“大人のいじめ” は、東須磨小だけじゃない!
大人のいじめは東須磨小だけではなく、全国の職場や地域でも起こっている。その陰湿な実態とは。AERA 2019年11月4日号に掲載された記事を紹介する。
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「あるとき勤め先の学校に行くと、私のデスクに知らない女の人が座っていたんです」
北陸地方で非常勤講師として働く50代女性は、当時の状況をこう話す。
「その女の人が教育実習生だったことは後で知りました。結局、教育実習が終わるまでの間、私は家庭科室の実習机で仕事をするしかありませんでした」
当時、女性は中学校で週2回、家庭科の授業を担当していた。同僚の教員による「いじめ」が始まったのは、勤務して5年がたった頃だ。
「その中学では生徒が荒れていて、先生たちもストレスがたまっていたのでしょう。次第に私に対して『週2回しか来ないくせに教師ヅラするな』といった空気ができあがっていった」
やがて女性は無視されるようになり、用務員からも「授業で出たごみを学校で捨てるな」といった理不尽な嫌がらせを受けるようになった。デスクが教育実習生に奪われたのもその一環。3年間耐えたが、ストレスから心身に異常が出るようになり、ついには心療内科で睡眠薬をもらわないと眠れなくなった。
「スクールカウンセラーなどにも相談しましたが、結局、状況は改善しませんでした。今は別の学校に転任して、人間関係も良好です。でも、あのときの苦しさは忘れられません」
今月初旬、神戸市の東須磨小学校で教員4人による後輩教員へのいじめが発覚した。陰湿ないじめの様子の映像が全国に流れ、衝撃が走った。だが、“大人のいじめ”はこの小学校、教育現場に限ったことではない。
福岡県在住の50代男性会社員は、以前勤めていた大手電機メーカーで6年間にわたり苛烈なパワハラを受けた。
「きっかけは早期退職の勧告を断ったことです。それから急に、蛍光灯の交換作業やデスクの雑巾がけといった雑用しか与えられなくなりました。挨拶も無視され、賞与も激減。自己都合退職に追い込もうとしているのが、ありありとわかりましたね」
いわゆる「追い出し部屋」と同じ手法だと感じた男性は、社内の労働組合に相談。組合から人事部にも交渉してもらったが、状況は改善されなかった。
「私への嫌がらせを実行したのは直属の部長です。その部長は、当時私が勤めていた九州の支社に20年近く在籍していて、支社内の人事を完全に掌握していました。トップの支社長ですら強く注意できず、結局は全員が部長の横暴を黙認していました」
このままでは潰されると思った男性は、異動願を提出。ところが「引き取り手がない」という一方的な理由で部長に拒否された。その後も男性は問題解決の手を尽くしたが、6年たっても状況は変わらず、昨年、転職の道を選んだ。
「今でも部長のことは憎いですよ。でも、部長の横暴を止められる人間や管理体制が社内になかったことも問題だと思う。こうなると訴訟を起こすか、辞職するかという選択肢しかなくなってしまいます」
職場だけではなく、「ママ友」の間でもいじめはある。都内メーカーに勤務する50代女性は、長子が小学校に入学した際、同じ学年の母親から無視されるなどの嫌がらせを受けた。
「集団登校の集合場所に子どもを送り届けた際に、『おはようございます』と挨拶しても完全無視。『私たちに話しかけるな』という圧を感じました」
子どもに登校班の班長など、負担の大きい役割を勝手に押し付けられたり、登下校時の保護者の「旗持ち当番」をすっぽかされたり、嫌がらせは続いた。その理由は、子どもが「保育園出身」だったから。
「嫌がらせは『幼稚園出身組』のママたちで結託して行われました。理由はよくわかりませんが、子どもを保育園に預けてまで働くことが気に食わなかったのかもしれません。馬鹿馬鹿しくて、放っておきましたが……」
ほかにも、「学歴や出身地を理由に差別された」「新人で仕事ができず仲間外れにされた」「家族の病気や介護で休みがちなことについて陰口を言われた」といった声があった。