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「職場でいじめられている」と相談されたときに絶対NGの回答

メンタル不調が疑われる同僚や部下には、どう接したらいいのか。これまで1万人を診察してきた産業医の武神健之氏は「いきなり通院を勧めるのはよくない。まずは助けになりたいと思っていることを伝え、話を聞くのが大切だ」という――。

写真=iStock.com/kazuma seki

「小さな組織」ほどコミュニケーションが必要だ

あなたは、自分の周囲の人をケアしていますか?

組織の大小問わず、メンタルヘルスの負の連鎖を断ち切るためには、周囲をケアするコミュニケーションがどんな職場にも必要です。このとき、より小さな組織ほど、周囲をケアするコミュニケーションが大切なのです。なぜなら、仮に大きな組織でメンタル不調者や、コミュニケーションに難がある人が1人いたとしても、1人の仕事のカバーは複数で分担できたりと、会社全体の雰囲気はさほど悪くはならないからです。

しかし、小さい組織はそうはいきません。1人でも休職者が出れば、たちまち全体に影響が出てしまうからです。墨汁を1滴プールに垂らすのと、コップに垂らすのとの違いを想像していただければわかりやすいかもしれません。たとえ1滴であっても、小さなコップの水はたちまち黒く染まってしまうのでしょう。

では、実際にどのように周囲をケアすればいいのでしょうか。

メンタルヘルス不調が疑われる同僚への対処法

【相談者からの質問】

「同じ部署で一緒に働いているAさん(32歳、男性)が最近おかしい気がします……。

最初は風邪が長引いているのかな? と思っていましたが、それも1カ月近く続いており、さすがに心配になってきました。

また、Aさんは仕事がすごく丁寧で、ミスらしいミスはほとんどしない人だったのですが、小さなミスが増えてきたように客観的にみて思います。

ただ本人に『体調は大丈夫?』と聞いても『大丈夫、大丈夫! 最近、疲れているだけだから』と言うだけで、メンタルヘルス不調なのかどうか、素人の私には判断できないですし、本当に疲れているだけなのであれば、メンタルヘルス不調と決めてかかるのも申し訳ないと思ってしまいます。私はどのように対処したらよいでしょうか? 声をかけるとしたらなんとかければいいでしょうか?」

忙しいだけか、ストレスに潰されそうなのか

「あれ、あの人、最近ちょっと変だな」と思った経験が、あなたにもあるのではないでしょうか。ただ単純に忙しいだけなのか、それともストレスに潰されそうになっているのか、その見分け方と対処法について解説します。

人は、環境に適応しきれない時や、自分が許容できる以上のストレスを感じる状態が続くと、「心」「身体」「行動」に反応する症状が現れてきます。本人がわかりやすいのは「身体」に出る身体症状で、わかりにくいのが「心」に出る精神症状です。また、周囲から一番わかりやすい、気づきやすいのが「行動」に出る症状です。

遅刻、早退、欠勤、ミスが増えるのはサイン

ストレスによる行動の症状は、以下のものが一般的です。

・衝動買い
・お酒やタバコの量が増える
・過食、拒食
・登校/出社拒否
・ひきこもり

職場では、遅刻や早退、欠勤が増えたり、集中力が低下してミスを多発したり、仕事の結果を出すのに時間がかかるため時間外労働や休日出勤が増えたりします。いわゆる「ほうれんそう(報告、連絡、相談)」が減ったり、職場での仲間との会話が少なくなることもあります。

これらの症状は、職場でも家庭でも、知っていればあなたの周囲の人を助けるきっかけになり得る点で、重要なポイントです。

「お医者さんに行けば?」は絶対ダメ

では実際に、そのような変化に気づいた場合、まわりの同僚はどのように対処すればいいのでしょうか?

職場の同僚や部下に対して「最近ちょっと変だな」と感じたなら、「ちょっといいですか。いつもと違うけれど、どうしたの?」と、さりげなく声をかけるとよいでしょう。

決して、「メンタルかもしれないから、お医者さんに行けば?」などとは言わないでください。上司や人事部だけでなく、同僚から「医者に行け」と言われるのは、多くの場合本人にとっては非常にイヤなことだからです。あくまでも、見た目の変化を指摘する程度に「ちょっと心配なんだけど……」と聞いてみるのが無難です。あるいは産業医やカウンセラーのいる会社であれば、「ちょっと相談に行ってみたら?」と声をかけるのもよいかもしれません。

「話を聞く」だけで9割の人は楽になる

でも、いざ声をかけるとなると、なかなか難しいもの。何をどう話せばいいのか、より悪化させてしまったらどうしよう……という不安がよぎるのも無理はありません。

真面目で面倒見のいい人ほど、「部下のストレスの原因を解決しないといけない」「同僚のメンタルヘルス不調を治す方法はないだろうか」と考え込んでしまい、声がかけられないでいる傾向があります。

そうではなく、あなたが気づいていること、何か助けになることができないかと思っていることを伝えるだけでいいのです。大切なのは、話を聞いてあげること、必要に応じて医師やカウンセラー等の専門家につなぐことなのです。

状況が深刻ではないケースであれば、相手は「話を聞いてほしい」「自分の辛さをわかってほしい」と思っているケースがほとんどです。しっかりと話を聞いてくれる人がいるだけで、約9割の人は気持ちが楽になりますから、あなたは聞くだけでいいのです。

私もたくさんの産業医面談をしていますが、実際、相談にこられる人はすでにストレスの原因を9割方わかっています。ただ辛さをわかって欲しい、または、どう対処したらいいのか自分一人ではその方法を見出せなくて困っているから、相談に来るのです。

アドバイスではなく、「質問」をする

人は言っても変わりません。だから、産業医の私はアドバイスはせず、相手本人の気づきを促す「聞く」を実践しています。

アドバイスの代わりに、相手のためになる効果的な「質問」をしています。自分の知りたいことを聞くことが「疑問」で、相手のためになることを聞くのが「質問」だと私は考えています。

質問は相手の視点を変え、相手自身が気づくきっかけになることが多いため、聞き上手な人は、すでに相手にも自分もわかっていることを、再認識してもらうために、あえて聞くこともあります。

悩みや迷いのある人には、目の前のことしか見えていなかったり、事実と想像がごちゃ混ぜになっている場合がよくあります。もし相手の視野が狭くなっている、あるいは近視眼的になっていると思われたら、少し視点を変えて俯瞰的な視野が得られるような質問を考えましょう。また、相手の勝手な思い込みや想像していることが、実際に起きていることと違うということに気づくような質問も有効でしょう。

「いい質問」が周囲をケアするコミュニケーションになる

たとえば、職場でいじめられているかもしれないと感じている相手がいたとしましょう。「最近同僚から仲間はずれにされているんです。みんなから遠ざけられている気がします」という相手に対して、「違うよ。そんなことはない」と言ったところで、相手には通じないでしょう。仲間はずれにされているというのはその人の実感であり、嘘ではないのですから、否定したところで、会話は平行線をたどるだけです。

武神健之『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』(PHP研究所)
武神健之『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』(PHP研究所

そういうときには、「じゃあ、実際に、誰かにいじわるされたり、無視されたり、ランチに誘われなかったりしたの?」と質問してみるのが有効です。そうすると、たいていは「いや、そういうわけではないけれど」といった答えがかえってくるものです。

他にも「私だけ厳しく指導されている」という相談を受けたとき、「その上司は、あなただけを攻撃しているの?」と聞いてみると、実際には誰にでも横柄で暴力的な態度で接していて、相談者だけを厳しく指導しているのではないこともしばしばあります。

悩みや迷いがあって、不調を抱えている人の多くは、物事をネガティブに思い込みがちです。ですから、まずはそういうやりとりのなかで、自分ではそう思っているけれども、事実として何かやられたり、言われたわけではないというのがわかってくる、事実と事実ではないことの区別がついてくる、自分が一人で悪い方向に考えすぎていることに気づくことが大切なのです。

自分が知りたいことを直接「疑問」として相手にぶつけるのではなく、いい質問を上手に投げかけ、相手がそれに答えるうちに、相手自身の状況、よくないところ、気づいていないことを指摘されなくとも、自分で気づかせる――。そうした配慮や姿勢が、周囲をケアするコミュニケーションにつながるのです。