育委員会がいじめ防止対策推進法を遵守していない大きな過ちなのである。