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(25)北海道 凍死事件 背景にある いじめ問題 の詳細! (1)~(25)まで

 

※本記事では廣瀬爽彩さんの母親の許可を得た上で、爽彩さんの実名と写真を掲載しています。
この件について、母親は「爽彩が14年間、頑張って生きてきた証を1人でも多くの方に知ってほしい。
爽彩は簡単に死を選んだわけではありません。
名前と写真を出すことで、爽彩がイジメと懸命に闘った現実を多くの人たちに知ってほしい」との強い意向をお持ちでした。編集部も、爽彩さんが受けた卑劣なイジメの実態を可能な限り事実に忠実なかたちで伝えるべきだと考え、実名と写真の掲載を決断しました。

 

 

尾木ママ緊急提言》

 

旭川市教育委員会は一刻も早く解散すべき

「正直言って、旭川市教育委員会は一刻も早く解散したほうがよい状態になっていると思うの。

僕は昔からよく言うんですけども、教育委員会というのはおそらくどこの都道府県を例にとっても、閉じた組織になってしまって、隠蔽体質に陥ってしまう。

今回の一連の報道を見ても、その体質がよく表れている気がします。

『学校の常識は、世間の非常識』という言葉があります。

旭川市教委は、自分たちの“常識”に捉われず、オープンな形で、このイジメの問題に取り組んでいかなければなりません」

旭川14歳少女イジメ凍死事件」について、こう厳しい言葉を投げかけるのは、「尾木ママ」の愛称で親しまれ、元中学・高校教師で教育評論家の尾木直樹氏だ。

尾木直樹

 

尾木ママが指摘する旭川市教育委員会の問題点

 

その2回目の会合が6月4日に非公開で行われ、保管されているすべての文書の分析をすることや直接関わりのなかった生徒らへのアンケートを実施すること、7月には関与した生徒からの聞き取り調査を開始することが発表された。

しかし、当初11月末までにまとめるとされた調査結果の公表については「日程は白紙」と延期が伝えられた。

 尾木氏は今から10年前の2011年に滋賀県大津市で起きた「大津市中2イジメ自殺事件」について調査する第三者委員会の委員を、遺族側の推薦を受けて務めた経験がある。

当時の経験も踏まえ、尾木氏は旭川市教育委員会の問題点を次のように指摘した。

 

 

萩生田文科大臣の“越権行為”が意味するもの

 まず、旭川市教育委員会は、4月26日に萩生田光一文部科学大臣が国会で述べた答弁の重みを理解すべきだと思います。

萩生田大臣は、国会で「(旭川の)事案が進まないということであれば、文科省の職員を現地に派遣する。

あるいは、私を含めた政務三役が現場に入って直接お話しする」とまで言いました。

これは極めて異例で踏み込んだ発言です。

 というのも、文部科学省には、都道府県立の高校に対して、「現場に入って直接お話しする」権限はあるのですが、公立の市区町村立の小中学校に対しては、各自治体が管轄している関係で、直接の調査権がないからです。

しかし、萩生田大臣はそんなことは百も承知で、あえて“越権行為”に及ぶ可能性を示唆したわけです。

それだけ、文科省としてはこの問題を重要視しているということです。

ところが、旭川市教育委員会が設置した第三者委員会は、当初11月末までには行うとした調査結果の公表時期について「白紙」にすると発表しました。

これではとても「事案が進んでいる」とは言えません。

はっきり言って第三者委員会は機能していないと思います。

 

 

“学校の常識は世間の非常識”…悪しき50年前からの文化

 そもそも、廣瀬爽彩さんが受けたイジメ行為について、Y中学校や市教委は2019年9月の段階で、文科省が定める「いじめ防止ガイドライン」(いじめの重大事態の調査に関するガイドライン)の事例にも明らかに抵触する事態が起こっていながら、『イジメではない』という結論を出してしまいました。

なぜ、こんなことが起きたかというと、やっぱりその背景には “学校の常識は、世間の非常識”と言えるような事情がある。

学校には50年前と変わらない悪しき文化が息づいているんです。

 例えば、校長先生というのは、往々にして、過不足なく自分の校長としての任期を全うすることを第一目標にしがちです。

なぜなら、公立校の校長を勤め上げた先生は、70歳になったら自動的に叙勲がもらえる。それから校長の任期を無事全うし、定年退職した際には、市立図書館の館長や教育相談所の所長といったポジションに天下りすることができる。

彼らにはこれがすごく重要なことなのです。

ところが、校長在任中に学校で“事件”が起きてしまったら、これらの恩恵を受けることができなくなってしまう。

そのため、校長先生というのは、イジメなどが疑われる事態が起きると『なんとか穏便にできないか』と、“事なかれ主義”に陥りがちです。

こういう校長先生の姿を、僕はこれまで無数といっていいぐらい見てきました。

旭川市のY中学校の校長先生もその意識がどこかにあったんじゃないかと推測できます。

 

 

 

学校や教育委員会は隠蔽体質に陥るもの

 基本的に学校や教育委員会というのは隠蔽体質に陥るものです。

だからこそ、今回のような「イジメの再調査」を行うための第三者委員会については、まず何より「オープン」であることが重要です。

 そこでまずは大原則として、第三者委員会の委員は『旭川市以外の方』を選ぶことが大切です。

 僕は大津のイジメ事件に関する第三者委員会に入った時、延べ56人から計95時間に及ぶ聞き取り調査を行い、今後のイジメ問題解決のモデルになるようにと、計230ページに及ぶ報告書を他の委員と一緒に作成しました。

その報告書の中に、わざわざ『第三者委員会の在り方』という項目を加えたんです。

そこでまず指摘したのは「委員には県外のしがらみのない人間を選ぶ」という視点でした。

大津の第三者委員会にも初めのうちは滋賀県臨床心理士会の会長が入る予定でした。その方は市教委との繫がりが弱くなく、もしこの方が委員に入ったまま調査が行われれば、調査の公正性が保てなくなることが懸念されました。最終的には被害生徒の家庭に関する個人情報を第三者に漏らしたとしてご遺族からこの人選に異議が出て、この会長が自ら第三者委員会の委員を辞める形で決着がつきました。

 

旭川市長はリーダーシップを発揮して、第三者委員会の改革を

 県内の人を選べば必ず被害者や加害者とどこかで何か繋がりが出てくる。そしてつながりがあれば、完全に客観的な調査などできるはずはありません。

ところが、現時点で決まっている旭川の第三者委員会の8人のメンバーは、ほとんどが旭川市内にある病院の医師や弁護士、北海道内の関係者だそうですね。これでは、客観的な調査など望むべくもありません。

しかし、第三者委員会の人選については、市長の姿勢如何でどうにでもなる問題です。大津のイジメ事件の時は、当時の越直美大津市長が中学時代に自身がイジメを受けた経験があったこともあり、イジメには毅然とした態度をとり、必ず真実を解明するという姿勢で矢面に立って臨まれた。

その結果、第三者委員会の委員の人選についても、中立性とご遺族の意思を最も重視して理想の形で進めることができたのです。旭川の市長も教育委員会に任せず、リーダーシップを発揮して、第三者委員会の人選についても抜本的に見直す必要があるでしょう。

 

 

 

段ボール11箱分の資料を押収、すべてを読み込んだ

 また、第三者委員会は、学校や市教委が保管しているすべての資料を入手しなければなりません。

大津の時では、被害生徒が通っていた学校が、同級生らに実施したイジメのアンケートを不開示にしていました。

僕らが学校や市教委に働きかけても、なかなか資料が出でこなかったんですけど、幸運だったのは警察が動いてくれたことでした。職員室を家宅捜索して、すべての資料を押収し、僕らに渡してくれたのです。

 重要な資料から学級日誌まで全部で段ボール11箱分もあり、あれだけの資料を読むのは大変でしたが、その分、当時学校内で何が起きていたのか、学級はどう変化していったのか等を克明に見ていくことができました。

 旭川の場合でも、2019年にY中学校が実施した加害者生徒や同級生、教員らの聞き取りをまとめた調書について、遺族が情報公開請求をしても、教育委員会が開示拒否を行っていると聞きますが、事実なら第三者委員会は、まずあらゆる資料を集め、当時実際に何が起きていたかを虚心坦懐に見直すべきでしょう。

 

 

すごく寒くて、ブルブル震えながら聞き取りをした

 イジメに関係した生徒や学校関係者への聞き取り調査も大変重要になります。

大切なのは、杓子定規に関係者と対峙することではなく、臨機応変に、相手の立場に立って話を聞こうとする姿勢です。

大津の時は、基本的にイジメに関係した子どもや先生には、市教委の会議室に来ていただくというかたちを取りました。

しかし、中には『教育委員会には行きにくい』という子もいるわけですね。

そういった場合は、相手が指定するところへ足を運ぶ約束にしていました。

 ある時は、山の上の方に住む生徒のご自宅に伺ったこともありました。

すごく寒くて、ブルブル震えながら聞き取りをした記憶があります。

また、生徒の自宅で聞き取りをするというケースもありました。

そうやって、調査委員会のメンバーが誠意を見せれば、子どもたちも次第に心を開いて「本当のこと」を話してくれる。そんな場面がいくつもありました。

聞き取りに応じることは、加害側の子どもにとっても、自分のとった言動を見つめ考える重要な教育機会でもあるのです。

 

 

加害生徒の親からすごい迫力で恫喝されたこともあった

 ただ、僕はこれまで多くのイジメ問題の解決に取り組んできましたが、最近では加害者側の親も加害生徒と同じトーンで反論してくるケースが多くなってきているように感じます。

「うちの子はイジメはしていない。あれはただの悪ふざけだった。

だから、うちの子どもが聞き取り調査を受ける必要はない」といった具合です。

この場合は、まず親に、関係者にはイジメを行ったかどうかにかかわらず、聞き取りをしていることを十分に納得してもらったうえで、子どもにも話を聞くことになります。

正直労力は通常の聞き取りの何倍にもなるので、大変です。時には、加害生徒の親からすごい迫力で恫喝されることもありました。

なかなか一筋縄ではいかないことも多いのです。

 

 

 

お前の家族全員死ね」19件に及ぶ凄惨なイジメ行為があったと認定

 それでも、第三者委員会は「事実で勝負する」姿勢が大事です。

大津ではゼロベースから事実認定を行いました。

例えば、自死に至る被害生徒の行動に関しての市教委側のある推論について、僕の教師経験からすると、「中学2年生の男の子だったら、そんなことはまずしないだろう」という確信に近いものがあったのですが、当時の第三者委員会の委員長を務めた元裁判官にそのことを伝えると『それは先生たちの経験主義です』と言われてしまったんです。

そこで、僕たちは、被害生徒がそのような行動をとることはあり得るのかどうかしっかり検証しようということで、精神科医や虐待問題の専門家、イジメ問題の権威らから2時間ずつ、レクチャーを受けました。

現場も念入りに調べ、改めて出した結論は、結果的には僕の推論どおりだったのですが、第三者委員会の調査ではそうやって先入観を捨てて、一つ一つの事実を慎重に検証していったのです。

 その結果、最終的には、被害生徒が複数の同級生から学校の教室、トイレ内、廊下などで頻繁に暴行を受けていたこと、口や顔、手足に粘着テープを巻き付けられたこと、「お前の家族全員死ね」などの言葉を浴びせられ、自殺の練習まがいの行為までするように強要されていたことなど、19件に及ぶ凄惨なイジメ行為があったことを認定しました。つまり、第三者委員会がやらなければいけないのは、先入観や経験主義に陥るのではなく、かかわりのあった生徒や教師、家族や親族、ご近所にも範囲を広げて聞き取りをして、あいまいなことを丁寧に消していく作業なのです。

 

 

生徒の聞き取り以上に先生の聞き取りには注意せよ

 また、第三者委員会は「閉鎖的な職員室文化」と向き合うことも強いられます。

どんな学校にも少なくとも5~6人は良心的な教師が必ずいるものです。

彼らはイジメに対しても問題意識を持っていて、周囲には「あの時、確かにこんなことが起きていた」と事実を話していたりする。

しかし、いざ第三者委員会の調査となると、突然口をつぐんだり、ウソの証言を始めたりするのです。

 それは彼ら良心的な教師に対して、村社会的な論理が働くからです。

周りの先生から『お前が事実を話したら校長はどういう処分を受けるか。

教育長にまでこんな迷惑が掛かる』などと責められるんですね。

すると教師は自分一人の問題では済まないと気付き、その場の空気にも流され、口をつぐんだり、『よく覚えていません』『記憶にありません』などと証言を変えてしまうわけです。

それがいけないことだと分かっていても、内向きの論理に捉われてしまう。

 こういったことがあるので、生徒の聞き取り以上に教員の聞き取りにも注意しなければなりません。

もとより、子どもたちは先生の言動をよく見ています。

信頼する先生や大人が態度を変えてウソを言うことに、子どもの心は大きく傷つきます。子どもに恥じない人間教師であってほしいと思います。

 

 

 

スマホを使った陰湿なイジメが横行してしまう理由

 現代では、イジメの形も変わってきています。

イジメが見えにくくなってきたといってもいい。

旭川で廣瀬爽彩さんが、イジメグループに裸の画像をSNSで拡散されたようにスマホを使った陰湿なイジメが横行しています。

ところがこういう時、学校は『スマホの使用は学校で禁止されている。

学校外で起こった出来事については学校は関与しない』という態度を取りがちです。

 旭川でもY中学校がそうした態度をとっていたようですけど、しかし、本来であれば、中高生にもスマホやネットが普及し、そこにもう一つのリアルな世界を持っている現代の子どもの状況を考えれば、「学校外で起こったこと」と切り捨てるのは、学校の本分を放棄しているのと同じです。

そのためにも、先生方こそ今の時代はスマホリテラシースマホを適切に使いこなす能力)を磨く必要があり、積極的にこうした問題に対処していくべきです。

 

 

加害者や傍観者が大人になっても苦しむケースをいくつも見てきた

 自分自身が加害者や傍観者としてイジメにかかわった人が、その後、そのことときちんと向き合うことをしなかったために、大人になってもなお苦しむケースを私はいくつも見てきました。

真実と向き合うことは時にはつらい場面もあることでしょう。

しかし、そのことは、被害者やご遺族のためだけでなく、イジメにかかわった人たちすべての今後の人生にも重要な意味を持つのです。

三者委員会は被害者のために真摯に向き合うべきです。

決して、教育委員会の内向きの論理に屈することがあってはなりません。

イジメの起きない社会にしていくため、市長のリーダーシップと第三者委員会の今後に注目したいと思います。

 

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