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いじめの定義を勝手に変えた第三者委員会

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なぜ彼らはいじめ被害者側から信頼を得ることができずにいるのでしょうか。これまで数多の第三者委と対峙しいじめ事件を解決してきた現役探偵の阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、自身のメルマガ『伝説の探偵』でその理由を探っています。

 

いじめ第三者委員会への解散要求

大島商船高専いじめ自殺事件、ご遺族が第三者委員会に解散を要求したことが7月2日にニュースになった。いじめによる自死は2016年5月のことであり、第三者委員会の設置は、大島商船高専が設置者となり、弁護士などを有識者による第三者委員会を2018年3月に設置した。

現在は2020年7月である。

すでに、第三者委員会が設置されてから2年4か月、調査結果が一向に出ない委員会に対し、遺族が「NO!」を突きつけたことになる。

山口県などでは新聞記事になっているなどしているが、全国的にこれはまだ知られていないのかもしれない。続くニュースでは、第三者委員会の平谷委員長は早く報告書を提出したいとの意向を示したとあり、設置者である学校は、第三者委員会の継続を求めたというが、遺族は信頼できず、解散してほしいと述べたとある。

もう1つのいじめ第三者委員会は既に報告

『伝説の探偵』で何度も取り上げている大島商船高専のいじめ事件は、いじめ自殺未遂事件のものが多い。いじめ自殺事件も一度取り上げたが、この高専では2つのいじめ事件が同一加害者グループによって引き起こされている。

● 現役探偵が糾弾。いじめ自殺事件の加害者を守る商船高専の実態

同時に、この被害者を守ろうとした同級生が学校によって不当な取り調べを受け、認めていないのに、いじめの加害者とされて処分を受けたのだ。

こうした問題は、いじめ自殺未遂と学校の不当処分、生徒へのパワハラ行為を調べた第三者委員会が、事実であったと認定している。

つまり、この事件では学校も二次被害を起こした加害者という位置づけなのである。

事実私は、当時の責任者であった人物を追求したが、彼は逃げるばかりであったし、調査委員会に圧力をかけるような対応をしていたのである。

いじめ自殺の生徒といじめ自殺未遂事件の被害者は学生寮の同部屋であった。これは、好きなもの同士で選ばれる部屋であり、彼らはいじめの対象であったから単純に残り者同士ということで同部屋になったのだ。

つまり、当時のいじめの状況をいじめ自殺未遂事件の当事者はよく知っているのである。

私は自死の直前までの出来事を彼らから聞き取っている。

面談でより不信感が増す

2020年7月20日の山口新聞報道によれば、ご遺族である母親は、学校、高専機構、有識者とされる第三者委員会の委員と面談をしてより不信感が増したという。

「いじめの定義について質問すると、第三者委員が、加害者が意図を持って傷つけること」と回答したそうだ。

いじめの定義は、いじめ防止対策推進法の第二条に書かれている通り、「一定の関係性」があり、「何らかの行為」があって、それによって「被害者が心身の苦痛を感じた」ら「いじめ」となる。

さらに、平成30年に総務省が行ったいじめ自死を中心に調べた調査により、「いじめの定義を勝手に解釈、限定解釈などすること」でいじめ被害が悪化したと結論付けられた。そして、総務省は、この調査結果に基づいて、文科省法務省に法順守の徹底を勧告したのだ。

つまり、いじめの定義は勝手に解釈してはならないのである。

特に最後の砦ともなり得る有識者たる第三者委員会 が、法律の専門家を有しながらも、このような「加害者が意図を持って傷つけること」がいじめであると誤った答えを持っていたら、本末転倒どころではない。絶望的誤認委員会になり得るのだ。

ところが、第三者委員会は、追加の調査を取りやめ、11月中までに報告書を提示する考えを示したのだ。

被害者らの憤慨

私はいじめ自殺未遂事件の被害者と連絡を取り合っている。その中で、いじめ自殺の方の聞き取りにも協力しようという話が出ていた。

いわば、被害者らが積極的に調査に協力しようという意思を示したのだが、この第三者委員会の対応はあまりに横柄で突き放したものであった。

すでに決められた結果へ向けての証拠や情報ばかり集めているのではないかという印象が強かったのだ。

そもそも大島商船高専のいじめ自殺の第三者委員会は、学校が事務局を行っているのだ。聞き取りの手配や学生へのアンケートなどは、事務局自体を第三者委員会が兼ねるという委員会よりも連携が取れるはずなのだ。ところが、2年以上も調査が進まないというのは、あまりにお粗末としかいいようがない。

しかも、重要証言がある同部屋の被害者や自死のきっかけともいえる出来事の当事者なども積極的に聞き取りに応じようとしたのに、それが進まぬというのは大いに疑問だ。

ただもう1つの第三者委員会が指摘したように、学校はいじめの認識があまりに杜撰であり、本来いじめであるものを認識できる能力はなかったとされている。

一方でいじめがあったと書かれたアンケートが隠ぺいをするものの都合が良いところで紛失するなどの問題が発生しているのだ。

意図的に遅らせたのではないかという疑念すらも生じてしまうだろう。

再調査となる第三者委員会が増えている現状

本件のみならず(いや、本件はまだ再調査委員会とはなっていないが)当初の第三者委員会と呼ばれる有識者委員会の結果が、遺族や被害者の批判を受け、再調査となるケースはずいぶん増えているという印象だ。そして、この再調査では、いじめが認められるケースが圧倒的に多い。

多くは教育委員会や学校が設置者となり、第三者委員会を設置するのだが、県内などで近場の有識者となろうその分野の専門家が集められるケースが多く、こと「いじめ」については専門家というには疑問が残る委員がいることも多い。

実際、ある第三者委員会の委員長に、記者が、「いじめの定義通りにいじめの認定をすると、その件ではいくつものいじめが認められることになるが?」と質問をすると、その委員長が「それではキリがないので、いじめかどうかは私が判断する」と答えたのを私は聞いたことがある。

この委員長は確かその地域ではもっともいじめ問題に詳しいとされた弁護士であった。

その後、私はその考えは根本的に誤りだと指摘すると、勝手に記者会見に入るなと抗議された。しかし、文科省などの意見(文科省の役人は指導したというが、事実上はとてもやさしいアドバイス)を入れてもらうと、「もちろん、いじめの定義でいじめかどうかは解釈します。言葉が足りませんでした」と釈明したのだ。

バカも休み休み言ってくれ。

それが正直な感想だ。このレベルの似非専門家がいじめの専門家と言って、仰々しいバッチを振りかざし偉そうに遺族会などに出入りしてふんぞり返っているのが、今の現状なのかもしれない。

いじめ第三者委員会の特殊性

いじめ防止対策推進法では、大まかに3つの調査委員会が考えられている。

1.教育委員会直下の付属機関

いじめ防止対策推進法第14条の3 前二項の規定を踏まえ、教育委員会といじめ問題対策連絡協議会との円滑な連携の下に、地方いじめ防止基本方針に基づく地域におけるいじめの防止等のための対策を実効的に行うようにするため必要があるときは、教育委員会に附属機関として必要な組織を置くことができるものとする。

2.学校によるいじめ防止等の対策のための組織

いじめ防止対策推進法第22条 学校は、当該学校におけるいじめの防止等に関する措置を実効的に行うため、当該学校の複数の教職員、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者その他の関係者により構成されるいじめの防止等の対策のための組織を置くものとする。

3.重大事態いじめに対応するための第三者委員会

いじめ防止対策推進法第28条 学校の設置者又はその設置する学校は、次に掲げる場合には、その事態(以下「重大事態」という。)に対処し、及び当該重大事態と同種の事態の発生の防止に資するため、速やかに、当該学校の設置者又はその設置する学校の下に組織を設け、質問票の使用その他の適切な方法により当該重大事態に係る事実関係を明確にするための調査を行うものとする。

つまり、第三者委員会だと言われるものには、14条委員会、22条委員会、28条委員会の3つがあるのだ。14条、22条委員会はそもそも機能していないケースが多いため、多くは28条根拠の委員会である

そして、これでもダメな場合は、次のような委員会が考えられている。いわゆる再調査委員会は、これに当たる。

簡単に言えば、第三者委員会は学校か学校の設置者(公立であれば教育委員会、私立であれば学校法人など)が外部の委員などを入れて組織するということなのだ。

もちろん、法としては中立公正を担保するために、直接利害関係のないものや持たれあいなどの関係にない者を選任するようにとされているが、地方の場合は地域的な事情でそうした人物しかいない場合は、被害児童などに説明を明示して、同意を得なければならないことになっているのだ。

これは国の方針で示されている明文化されているものなのだが、知らずか、強引に委員を決めてしまうケースが後を絶たない。

多くの公立校では、現場教員や管理職である副校長や校長などが教育委員会事務局と人事として密接な関係があり、地域の専門家や経済と学校などが密な関係であるケースも多い。

いじめ防止対策推進法では、そうした懸念からも色々な対策をその中で熟考したと思えるが、「国のガイドラインなどではこうだ」が「わが市ではこうだ」と歪めてしまう事例が後を絶たないという問題も発生している。

一般的に大企業などが不祥事を起こしたケースなどでの第三者委員会は、株主や金融機関などのステークホルダーなどの強い存在があり、第三者委員会の委員は利害関係がないことなどを細かに調べられたりするが、いじめの第三者委員会においては、被害者のための調査という位置づけが明文化されていても、その存在は弱く、さらに学生の期間は有限であるため、委員は学校や教育委員会が隠ぺいに走った場合などでは、一般の第三者委員会のような中立公平な立場を守ることは難しいとも言える。

さらに、その予算は学校や教育委員会などが持つわけだから、少し込み合った存在にもなり得るのだ。

多くの被害者がいうこと

私は多くの被害者やご遺族と会い、その調査を担当した。中には第三者委員会の結果をひっくり返し、再調査に持ち込んだものもある。

一方で、調査に当たりつつ事実をつかむ傍ら、方針が合わずに辞任したものもある。

そうした中で多くの被害者が言うことは、学校や教育委員会が第三者委員会を設置することの理不尽さだ。特に、常任で雇われている教育委員会など直下の調査委員会があたかも第三者のような面で、いじめの定義を無視して出す結果はほぼすべての被害者が納得していない。被害者側が、世間的に異議を唱えていないように見えるのは、委員も行政も無能だと感じ、これと対する時間があまりに無駄だと感じて、三下り半を下しただけなのだ。

以前取り上げた山梨県北杜市のいじめ事件では、市教育委員会が、当初第三者委員会のメンバーを隠したまま委員会を設置しようとした(現在はその事実も明るみとなり、適正に第三者委員会による調査が進められている)。

児童生徒の生死に直結する「重大事態いじめ」は、重大事態となるまでに、学校対応の誤りや放置、いじめの事実に関する誤認や誤認したことを隠そうとする隠ぺいなど、様々な失策がある。

つまり、学校や教委、私学であれば教職員や学校法人などの失敗が積み重なって、重大事態いじめとなったものが多いのだ。

そうした観点で言えば、第三者委員会設置の権限を持つ組織は、二次被害を起こした加害者という立場であると被害者の多くは感じているのである。

そのいわゆる加害者組織が、中立公平な第三者委員会を組織するなんてナンセンスだと考えるのは自然なのではないだろうか。

そして、被害者側が理不尽だと感じていることが、第三者委員会の調査の不備や怠慢、基本中の基本であるいじめについての正しい知識の不足などが次々と起き、再調査による前委員会の結果の否定といじめの認定が実際に起きているわけだ。

山口県大島商船高専のいじめ自殺事件の第三者委員会が遺族から三下り半を下されても、まるでその意見を無視して、調査を一部取りやめてでも早く結果を出しますというお粗末な状況も、これまで積み上げられてきた第三者委員会の失敗とよく符合している。

遺族や被害者に寄り添った法改正しかない

私は毎度のように法改正しろと書いているが、それはもうこれ以上、隠ぺいするもの、加害行為を常習的に行うものに抜け道を作るなということなのだ。

そして、確かに今新型コロナ対策で大変な時期であることはわかるが、それによるいじめも増えている現状もある。もはや待ったなしなのだ。

いじめ防止対策推進法の立法の趣旨や詳細な説明、国会や委員会などでの記録を読み漁っていると、国は「ご遺族や被害者などに寄り添え」と何度も言っていることがわかる。そして、それをすることで、最悪の事態を防ぐのだとしている。

であれば、法改正は絶対に「被害者や遺族に寄り添ったもの」でなければならない。そうでなければ、この国の立法は、どこまでも隠ぺいや無記録、秘密会議による独裁を許す嘘つきだということになろう。

絶望の中でも、多くの被害者やご遺族は、一縷の望みとして、その苦しみが次の世代にはなくなるように願い生きているのだから。

編集後記

現在私は多くの被害者やご遺族をつなぎ協力し合おうという連携連盟を進めています。

これを始めた大きな理由は、法改正や共通項などを見出すためでした。特に法改正については、数を集めないといじめ法の改正に反対する教育界には政治的に勝てないと言われたことが大きいです。

その数はどんどん広がっています。

確かに民主主義国家では数は力です。立法機関である国会がその数で動くというのは大人であれば理解できます。

正しいのではなく、数の論理。それが現実だということですね。

例えば、まともないじめ第三者委員会が学校の不備や再発防止策を提言していますが、その提言が守られているのかチェックする機関は、ありません。

そして、もしも守られていれば次のいじめ事件は起きないのに、だいたいの地域では起きています。つまり、提言するだけ無駄な世界なのです。

正しいだけではダメ、正しいことを実行する力がなければ、誰も守ることはできません。

そして、いじめで亡くなった大切な命の思いをつなぐこともできません。

今はこの先の正しい改正のための礎を築いているところですが、これがいずれおおきな岩になり、島になり、強き砦になるよう頑張ります。

何事もはじめは誰かの第一歩でした。小さき一歩でも、それが意味のあるものならば、それは大きな価値があるものだと思います。