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(20)北海道 凍死事件 背景にある いじめ問題 の詳細! (1)~(25)まで

※本記事では廣瀬爽彩さんの母親の許可を得た上で、爽彩さんの実名と写真を掲載しています。
この件について、母親は「爽彩が14年間、頑張って生きてきた証を1人でも多くの方に知ってほしい。
爽彩は簡単に死を選んだわけではありません。
名前と写真を出すことで、爽彩がイジメと懸命に闘った現実を多くの人たちに知ってほしい」との強い意向をお持ちでした。編集部も、爽彩さんが受けた卑劣なイジメの実態を可能な限り事実に忠実なかたちで伝えるべきだと考え、実名と写真の掲載を決断しました。

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中学校校長がイジメ否定の文書を全保護者に配っていた

 

「本日、旭川市いじめ防止等対策委員会における調査の実施についてご報告をさせていただきました。冒頭私からこの調査に関係する、亡くなられた生徒のご冥福を心からお祈り申し上げますとともに、ご遺族の皆さまに対しまして哀悼の意を表し、お悔やみを申し上げる次第であります。改めまして市民の皆さま、大変多くの方々に多大なご心配をおかけしておりますことに深くお詫びを申し上げます」

 5月14日に開かれた北海道・旭川市議会の経済文教常任委員会冒頭。市教育委員会の黒蕨真一教育長が報道陣の前で深々と頭を下げると、無数のフラッシュが浴びせられた。

市議会の様子

三者機関が調査結果をまとめるのは11月

 文春オンラインでは、4月15日から掲載し、今年3月、旭川市内の公園で当時14歳だった廣瀬爽彩さんが、凍死した状態で発見された事件の背景には、Y中学校に通う上級生らからの凄惨なイジメがあったことについて詳報を続けてきた。爽彩さんが通っていたY中学校は、これまで「イジメはなかった」と繰り返してきたが、報道を受けて、改めて再調査に乗り出すことを公表した。

5月14日に開かれた委員会で、市教委は、本事案をイジメの「重大事態」として対処し、第三者機関である「旭川市いじめ防止等対策委員会」で調査を実施することを改めて表明した。5月中にも調査に着手し、事件に関係した生徒等へのアンケートや、聞き取り調査を行い、11月末をもって調査結果をまとめるという。

 

イジメ凍死事件への質問が相次ぎ、会は3時間以上の異例の長さに

 経済文教常任委員会は約30分程度で閉会となるのが通例だが、この日は、爽彩さんのイジメ凍死事件に関する質問が市議会議員から相次ぎ、会は3時間以上にわたる異例の長さに及んだ。
煮え切らない市教委の答弁に対して、市議らからの質問は厳しさを増していった。

 13時から市役所の会議室で行われた委員会には、多くの地元メディアや傍聴する市民が集まり、緊迫した空気に包まれていた。

会議は冒頭、市教委側からの報告が5分ほど行われ、続いて市議らによる質疑応答の時間となった。
最初に質疑に立った菅原範明市議からは、「イジメの有無における学校の判断、市教委の対応」についての質問が投げかけられた。

 

萩生田文科大臣がしっかりと調査するよう指示を促した

「この事案については文春オンラインが隠蔽の疑いがあるとして記事に取り上げました。(4月26日には)参議院においてもこの事案の問題の重要性が指摘され、萩生田文科大臣におきましても真相究明にあたって道教委や旭川市教委にしっかりと調査するよう指示を促したということであります。
世間では学校また、市教委の対応のまずさ、不手際が大きな社会問題となっていたのではないかとの推測がある。
学校、市教委の対応はどうだったのか?」(菅原市議)

 

 それに対し、市教委の担当者はこう答えた。

「当該学校では事案発生後すぐに当該生徒及び関係生徒からの聞き取りを行うと共に、警察の対応状況も確認しております。
当該学校においては、事案発生の経緯や生徒同士の関係性等に関する情報から、イジメと認知するまでには至らなかったものの関係児童生徒への聞き取りの内容や学校の対応状況などについて、その都度教育委員会から報告を受けております」(市教委の担当者)

 

市教委は改めて、イジメと断定しなかった経緯を述べた。
菅原市議は続けて、こう質問を続けた。

報道と市教委の認識に大きな相違点があるのはなぜか?

「イジメの重大事態の疑いがあるとされ、西川(将人)市長は記者会見において今回、文春オンラインの報道と市教委が認識している内容と大きな相違点があると確認をされておりました。
その認識の根拠となる書類というのは存在しているのでしょうか。
また、今後相違点の事実などをどのようにして確認していくのか」

「本事案に関わり当該生徒や関係児童生徒が在籍をしていた学校が作成をいたしました聞き取りの内容や、指導の状況、警察と連携した内容等についての記録や、当該生徒の転校先の学校が作成をいたしました当該生徒の状況や学校の対応等についての記録がありまして、これらを本事案に対するこれまでの教育委員会の認識の根拠としているものでございます。

教育委員会では各学校からの報告内容をまとめた資料を作成しておりまして、これらの資料につきましては全て旭川市いじめ防止等対策委員会に提出をしてまいりますので、その調査の中で事実関係等明らかにしていく所存であります」(市教委の学校教育部長)

 

 

わいせつ画像拡散、自慰行為強要があったが、イジメと認定せず

 爽彩さんはわいせつ画像を拡散され、イジメグループから自慰行為を強要された。
続いて質問に立った高花えい子市議はそうした事実があったにもかかわらず、これを今までイジメと認定してこなかった学校や市教委の「判断基準」について疑問を呈した。
高花市議はそのうえでさらに市教委に「イジメの概念についてどう考えているか」と質問した。

「イジメにつきましては、国は当該児童生徒と一定の人的関係にあり、他の児童生徒と行う心理的または物理的な影響を与える行為により当該児童生徒が心身の苦痛を感じているものと定義しており、教育委員会におきましても平成31年2月に作成した旭川市いじめ防止等基本方針において国と同様の定義をしております」(市教委の担当者)

「児童生徒が心身の苦痛を感じていればイジメに該当されるという認識であると受け止めてよろしいですか?

「イジメの理解に当たっては何よりイジメを受けた側の心情に寄り添って判断することが重要であると認識しており、一定の人的関係にある児童等が行う行為により心身の苦痛を感じているものにつきましてはイジメに該当するものと考えております」(市教委の担当者)

「では、この度の当該生徒はイジメの被害に遭ったと認識することになりますが、そう理解してよろしいですか?」(高花市議)

「本事案につきましては把握した事実関係や、その中で得た事実発生の経緯、生徒同士の関係性等に関する情報から判断しました。

結果、イジメと認知するまでには時間がかかったと報告を受けており、市教委といたしましても関係機関と情報交換するなどして事実関係を精査したが、イジメと判断するまでには至らなかったところであります」(市教委の担当者)

 

警察は「近くの中学校で厄介な性被害、とんでもない事件があった」

爽彩さんがネットの友人に最後に送ったLINE

 能登谷繁市議は、「当時小学校に通っていた保護者の方にもお話を伺いました。

『2019年8月に警察の方が訪ねてきて、近くの中学校で厄介な性被害、とんでもない事件があった』と聞いていたそうです。
容易にいじめと判断できると考えられますが、それでも市教委はイジメと判断できなかったのでしょうか」と、切り込んだ。市教委の担当者は、

教育委員会に関しましては、本事案は警察と連携し、対応することが必要だったことから学校の事案発生報告を受け、ただちに警察との連携を開始するとともに、各学校における対応状況を把握しながら助言等を行い当該生徒と保護者への支援を行っていたところであります。

市的にはイジメの認知には至っていないというところであります」
と回答した。さらに質疑は続いた。

 

ウッペツ川飛び込み事件を「イジメではない」と判断した人物は?

 

「(2019年6月に爽彩さんが地元のウッペツ川に飛び込む事件を起こしたことについて)これは『イジメではない』ということは誰がどのように判断したんでしょうか?」(能登谷市議)

 

「当該学校におきましては、先ほど申し上げました児童生徒等からの聞き取りですとか、警察の対応状況について管理職や関係する教職員によって情報整理いたしまして、最終的には(当時のY中学の)校長が判断したところでございます」(市教委の担当者)

 

「第三者による調査でやるから何も言えない」で通るのか?

教育委員会が把握していた事実と既に報道された内容に相違があったということですが、どの部分がどの報道と違うのですか? 
文春オンラインのことですか? 
それは調査委員会を立ち上げる動機となる重大なことなので、しっかりとご説明いただきたい」(能登谷市議)

 

「今後の第三者による調査への影響を考慮し、具体的には申し上げることはできませんが、保護者と学校との関係性や当該生徒と関係生徒との関係性といったことに相違があったと認識してございます」(市教委の教育指導課長)

「保護者と学校のことも違う。生徒間のことも違うということですよね。
『第三者調査でやるから何でも言えない』っていうのは、それは通るんだろうか。
当時の判断は決裁済みでしょ? 
教育委員会として公的な判断をされたんですよね。
説明責任があるんじゃないですか?」(能登谷市議)

「当時の判断と現在の判断の違いということでありますが、現時点においては教育委員会としてもイジメの認知には至っていないところですが、我々の当時の認識等含めまして、そこにもしかしたら間違いがあったかもしれないということも前提といたしまして、そのことにつきましても第三者による調査の中で検証していただき、そのことを受け止めてまいりたいというふうに考えております」(市教委の教育指導課長)

Y中学校は地元紙報道に「謂れのない誹謗中傷」とプリントを配布

 能登谷市議によれば、2019年6月に、爽彩さんがウッペツ川に飛び込んだ事件を起こしたことは地元紙の「メディアあさひかわ」(2019年10月号)でも報じられた。

しかし当時、Y中学は保護者宛にプリントを配布し、メディアあさひかわの記事は「ありもしないこと」だと、否定したのだという。能登谷市議はこう質問した。

「当時ですね、中学校からこの雑誌の記事は事実ではない旨のプリントが配布されました。

これも保護者から聞かせていただきました。
そのプリントはですね、学校長が発出していますが、『地元情報誌に本校に関わる記事が掲載されました。ありもしないことを書かれたうえ、謂れのない誹謗中傷をされ驚きと悔しさを禁じ得ません』と、公文書とは思えない、学校長の心情まで書かれています。市教委はこの内容を把握していましたか?」(能登谷市議)

 

 

教育委員会は目を閉じて耳をふさいで知らないふりをしたとしか思えない

「当時、学校長とPTA会長との連名により保護者の方に宛てられた文書の内容については把握をしておりませんが、その文書の趣旨等については聞いているところでございます。

その文書の趣旨といたしましては、当時月刊誌で学校名も含めまして掲載されたことにより当該生徒と当時在籍していた子供たちの登下校の安全ですとか子供たちの不安や悩み、そういったことの解消のため学校としての取り組みについて保護者に説明するために書いた文書であるという趣旨については伺っているところでございます」(市教委の教育指導課長)

「全く解せませんね。教育委員会は目を閉じて耳をふさいで知らないふりしてこれをやり過ごそうとしていたとしか思えませんよ、はっきり言って。2019年4月から母親が『イジメられている、調べてください』と訴えている。

せめてこの6月の川に飛び込んだ時点でイジメとして対処していれば、命まで失うことはなかったんではないですか。

はっきり言って初動ミス。

学校任せにせず最初にしっかりとした調査を教育委員会として責任を持ってやっていれば子供の大事な命まで失うことはなかったのではないか」(能登谷市議)

 いじめがあった公園

黒蕨真一教育長は次のように語った。

「当該生徒が行方不明になられた際には私も早期に無事に発見されることを切に願っておりました。

亡くなられたことは極めて残念でならないことでございます。
これまでの一連の学校、それから教育委員会の対応につきましても調査機関の中で検証していただき、尊い命を救える手立てはなかったのかということを追及していくことが重要ではないかというふうに思っております」

 学校や教育委員会の隠蔽体質に対して、3時間にわたって厳しい追及が続いたが、市教委は「第三者委員会の調査」を理由に詳細を語るのを避け続けた。

 

遺族は「言葉がみつかりません」

 6月以降には次の委員会が開かれ、再び旭川14歳少女凍死事件について、議題に上がる予定だ。

爽彩さんの遺族は文春オンラインの取材にこう答えた。

 

「転校した後に学校がそのような書面を配布していたことは知りませんでした。
(学校側は)どうして嘘をつき続けるのだろうかと思います。
保護者会でも同じでしたが、言えることと言えないことはあると思いますが、イジメのことに関わることはすべて『第三者委員会の調査のため』という言葉で答えないというのは少し違うのではないかと感じています」

爽彩さんが幼い頃の写真

 

事件からは既に2年が経過し、加害者らの記憶は薄れ、口裏合わせや証拠隠滅の危険性もある。捜査権のない第三者委員会の調査で、遺族の理解が得られる検証結果が出せるのだろうか。

今後の旭川市教育委員会の対応に注目が集まる。