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日常の暴力に潜む歪んだ正義の正体 いじめが加速する理由に繋がる

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いじめ、DV、自粛警察、SNS誹謗中傷など …

 

自粛警察、ネット上の中傷、ドメスティック・バイオレンス(DV)、テロリズム。一見無関係なように見えるそれぞれの暴力だが、いずれにも通底するメカニズムがあるとしたら?『歪(ゆが)んだ正義「普通の人」がなぜ過激化するのか』(毎日新聞出版)の著者が、私たちに潜む攻撃性とその対処法を考える。

 新型コロナウイルス禍に現れたいわゆる「自粛警察」「マスク警察」が人間の攻撃性を改めて顕在化させている。いやそれ以前からもソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上では中傷が激化していた。性被害を実名で告発したジャーナリストの伊藤詩織さんへの攻撃は70万件にも達した。女子プロレスラーの木村花さんもSNS上で中傷を受け、今年5月に亡くなった。

『人を傷つける心――攻撃性の社会心理学』(サイエンス社)などの著書がある大渕憲一・東北大名誉教授が指摘する。「災害や犯罪などによって社会不安が高まると、それに伴い生じる不快感情が攻撃性に転化されやすくなります」

 大渕名誉教授によると、もともと他者に敵対的、差別的な態度を持つ人は不安や恐怖が強まると「認知資源の不足などから抑制力が低下し、敵意や差別感情が噴き出しやすくなる」という。認知資源とは、合理的な判断をする心身のゆとりのようなものだ。

 彼らが攻撃行動と引き換えに本能的に欲しているものは二つあるとされる。まず他人を上から目線で叱りつけることで自尊心を高めて落ち込んだ気分を浮揚させること。もう一つは攻撃が周囲に支持されるであろうという期待感から来る承認欲求だ。

 コロナ禍ではマスクや自粛をしない人は周囲の人々に「感染症拡大をもたらす加害行動をしている」と見なされやすい。従って彼らを攻撃するのは「社会正義」であり周囲にも支持されやすいと考えて自制がきかなくなるという。

 また、大渕名誉教授によると、その背景には「置き換え」という心理もある。

 自分の不快感情の元凶(疫病や自然災害、虐待など)を攻撃できない場合に別の対象に向けることで、簡単に言えば八つ当たりだ。欲求不満から来る不快感を発散したいという思いを抱えている人は、ささいな刺激から本来関係のない対象を攻撃してしまう。

 こうした攻撃は、相手にわずかな「非」を見いだして一方的に「正義」を掲げることが多い。攻撃者は相手を「しつけている」ような気分になり、自尊心が高まるのでストレスや不安が一時的に解消され、その快楽から依存性を高めてしまう。

 私が「普通の人」の攻撃性に関心を抱いたのは、これまでの取材経験からだった。エルサレム特派員などとして多数の紛争や暴力事件の当事者に取材してきた。

 暴力を肯定する人々は実際に会うと拍子抜けするほど「普通の人」の顔をしている。だが自分の正当性を語り始めると「正義の顔」で歪(ゆが)み始める。

 このギャップはいったい何を意味するのか。

 疑問に真正面から取り組むきっかけとなったのがエルサレム特派員を終えて休職し、現地イスラエルで留学した大学院の博士(心理学)から聞いた言葉だった。

「テロリストの頭の中を考えるには、まず普通の人々の頭の中を考える必要がある。そうすると、大半の人は状況さえ整えばテロリストにさえなりうるということが分かる」

「普通の人が悪魔になりうる」

 彼は、人間は誰しも攻撃性を持ち、状況次第でエスカレートするしテロリストにさえなりうると断言した。その根拠として見せたのが一本の動画だった。

 米スタンフォード大学のフィリップ・ジンバルドー名誉教授(心理学)が行った有名な「監獄実験」だ。1971年、ジンバルドー名誉教授は24人の中流階級の米国人学生を対象に半分を看守役、残る半分を囚人役にして環境が人間に及ぼす影響を調べた。囚人役は足をつなぎ番号で呼ぶ。看守役には笛、警棒、鍵を渡し「囚人に何をしてもよい」と絶対的支配権を与える。

 その結果、実験は想定よりかなり短い6日間で終了せざるをえなくなった。看守役が予想以上に残酷な行為を繰り返し始めたからだ。

 囚人にろくに食事を与えず頭巾をかぶせて鎖でつなぎ、トイレを手で掃除させた。36時間後には囚人の一人が急性のうつ状態になった。ジンバルドー名誉教授は「ごく普通の人が状況次第で悪魔にもなりうることを証明した」と指摘した。