「毎日手足がずうんと重たいんです」--学校に行くのが苦手な女子中学生「おくら」が過ごす何気ない日々を描く山内尚さん( @yamauchinao )の漫画『しんどいときはこんなかんじ』が、ネット上で共感を集めています。クラスで無視されているおくらの友達・あんず。家族には隠して元気に振る舞っていましたが、姉のみょうがは気づいていて……。
「納得できることをしな」
漫画『しんどいときはこんなかんじ』の主人公は女子中学生・おくら。学校に行くのが苦手ですが、お母さんや友達などからは暖かく見守られています。この漫画では、そんなおくらが日々の生活の中で感じた「しんどいとき」が描かれます。今シリーズは、クラスで無視されていることが発覚したあんずの視点で話が進みます。 あんずがクラスで「無視されなくなるように」買った『周りから好かれる10の方法』。いじめは止まりませんが、あんずはこの自己啓発本をまだ頼りにしています。そんなあんずに、姉・みょうがが「なあ あんずー」「やっぱ あたしもあんずの好きな本 読みたいから貸してくれる?」と声をかけました。 みょうがは「こういうの苦手」と言っていたはずですが……。何やら思惑があるようです。そんなことには気づかず、「いいよ!」と本を渡したあんず。しかし、みょうがは本を開いたまま寝たり、本を置いてお菓子を食べたり。しびれを切らしたあんずが「みょうがはまだ読み終わんないの?」「ねえーーー読んでるとこ見たことないよ」と文句を言うと……。 「この本ねえ お姉ちゃんには難しくて時間かかってんの」とみょうが。どうやら、強制的にあんずを本から引き離そうとしているようです。「もうちょい貸して」というみょうがの言葉を「いや!!」と強く拒むあんず。「私はこれ読んで新しい自分を作んなきゃなの」と本を取り返し、抱え込みます。 「へえー その本で新しいあんずができんのか」とみょうが。何やら不穏な雰囲気ですが……。「そうしないと皆があんずを見ないわけ?」「その本で無視されんのが終わったか?」--家ではいじめられていることを隠して元気に振る舞っていたあんずですが、みょうがは気づいていたんですね。 「それ…は…」と言いよどむあんず。「でも大丈夫なの 私が変わればなんとかなるから」と、本の受け売りの作り笑いを浮かべると……。みょうがが実力行使。その張りついた笑顔ごと、あんずの顔を「がしっ」と掴みました。 「無理して笑ってんなよ」とみょうが。一方で、本には「いつも笑顔を忘れない!!」とあり……。みょうがは一度、本を奪うと、「あんずが納得できることをしな」と真っ直ぐにあんずを見つめて伝え、本を返します。泣きそうな、そしていつも「強くてかっこいい」行動ができる姉への複雑な気持ちが入り混じったような、そんな表情を浮かべるあんず。 舞台は学校に移ります。また掃除を切り上げて帰ろうとするクラスメイト。あんずが「もう皆 帰るの?」「まだほこりが…」と話しかけても、やはり無視。しかし、この日のあんずは少し違いました。「…そう」「それじゃあすみずみまで勝手にひとりで片付けようー」と掃除の頭巾を「きゅっ」と巻き直します。 「私が変われば世界のほうも変わるとか 違うってどこかでは気付いてた」掃除をするあんずのモノローグです。「私じゃなくて世界のほうを変えちゃうの」--そう呟いて窓枠をきゅっきゅと磨くあんず。「私は教室がぴかぴかしてるほうが好き」というあんずの顔は、ようやく自然に少し、笑っています。
自分を変える? 周りを変える?
作者の山内尚さんはこの漫画について「最初のほうでは無視されることに傷つき本に頼るしかなかったあんずさんが、最後ではずいぶん変わりました」と説明します。 “あんずさんが変われば世界が変わる、ということはありませんでしたが、このあんずさんがいつの日か周りを変えていくことはありそうですね。”