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いじめの自殺が多い9月1日

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内閣府がまとめた18歳以下の自殺者数のデータによると、2013年までの42年間で亡くなった人が最も多いのは「9月1日」だ。長い夏休みを終え、久しぶりの登校日に当たることから、いじめを受けている子どもたちに取って、プレッシャーが最も重くのしかかる日だとされている。背景には、学校で顔を合わせなることなくコミュニケーションを取ることができる、LINEなどSNSの存在があることも大きい。

 

 AbemaTV『AbemaPrime』では、今、中高生の間で深刻化する"LINEいじめ"に焦点を当て、家族などを取材した。

中高生たちに話を聞くと、

 

 「グループから嫌だなと思う人を強制的に抜けさせる」(中1)

 「その子以外の人でグループを作って悪口を言ったりとか。イジメかどうかは分からないが、急にグループから外すというのもある。」(高3)

 「『○○君うざくない?』『明日無視しようぜ』みたいな感じのことをLINEで言ってきて、それに乗らなかったら、自分もその子にいじめられる。それが集団でのいじめにつながっちゃうということがよくあった」(高1)

 

 と、いじめに発展しかねないコミュニケーションが日常的に起こっていることを伺わせる。

 

 高校生と共同でLINEのコミュニケーションを研究している加納寛子・山形大学准教授が入手した実際のやりとりによれば、「手が滑った」など、誤操作で退会させてしまったかのような言い訳をしながら、グループから外したあとで個人の悪口を言い合い、再び招待して"遊ぶ"ようなケースもある。メッセージ=言葉だけでなく、やりとりの文脈の中で巧妙に不安に陥れ、暗にいじめを行うという実態もあるのだ。

 

■被害者遺族「文字は何度も見ることができるので、どんどん傷ついていく。」

 先週末、青森市で自ら命を絶った中高生ら18人の写真や遺族のメッセージなどを紹介する展示会が開かれた。新学期を迎える子どもたちの命の危険を訴えるのは、長年いじめ問題に取り組んで来た「ジェントルハートプロジェクト」の小森美登里さんだ。小森さん自身も19年前、娘の香澄さんをいじめによって亡くしている。「やはりこの時期に(展覧会を)やって、メッセージを子どもたちに見て頂いて、『もう1回頑張ってみよう、自分1人じゃないかも』と思ってほしい」と話す。

 「娘の死をまだ受け入れたくないというか。認めたくない」。展示会に参加した葛西剛さんも、自殺で我が子を亡くした遺族の一人だ。去年8月、当時中学2年の娘・りまさんが線路に入り、自ら命を絶った。りまさんを撮影した写真は地元の写真コンテストで最高賞を受賞したが、被写体が故人であることを理由に内定を取り消されたことも報じられた。それから1年、葛西氏は娘のことを思わない日はない。

 りまさんが受けていた"LINEいじめ"。トーク画面には中傷する文章が並び、自死を促すようなものもあった。葛西さんは「『死ね』という言葉は一番心に刺さる言葉。普段使うような言葉じゃないが、SNSでは当たり前のように使われてしまう」と話す。

 3年前、海に身を投げて命を絶った大森七海さん(当時高校2年)も、LINE上でいじめを受けていた。七海さんの母親は「『存在自体がうざい』『自殺迷惑』とか。文字は何度も見ることができるので、どんどん傷ついていく。口では言えないことでも、文字はその時の気分が簡単に出てきちゃう」と話す。七海さんは携帯を見るのが怖く、家に帰っても一切触らない時期もあったという。

 

■いじめを受けている中学生の母「思春期も重なるので、判断が難しい」

 現在進行系でいじめの被害に苦しむ中学生の母親がAbemaPrimeの取材に応じた。

 埼玉県内の公立中に通う息子が、部活でのトラブルを機にLINEグループから外され、練習もほとんど1人で行うという状況に追い込まれたのだという。LINEには「迷惑してるんです」「しねかす」「ごみおつ」など、存在を否定するようなメッセージが送られてきたほか、信頼していた友達からも約束をドタキャンされた。

 「突然LINEグループから外されて、何かの間違いだと思ってすぐに入り直させてもらったんですけど、またすぐに外されて。何が理由なのか、原因なのかわかりませんでした。」

 

 いじめはエスカレートし、暴力にも発展した。肘で顔を殴られたり、首を絞められたりしたこともあったという。

 

 「毎日のように隠れて見に行っていた。私の目の前でも叩かれたり突き飛ばされたりしていた。顧問にその都度相談したが『気をつけてみる』ということだった。首を締められた時にはさすがに危ないと思ったので、警察に相談したこともあった」。

 

 息子は中学2年2学期からは学校にはほとんどいけなくなってしまった。自宅に引きこもりがちになり、自ら命を絶とうとしたこともあった。転校することも考えたが、転校先でまたいじめに遭うことを心配しているのだという。

 

 「今年4月からは学校に少しずつ行けるようになったんですけど、5月には通学靴にマジックで『死ね』って書かれるということが起きました。子どもが勇気をもって告白してくれて、先生にも相談してくれたのですが、学校側は自分たちの保身を考えて公にしないようにしている節があります。LINEでのトラブルは他にも起きているみたいなのですが…」。

 

 現在、志望校を目指し、塾にも通っている。しかし、一部の生徒からの嫌がらせはまだ続いている。9月1日の始業式を前に、母親は「行きたくないような雰囲気が見えたりする。でも私が心配すると思って、行きたくないとは言わない。子どもたちには、親に心配かけたくないという気持ちも大きいと思う」と話す。

 

 「中学生くらいになると思春期も重なるので、子どもの様子が変わっても、反抗期なのか、それとも悩みがあってなのか、判断が難しいと思います。学校にもきちんと対応していただきたいと思いますが、親も出来る限り目を離さないようにして、会話を増やすようにして察知できるようにしています。携帯電話は私にもちゃんと見えるような約束のもとで使わせています」。

 

■LINE自身も対応策、地域の大人も積極的関与を

 いじめの問題に詳しい全国WEBカウンセリング協議会理事長の安川雅史氏は、「目の前に相手がいればある程度ブレーキがかかるが、文字のやり取りではなかなか難しく、簡単に『死ね』といった言葉を使ってしまう。また、LINEグループの場合、一人が誰かをターゲットにすると、他の人も同調して、集団でいじめるようになっていく」と話す。

 「夏休み中の方がスマートフォンに触っている時間が長くなる。そこでエスカレートする傾向がある。SNS上のいじめは学校を休んでも続く。だから逃げ道がないと思いがち。しかし思い切って環境を変え、人間関係をリセットすることがで変わるかもしれない」。

 自殺対策に取り組むNPO法人ライフリンク」代表の清水康之氏も「自殺対策基本法が2006年にできて以降、中高年・高齢者の自殺者数、自殺率は減ってきている。その一方で19歳以下、20代の自殺率はほぼ横ばいの状態」と指摘した上で、「いじめの対象に自分はなりたくない、そのための一番の方法はいじめる側にまわっておけばいい、ということになる。今の子どもたちにとって、LINEを使うのをやめるわけにはいかない。また、学校以外の居場所の選択肢がなかなか見えないのも、精神的に追い込まれてしまう原因」と話す。

 「学校がつらくてもココがあるよ!」プロジェクトに参加するNPO法人東京シューレ」がフリースクール3カ所(東京都北区、新宿区、千葉県流山市)を無料開放するなど、一時的に現実的な逃げ場を提供する試みもある。

 また、子どもにとって危険なワードが入ったメッセージが届くと親に通知が送信される「Filii」(フィリー)や、いじめを見たり、聞いたりした時に匿名で教育委員会に報告できる「STOPit」というアプリもあり、「STOPit」はすでに25校が導入し、1万2000人が利用しているという。また、LINE自身もいじめ防止に取り組んできており、長野県、大津市と協力し、LINEを使った相談窓口の試験導入を決めている。安川氏も「24時間体制などになっていけば、かなり有効な手段になりえると思う」と話す。

 しかし、SNS、LINEはあくまでもツールに過ぎず、いじめが根本的に無くなるわけではない。 

 

 清水氏は「いたちごっこになるとしても、徹底的にいたちごっこをすればいい。同時に、いじめが起きる環境、要因を社会、地域から取り除いていかないといけない。大人がどう関わるかが問われている」と指摘。「保健師による出前授業やスクールロイヤーとの連携、子どもたち同士での議論を通じてルールを決めさせる。そして、これらの取り組みを学校の先生だけに押し付けるのではなく、地域の大人も入り込んで、助けていくべきだ」とした。

 

元いじめられっ子対談 僕らが手に入れられたもの…

こんにちは。小幡和輝です。

今日は9月1日。1年間で最も子どもの自殺が増えると言われている日です。そのことを7月21日のブログに記載したところ、ある人からこんなコメントをいただきました。

「実は僕、小中高といじめられていたんです。ツラい想いをしながら毎日通っていました。でも、あのときの経験があったからこそ今の自分がいるような気もしていて......なんかうまく説明できないので、よかったら一度お話ししませんか?」

 

僕に声をかけてくれたのは、面白法人カヤックの加勇田雄介(かゆだゆうすけ)さん。

加勇田さんは不登校ではありませんでしたが、小中高といじめに遭い、深く心が傷ついたそうです。しかし「今振り返ってみると「いじめられていた」というコンプレックスがあったからこそ、今、全身全霊を捧げられる仕事と出会えた」と話します。

これは、一体どういうことなのでしょうか?

そこで今回は、加勇田さんをお招きして行なった対談の様子をレポートさせていただきます。僕ら二人の言葉が、学校生活に悩んでいるみなさんの元に届くことを願って。

 

 

【対談相手のプロフィール】

加勇田雄介|かゆだゆうすけ

「企画=(柳原可奈子池上彰)÷2」をモットーに、前職では、スポーツメーカーでありながら「PCスーツ」「正しいサボり方研修」を仕掛け、ランニングタイツの企業の福利厚生での導入、ヨドバシカメラなど家電量販店での展開を促進。2016年5月にカヤックへ移籍。会社の活動そのものを「コンテンツ」と捉え、編集の考え方を拡張して、会社をつくることを目指す「編集部」所属

 

 

いじめからは逃げていい

小幡:

今日はよろしくお願いいたします。僕は、学校に行った時間よりも学校に行かなかった時間のほうが長い人間なんですけど...加勇田さんはどんな小中高時代を過ごしてきたんですか?

加勇田:

ドラマであるようなトイレに入っていたら水をぶっかけられたり、上履きに画鋲を入れられたり...ってことはなかったんですけど、無視されることが多かったですね。"ここにはいない人"にされたというか。

たとえば、修学旅行だと自由行動のときにグループをつくるじゃないですか。でも、誰も僕に声をかけてくれない。かといって、僕からも声をかけられない。"いい子"を装うのが上手な同級生が空気を察して入れてくれるんですけど、僕がいじめられていることを先生に知られたくないからなんですよね。僕も自分が貧乏くじだと気づいているから、グループの他のメンバーが楽しめるように気配を消してついていっていました。

 

何がきっかけだったかは全く思い出せないんですよね。突如としてそういう雰囲気になってしまった。

 

 

小幡和輝

 

 

小幡:

中学校とかは特に、教室の空気が毎日のように変わりますからね...。流行りも3日くらいで廃れてしまう。だから、いじめも急に始まるんですよね。

僕は、物理的ないじめに遭っていましたね。

幼稚園のはじめくらいから小学校2年くらいまではちょこちょこ休んでいて、それからはほとんど行ってなかったんです。クラスに馴染めなかったし、集団行動は苦手だし、勉強もおもしろくなくて、学校自体好きじゃなかったので。

僕の実家がある湯浅町は人口1万人くらいで学区のコミュニティーも小さいので「小幡が不登校」という情報はあっという間に広がるんですよ。ただ、学校へ行かないと目立つ。親からも「行きなさい」って言われて。それで、学校へ行ったときに隣のクラスのいじめっ子にいきなり殴られました。

たぶん、ある種の嫉妬はあったと思うんですよ。「俺が毎日通っているのに、なぜ小幡はたまにでいいんだ」って。本当に理不尽だと思いましたね。

加勇田:

それもツラいですね...。どっちもツラい...。

小幡:

ただ、僕は殴られたことで学校へ行かない明確な理由ができた。これは、親にとっても大きい出来事だったと思います。学校でも問題になったし。

加勇田:

話を聞いていてすごいと思ったのは、小幡さんが"逃げる勇気"を持てたことだと思います。僕の場合は、逃げる勇気がなかった。「不登校=いけないこと」という先入観が強くて、内申書を気にして、たとえば修学旅行に行かないというカードを切ることもできなかった。もし当時の自分に声をかけられるのなら「そこから逃げていいんだよ」と教えてあげたいですね。

小幡:

僕は、適応指導教室という学校以外に居場所があったから逃げることができたんですよね。学校よりも楽しかったし。もし「学校へ行く」という選択肢しかなかったらツラかったと思います。ブラック企業からいかに脱するかという話にも似ているんですけど、「最悪辞めちゃえばいいや」と思えたら、途端に気持ちがラクになるんですよ。今、過去に不登校だった人とたくさん話すんですけど、他に居場所がある人とそうでない人は違いますね。

だから僕は、適応指導教室にはすごい感謝をしています。以前は自治体の予算でやっていたんですけど一度潰れてしまい、今はそのときの職員がNPOでやっているんですよ。「ここを潰すのはダメだ」って。あらためてすごいなって思います。

 

 

小幡和輝

 

 

加勇田:

確かに、僕には学校以外の居場所はなかったですね。どうすれば"第二の居場所"ってつくることができるんですか?

小幡:

僕は小学校低学年だったから親の協力は欠かせませんでしたね。今なら、SNSを活用すれば何かしら見つかりそうな気がしますけどね。

 

コンプレックスをさらけ出すと世界は広がる

小幡:

加勇田さんは「いじめられた過去があったからこそ、今の自分がいる」と話されていましたね。詳しく教えてください。

加勇田:

教室にいても空気みたいに扱われていて、声もかけられないし、自分から声をかける勇気もないって子どもだったんですけど、今の仕事にはそのときの経験が役立っているんですよね。今は面白法人カヤックという会社で戦略PRという仕事をしているんですけど、たとえば、誰かに「どんな仕事をされているんですか?」って聞かれたときは「職業はマツコ・デラックスです」と答えているんです。

小幡:

え???

加勇田:

...ってなるじゃないですか(笑)。でも、そうやって気にしてもらえたり、興味を持ってもらうきっかけをつくることが、今の仕事なんです。

つまり、学生時代に声をかけてもらうことがなかったから、「どうすれば声をかけられるのか、興味をもってもらえるのか」を考えることが好きになった。

僕は、自分にしかできないことってコンプレックスのすぐそばにあると思うんですよね。戦略PRの仕事って、ざっくり話すと概念をつくることなんです。たとえば「スイーツ男子」という言葉ができる前って「甘いものが大好きです」って表立って言う男の人って少なかったと思うんです。でも、新しい概念ができたことで気軽に言えるようになる。そういう誰かにとって、有利な環境を意図的に整える仕事。

そういう概念ってマイノリティーだった経験、声に出したいけど言い出せないみたいな経験があるとすごくつくりやすいんですよ。そういう仕事に出会えたのは大きいですね。

 

小幡和輝

 

 

小幡:

おもしろいですね。どうやって戦略PRの仕事に出会ったんですか?

加勇田:

新卒で入社した1社目の会社である人に教えてもらいました。そのときにコンプレックスをさらけだして立てた企画が世の中に出たんですけど、そのときに「ありがとう」って言われたのがものすごく嬉しくて。そのことがきっかけでハマっていきましたね。今思い出してもしょーもない企画なんですけど(笑)。

だからですね、コンプレックスをさらけ出すと拾ってくれる人っているんですよね。自分にとっては恥ずかしいことかもしれないけれど、発信するとビジネスになり得る。こういう言い方をすると打算的ですけど、成果をドヤ顔で自慢するよりも、コンプレックスをさらけ出したほうが親近感を抱いてもらいやすいんですよね。

小幡:

大賛成ですね。もちろん当時を思い出すとツラいんですけど、今考えるとそのときも含めての自分だと思うし。

たとえば僕は不登校の期間にゲームをトータルで3万時間ほどやっていたんですね。1日8時間で約10年。どの仕事も3年やって一人前みたいな話があるじゃないですか。そういう意味では僕はプロなんですけど(笑)。

こういう話ってネタとしてもおもしろいし、これをきっかけにゲームに関する連載をやらせてもらったり、「ゲームを通じて歴史を学んだ」という実体験をもとに『わかやまトランプ』という和歌山の歴史を絵柄にしたトランプをつくったりしました。引きこもっていたときの経験をさらけ出したことで、いろいろなチャンスをつかめているんですよね。

加勇田:

僕はキャリアっていかに自分に磁力を蓄えられるかだと思っていて。コンプレックスすらもさらけ出せば磁力になるんですよね。今回も「僕、いじめられっ子で...」ってさらけ出したことで実現した対談ですしね。

小幡:

もちろん無理にさらけ出す必要はないです。嫌なら出さなくてもいい。でも、出したほうが確実に世界は広がっていくんですよね。いつからコンプレックスさらけ出せるようになりましたか?

加勇田:

東京へ来てからかもしれませんね。

初めて渋谷に降り立ったとき、隣が表参道、代官山、原宿だったことにものすごく衝撃を受けたんです。文化の異なる街が隣接して成立しているということは、渋谷で変だと思われても、表参道なら受け入れられることもあるような気がしたし、むしろ際立たせていけばブランドになる予感がした。東京だからこそさらけ出せた部分はあったかもしれません。

小幡:

確かに東京は多様性に寛容な街ですよね。

僕の場合は、中学生の頃は不登校のことを隠していたんです。中2で遊戯王の大会に出場したときに「どこの中学?」って聞かれても、普通に学校へ通っているテイで答えていました。たぶん「なんで行かないの?」と言われるのが嫌だったんですよね。

でも、中学を出て夜間学校に入学してから堂々と言えるようになりました。そもそも当事者じゃなくなったし、朝から夕方までバイトして、そのあと学校へ通っていたんで、よその高校生よりがんばっている自負もあったんです。時間が解決してくれる部分はあるかもしれませんね。無理する必要はないんです。

 

 

小幡和輝

 

 

加勇田:

あと、生きていれば「この人になら言っていいかな」って思える人と出会えるんですよね。僕の場合は1社目で戦略PRの仕事を教えてくれた人がそうでした。そういう人ってびっくりするくらい教えてくれたり、考えてくれたりしてくれているから、そういう人のそばにいて自分のタイミングで話せばいいんだと思います。

 

コンプレックスを武器に変えるきっかけを提供したい

小幡:

加勇田さんは当時の自分に話しかけられるとしたら、何て声をかけますか?

加勇田:

やっぱり「逃げていいよ」ですね。僕は親や先生が絶対だと思っていたんです。だから、いじめられていても"いい子"を装っていたし、学校へ行かないという選択もしなかった。彼らの価値観に合わせて無理をしていたんです。

小幡:

地方だとことさら「学校に行く」という選択以外の「学校に行かない」という選択がそもそもありませんからね。学校に行ってなくても成功している人を知らないから。今の世の中、元不登校の有名人はたくさんいるし、大学を中退して起業ってもはやブランドじゃないですか(笑)。でも、地方だと「え!?」ってなる。サンプル数が違いすぎるんですよね。

僕は学校へ行っていなくても頑張っている人がいるということをもっと発信していきたい。そして、一般化すればいいなと思います。

加勇田:

小幡さんは、今いじめに遭っている子どもがいたら、何て声をかけますか?

 

小幡和輝

 

 

小幡:

親に真剣に伝えるってことですかね。「体調が悪いから休みたい」とかじゃなくて、真実を。先生の「学校へ来なさい」は受け止めなくてもいいから、親にはちゃんと伝えたほうがいいですね。子どもがいじめられているのに「学校へ行け」という親はいないと思うので。

僕の場合、ちょっと特殊で親が教師なんですよ。自分の子どもが学校へ行っていないと仕事上マズイじゃないですか。たとえば、よその子どもが不登校になっても「学校へ来なさい」とは言いづらい。「自分のところをどうにかしろ」って言われてしまうので。最初は衝突したんですけど、同級生に殴られてからは理解してくれて適応指導教室に通わせてくれました。

だから、今ではものすごく感謝しています。

加勇田:

適応指導教室フリースクールもそうですけど、日本のセーフティネットって、実は充実しているんですよね。僕はセーフティネットが充実していることを知って、最悪クビになっても平気だと思うようになりました。

それにセーフティネットは自分でもつくることができるんですよね。複業もそのひとつ。複業をきちんと確立していれば、本業で「この企画が通らないならクビにしてくれ!」くらいの思い切った提案もできるんですよ(笑)。

こんなことを言ったら婚期が遅れてしまうかもしれないけれど、今の僕にとって、仕事以上のエンターテインメントはないんですよね。そういう人生ってなかなか送れないと思う。でも、きっかけはいじめだったんです。いじめがなければ、普通に大学を卒業して、普通に就職して、普通に定年退職していたかもしれない。そういう意味では、たぶん人間としての根本は変わってないけど、それを才能に変換できる環境は手に入れられるということも伝えていきたいです。

小幡:

結局、後付けでどうできるかですよね。僕は不登校で良かったと思っていますし、学校行ってたら今の自分は存在しないと思うし。今はすごく楽しいんで、不登校でよかったですね。おおっぴらには言えないですけど(笑)。

加勇田:

コンプレックスってやり方次第で武器になるんですよね。自分で武器にすることができなくても、武器に変換してくれる人がいる。そういう人となるべく早く出会ってほしいなとおもいます。そして、僕も悩んでいる人がいたらお手伝いしたい。話すタイミングがあったらぜひ声をかけてほしいと思っています。

小幡:

僕は加勇田さんの「逃げる勇気を持とう」というメッセージにはすごく共感しました。僕はん逃げていたので。だから僕にとっての居場所になった適応指導教室フリースクールの存在はもっといろんな人に知ってもらいたいですね。そして、行ってほしい。

あ、加勇田さん、適応指導教室って名称が少し怖いので、新たにネーミングして通いたくなるようなブランディングしたいんですけど一緒にやりませんか?

加勇田:

いいですね(笑)。やりましょう!

小幡:

おおお!楽しみです。今日は長時間ありがとうございました!そして、もし僕らに話を聞いてもらいたいという方がいたら遠慮なく声をかけてください。

 

 

「Kids’Sign」いじめサービス

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熊本県は30日、生徒間の会員制交流サイト(SNS)などでのいじめを早期発見するために、生徒らがスマートフォンなどからいじめを匿名で報告するネットサービスを、県立の高校2校と中高一貫校1校で9月1日から試験的に導入すると発表した。都道府県のいじめ対策としては初の取り組みとしている。

 県によると、スマホを持つ生徒が増え、親や教師の目が届きにくい無料通信アプリLINE(ライン)といったSNSでのいじめが増加傾向にあるという。

 「Kids’Sign」というサービスで、いじめにあったり目撃したりした生徒が、学校名やいじめの状況、関係する人の名前を、ネット上の画面からいつでも匿名で県教育委員会や学校に通報できる。対象校で試験的に導入して検証し、来年度に全県立中学、高校での本格導入を目指す。

 県によると、県内の小・中学、高校を対象に行ったアンケートでは、いじめにあったことのある児童・生徒の約2割が「誰にも相談できなかった」と回答。県の担当者は「いじめにあっている生徒が声を上げるためのツールになってほしい」と期待している。

www.ijime-a-true-story.com

 

アメリカのいじめ相談アプリを日本展開!

今年、千葉県柏市に導入され、注目を集めているいじめ相談アプリ「STOPit(ストップイット)」。昨年から私立校などで導入が広がり、柏市含め、利用者は25校、約1万2000人に広がっている。米国で開発されたこのアプリを日本の学校に導入する代理店「ストップイットジャパン」を経営するのが、谷山大三郎さん(34)だ。「日本の学校でも、このアプリを活用してほしい」。日本での導入に向けた原動力になったのは、自身のいじめ体験だったという。

調理実習のサンドウィッチ自分だけ配られず、つらい思い

当時を振り返る谷山さん

 谷山さんは小学校5、6年生のときに、いじめを受けた経験があった。

 「1学年1クラスの学校だったんですが、いじめられていました。猫背だと、からかわれたりして。それを誰にも言えずに、親にも相談できずに、悩んでいました」

 「よく覚えているのが、調理実習で、みんなでサンドウィッチを作ったんですが、作り終わっても、自分の分のサンドウィッチが置かれていなかったんです。でもそのときに、自分の分がないよ、ということも言えなくて。あまりこのことを大げさにはしたくない、という気持ちも働いて、そのまま食べずに実習を終えました。今では笑って話せるけど、当時はつらかった」

 そんな状況を打破してくれたのが、当時の担任の先生だった。パワーのある男性の先生だったが、いじめに気がついた先生は、当時話題となった、愛知県の大河内清輝君(13歳でいじめを苦に自殺)の話を出し、「このクラスにも大三郎君に対してひどいことをしている人がいる」とクラスで宣言。いじめをやめるように呼びかけたという。

 「このやり方がよかった、とは言い切れないと思いますが、自分は救われました。その後には、友達から、『いじめに気がついていたけれど、止めなくてごめん』と謝られたりして、実は周りの子もいじめに悩んでいたこともわかった。自分の経験から、いじめがあると気軽に報告できる窓口が、いじめられている子や、見てみぬふりをして悩んでいる子のためにも必要だと実感していたんです」

 このときの経験がきっかけで、教員を目指し千葉大学教育学部に進学することになった。

米で話題のアプリの記事を見て「日本の子供をこれで助けたい」と一念発起

ストップイットの報告画面。上の白枠にメッセージを書き込んで赤い送信ボタンをタップするだけでいじめを匿名で報告できる

 教員を目指していたが、教員採用試験に不合格になってしまったことをきっかけに進路を変更。同大の大学院を卒業後はリクルートに就職した。その後、早期退職し、大学時代から関わっていたNPO法人で、企業が学校でキャリア教育の授業を行う際のコーディネート業などを行っていた。教員ではない形で、教育に関わりたいという思いからだった。そんな中、2015年4月ごろ、あるインターネット記事が目に飛び込んできた。

 「そこに、STOPitのことが書かれていたんです」

 STOPitは2014年8月に米国でリリースされたアプリ。当時の米国では、インターネットの発達により、メッセージアプリなどを使ったネットいじめが横行していた。開発者は、「いじめの被害者とそれを目撃している人たちの両方に、いじめがどこで行われていようと、いじめを追跡できる手段をもたらしたい」と思い、アプリが生まれたという。

 STOPitは、子供がアプリをダウンロードすれば、ボタンのワンタッチで匿名のまま、学校や教育委員会といった第三者に助けを求めることができる。嫌なことをされたときにスクリーンショットや動画で記録し、学校側に報告することもでき、名乗らずに担当の大人とメッセージをやりとりすることもできる。報告やメッセージを受け取った教育委員会や学校には、学年や学校名など学校側や教育委員会側であらかじめ設定した送信先がわかるため、匿名であっても学校と連携を取り素早く解決に乗り出すことが可能だ。

 「これは日本にも必要だ、と直感し、問い合わせフォームからすぐにメッセージを送りました。日本でも同じことが起きているので、ぜひ日本の子供も助けてくれませんか、と」。

 すぐには返事が来なかったが、4回メールを送り続けると、やっと返事が返ってきたという。

 2015年8月、開発したInspirit Group, LLC社を谷山さんが訪問し、日本での導入に向けて事業が動き出した。

8ヶ月後、日本語版が完成

 アプリの日本バージョンを作るために、日本の教員や有識者の方にアドバイスをもらったり、米国のInspirit Group, LLC社の担当者とスカイプで何度も打ち合わせをするなどして、日本独自のシステムを作っていった。2016年の4月頃にようやく、デモ版が完成。2016年6月に、国内で初めて大阪の私立学校「羽衣学園中学校」で導入が決まった。同校では、導入以降、抑止効果が生まれ、いじめの報告が減っているという。

 その後、私立の学校を中心に、いじめが発覚した東京学芸大学附属高校や岡山県の県立高校などでも導入が広がり、現在は25校約1万2000人が利用する。今年柏市に導入されたことをきっかけに、問い合わせが50件以上来ているという。

いじめの傍観者にならないよう呼びかける授業プログラムも開発

脱・傍観者プログラムを受ける柏市の中学校の生徒たち(ストップイットジャパン提供)

 柏市の導入が注目される背景には、STOPitだけを導入するのではなく、導入時に特別な授業を行っているからだ。千葉大学教育学部の藤川大祐研究室が監修した脱いじめ傍観者プログラムとストップイットの合わせ技が効果を発揮している。

 同プログラムは、千葉大学の藤川大祐教授を中心に、柏市教育委員会、ストップイットジャパンなどが連携して開発。クラスの雰囲気がいじめの発生に関わるという千葉大学名古屋大学静岡大学の共同研究成果を元に、子どもたちが「脱・傍観者」の視点に立ち、いじめの予防や解決方法について話し合う授業プランで、道徳の時間や学級活動で活用できる。

 谷山さんによると、「このプログラムを受けてから、STOPitの案内をすることで、いじめられている当事者だけではなく、傍観者の通報も促すことができる」と説明する。

 柏市ではこのプログラムを中学1年生を対象に行った後、全中学生にSTOPit導入の案内をしたが、すでに昨年より多く、いじめの相談が寄せられている。 

 また、プログラムは、7月から無料配布を始めたが、すでに約500部配布されたという。

今いじめに悩む子に伝えたい思いとは

 自身の経験を糧に、いじめ対策を進める谷山さんに、今いじめに悩んでいる子供たちへのメッセージをいただいた。

 「いじめられている子は誰が味方かもわからず誰にも話せないでいる子が多いのではないか。自分も最後まで周りの人にSOSを出すことはできなかったので、その難しさはわかる。それでも、振り返ってみれば、周りには必ず1人は味方がいるものです。だからとにかく声を上げてほしいと思います。また、周りの子も、気がついているなら、絶対に誰かに言ってほしい。あの時何もしなかった、行動を起こせなかった、と後悔している人が、世の中にはたくさんいるんです」

 谷山さんは、いじめについて、なかなか相談しにくい現状を変えていきたいと語る。

 「電話相談やメール相談もありますけど、電話って子供にとってはハードルが高いですし、メールはやったことがない、という子供も多い。そういう中でSTOPitが少しでも役立ってほしい。これからLINEでも相談窓口を開設する自治体もあるそうですが、LINEでもSTOPitでもどちらでもかまわないと思います。相談へのハードルが下がることが一番だと思います。

 また、脱いじめ傍観者プログラムもどんどん広げていきたい。きれいごとかもしれないが、一番大切なのはいじめが起こらないクラスをつくること。このプログラムはいじめが起きやすい雰囲気について考える内容なので、このプログラムもSTOPitと合わせて広めていくことで、いじめ自体が減少するはずです」。

 

TM NETWORKの木根尚登、いじめの両方を体験

TM NETWORK木根尚登が、離婚式などを手がける涙活プロデューサー・寺井広樹、イラストレーター・もずねこと、いじめ撲滅をテーマにした絵本「『おに』と名づけられた、ぼく」を7月に発売した。9月10日の世界自殺予防デーには都内で、木根が絵本の読み聞かせをしたり、寺井が作詞、木根が作曲と歌を担当した新曲「ともしび」の披露などを行うイベントも開くという。

いじめる側、いじめられる側、両方を経験

 「幼稚園のとき、ちょっと動作の遅い子を指差して、この子を仲間はずれにしようって僕、言っちゃったんですよ。そうしたら、遊び仲間の中心にいた子が、そういうことを言う君が仲間はずれだ、と。それで少しの間、ひとりぼっちで、みじめな思いをした。そういうことを言ったらこうなるんだって、友達に教わった記憶がずっとあって」

 そして中学1年のとき、いじめに遭った。

 「背が小さかったのを、すごくからかわれて。一生懸命、自分では遊んでいるように転換して笑顔で返したりするんだけど、学校へ行きたくなくなった。いじめる側といじめられる側、両方を経験したんですね」

「いじめられる側にも問題がある」には反論 傍観者にこそ、絵本を読んでもらいたい

絵本『「おに」と名づけられた、ぼく』より(撮影:志和浩司)

 そんな子ども時代の体験を思い出すきっかけが、TMネットワークとしてデビュー後に訪れた。SNSもない当時、自身が出演するラジオ番組にリスナーから寄せられるハガキや手紙で、彼ら彼女らのプライベートを知ったのだ。

 「いま幸せで楽しいです、って書いてくる子はほとんどいない。実は僕いじめられていた、でもTMの曲と出会って元気をもらってます、そういう声が多い。苦しみや悩みを打ち明ける子がこんなにいるのかと。いじめを扱った本を書くようになってからも、死のうと思っていたけどがんばって生きようと思います、なんて感想をもらって。自分の中では、誰かを救おうなんて大それた気持ちは1ミリもないけど、音楽はじめ何か作る側として提供していくうちに、発信した向こう側にいる人たちが思い思いに受け止めてくれて、糧にしてくれたりする。これは自分の責任って重いなって思いました」

 教育委員会の関係者から激励の手紙が届いたりするうちに、いじめ撲滅の活動へのモチベーションは次第に高まっていった。木根は、いじめ問題が起きると必ずついてまわる「いじめられる側にも問題がある」という意見に「いじめる側が100%悪い。戦争が100%悪いのと同じです」ときっぱり反論する。そしてこの絵本は、いじめられている人や、いじめている人に向けるというより、どちらでもない人たちに届けたいと語る。

 「いじめられている人がいじめの本なんて読みたくないですよ。本の中でもいじめられてるわ、みたいな。で、いじめてる人が読んでも、これは自分のことだとは思わない。じゃ誰が読むんだっていったら、多くの傍観者。僕は傍観者の心の根を変えないといじめはなくならないと思います。傍観しているのは加担しているのと一緒。とくに大人たちが、どういうふうにそれを捉えていくのかなっていうのがすごく大事だと」

いまの自分を形成したTMネットワーク

近年、木根は音楽活動を主軸に、劇団を主宰や役者として舞台出演するなど、演技の仕事にも力を入れてきた。そしてそのほかに、いじめ撲滅の活動がある。それぞれが大事な活動だが、中心にあるのはやはり音楽だ。とくに、いまの自分を形成するのにTMネットワークは大きな役割を果たしたという。

 「TMは僕が入社した会社、あるいは学校です(笑)。ソロではもともと好きな音楽を趣味の延長でやっていますが、小室君や宇都宮君から学んだことは多い。とくに小室君はぜんぜん僕と違うタイプなので、一時期はこのバンドで自分はやっていけるのかな?って疑問もありました。僕はフォークソング世代で、吉田拓郎さんから音楽に入ったので。小室君はもろ洋楽、真逆の音楽をやっていた。だから楽しいことばかりではなかったけど、でもTMは学校なんだとか、お給料もらってるから会社なんだとか、自分に言い聞かせながらやってきたんです」

 ソロ活動のほうも、スタートして25年が経ったことを記念し、集大成ともいえるライブを12月に行う。これまでキャリアを重ねる中で、心がけていることは……。

 「行き当たりばったり、ですね」と笑う。何も決めていないドキドキ感がいいという。

 しかし、いじめ撲滅活動は行き当たりばったりではない。行き当たりばったりで生きてきたミュージシャン木根が、人生を通して取り組んでいる大切な活動だ。音楽や芝居とともに、いじめ撲滅という面でも何を生み出していくのか。木根尚登がやることを見逃してはいけないと感じた。

 

いじめや虐待などの蓄積で自殺願望も…少女の逃げ口になったのは?

平谷彩音(27、仮名)はもともとの性格もあってか、コミュニケーションが苦手で、人間関係をうまく作れなかった。いじめや虐待の影響もあったためだろう。生きづらさや自殺願望を持つようにもなるが、実行には至らない。彩音にはどんな逃げ場があったのだろうか。

「積極的に生きたいわけでもない。死にたいくらいに辛い」

「死にたい」。彩音が初めてそう思ったのは21歳のときだ。

「突発的でした。辛い記憶を思い出すときは今でもそうです。『死にたい』は『寂しい』とかぶるところもありましが、違う部分もあります。『この気持ちを聞いてほしい』ということでしょうか」

その頃は何があったのだろうか。大学入学前、浪人をして予備校に通っていた。母親は勉強が苦手で、教育の受けさせ方がわからない人だった。勉強のプロセスを見てもわからず、結果でしか判断できないタイプだ。ただ、小学校の頃に彩音がいい成績を取っていたために、「もっと上を目指せ」と言われていた。

その影響もあってか、大学に入学するころ、「弁護士になろう」と考えた。法律系のサークルに入った。そこで友達ができたが、基本的には一人で過ごした。優秀な人ばかりだが、彼らは誰かに見切りをつけるのも早かった。あまり長く一緒にいると切り捨てられる。そんなことは避けたかった。

ただ、「死にたい」と思った時期に、それを決定づける出来事があったわけではない。それまでの積み重ねによるものだったのかもしれない。

「『死にたい』と思っても、実行はしていません。イメージはできますが、実行したら痛いじゃないですか。それに、『死にたい』という気持ちのまま、死にたくないです。ただ、積極的に生きたいわけでもない。死にたいくらいに辛い。死にたいくらい寂しい、ということです」

自殺願望はあっても、行動したことはない。自傷行為もしたことはない。ただそれは、周囲にはわかりにくく見える。彩音が「死にたい」と考えているとは思えないはずだ。では、いったい、「死にたい」と思うまでの出来事とはなんだったのだろうか。

「自分はいじめられてもいい存在」

彩音は幼い頃、ぼーっとしているように見えることもあった。ただ、テストの成績がよかったため、「カンニングをしている!」との噂が立った。男の子が言葉によるいじめをしていたが、女の子でも、そのいじめっこの取り巻きはいじめる側に加担していた。いじめられるときは、「平谷」と苗字で呼ばれた。

いじめにはターゲットが流動的になる「ローテーションいじめ」があるが、固定的なターゲットにされていた。

「理由はたしかめていません、加害者から『好きな人が一緒だった』と聞きましたが、それだけじゃないのではないでしょうか。いじめについて先生に怒られたから謝ってきたんですが、その前に他の人とコソコソ話し合っていましたから」

もともとクラスメイトと馴染んでいたわけではない。休み時間は絵を描いていた。そのため、みんなと遊ぶことはしない。運動が苦手なために、外で遊ぶことはしなかった。見ようによっては「孤立」していたが、彩音に仲間外れの意識はなかった。

「友達の作り方がわからないんです。何かを言われても反論しないタイプなんで。なにか言ったら遊んでくれなくなってしまうのではないかと思っていました。我慢をしないと、友達が離れていってしまうのではと感じていたんです」

中学は「いじめが持ち越されないように」と私立の中学へ進学した。2年のときは、「嫌な奴」から目をつけられ、指を指して笑われた。ただ、クラス全体を巻き込む勢いではなかった。

「悪めだちをしてしまったんです。音楽の授業でやる気を出して歌ったところ、それが嘲笑の対象になってしまったんです。授業の流れを読めていなかったんです。でも、私は、自分がいじめられてもいい存在だと思っていたんです。そう思うことで辛い状況をやり過ごそうとしていたんです。自己評価が低かったんです」

言葉を額面通りに受け止めてしまう性格

彩音の性格の特徴の一つに、言葉を額面通りに受け止めることがある。友達と喧嘩をすると、「絶交だ!」と言われたのに、翌日になると、話しかけられる。ある意味、友達との関係というのは言葉通りではないし、流れやノリもある。ただ、こうしたときは戸惑った。友達間だけでなく、母親との関係でも同じだ。

「母は暴言を言う人でした。でも、母には『私にとっては一番大切だから』と言われるんです。矛盾することを人は言うものだし、額面通りに受け止めることはないと感じたのは、成人してからでしょうか」

人との会話では、ほとんどが意味のあるものより、場をつなぐためだったり、内容よりは話すこと自体に意味がある場合が多いだろう。にもかかわらず、言葉一つひとつをその通りに受け取り、意味を持たせていたとすれば、コミュニケーションへのスタンスが非常に窮屈になる。彩音は少なくとも成人するまで、発せられる言葉をそのまま受け取っていた。

父親は虐待、祖父母と母親は宗教にすがる

こうした不器用な彩音が「生きづらい」と感じるようになったのは実は4歳ごろからだったという。

「さすがに、その頃に『生きづらさ』という言葉は知りませんが、なぜか、寂しいと感じていました。一人遊びばかりしていた時期です。生きづらいと思っていたということは自我が強かったのかもしれません。正しい振る舞いをしたいと思っていたんですが、それがどういうものなのかわからないんです。保育園の先生も、そんなこと教えてくれませんでした」

「生きづらさ」を彩音が意識していたのは、幼い頃に、母親と離婚した父親の振る舞いも影響しているのかもしれない。「産まれないほうがよかった」と父親は言っていた。自己評価が低い父親はいつも母親に暴力を振るっていた。母親はドメスティックバイオレンス(DV)の被害者だった。

また、母親が父親にダーツの的にされたこともあった。ダーツが当たり、血を流している母親の姿を彩音は覚えている。これも現在では、面前DVと言われるほどの虐待だ。父親から彩音は母親の愚痴を聞かされていた。

彩音が生まれてすぐに母親が入信した宗教の影響もあるのかもしれない。彩音の家系では、母方の祖父母がその宗教に入っていた。母も強い影響を受けていた。母親が宗教にすがったのはDVの被害者だったことも一因かもしれない。そんな中、彩音なりに、祖父母や母親の価値観にそった生き方をしようと思っていた。

逃げ場はインターネット。いろんな人とつながった

綾音は心理的にはきつい状況にありながらも、「いじめられてもいい存在」として、鈍感になることで「傷付かない」と思い込んでいた。そんなときに、パソコン部に入部し、インターネットで気を紛らわせていた。

「インターネットって怖い事件もありますが、裏を返せば、ネットでは普段出会えない人に出会えるんです。佐世保小6同級生殺害事件がありましたが、きっかけはコミュニケーションの行き違いですよね。そうした行き違いは普通に話していても起きることです。ただ、事件を起こした人のサイトは見ないようにしたんです。野次馬の一人になるのは怖いと思ったからです」

休みの日も外出せずにネットに明け暮れた。絵を描くのが趣味だった彩音はこの頃はすでに描かなくなっていた。部活内に絵の上手な人がいたので、差を感じていたからだ。ただ、逃げ場が欲しかった。高校時代にはSNSの「モバゲータウン」で、我慢できない心情を日記に描いていた。また、いろんな人と繋がった。

「逃げ場ならなんでもよかったんです。ただ、当時はパケットが従量課金でしたので、パケ死状態(パケット料金が想像以上に高額になり、支払いが難しくなる状態)でした」

SNSで思いを吐露していたからか、高校時代、彩音は「これまでの人生でもっとも平穏だった」という。モバゲータウンつながりで実際に会ったのは高校生と20代の男性の2人だ。

「こちらから『会いたい』と積極的に思ったわけではないです。『会おう』と言われたからです。嫌われないようしないと見捨てられちゃうと思っていたからでしょう」

このころ、学校に行けなくなることがあった。週に2、3日は登校できない。その意味では、不登校というほどではない。また、保健室に行くことは思いつかなかった。さぼり組が多かったこともあり、顔を出してないのだ。そのため、居場所はインターネットだけだった。

「家にあったパソコンでインターネットをしていました。1日最大で6時間ぐらいしていました。高校2年ぐらいからはニコニコ動画を見ていたりしました。生主はしていません。顔や声をさらすのが嫌なんです」

父親からの心無い言葉、祖父母と母親からの宗教の影響、小学校と中学校のいじめ....それら一つ一つは、生きづらさを感じるものではあったが、彩音にとっては、「死にたい」と思えるほどの出来事ではなかった。しかし、それらの蓄積によって、自殺を考えるほどになった。ただ、追い詰められながらも、実行しなかったし、自傷行為もしていないのは、インターネットという逃げ場があったためだろう。

 

始業式に自殺する子供達のSOS

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多くの地域で夏休みが終わり、新学期が始まる9月1日。その日が恐怖でしかない子どもたちが、自ら命を絶つ。

 いわゆる“9月1日問題”。

 データが明らかになったのは2015年のこと。原因や動機には学業不振や家庭問題、学校や友人関係などがあり、文部科学省の担当者は「これらの問題が複合的に重なったことが考えられる」と推測する。その中でも特に深刻なのがいじめを受けている子どもたちだ。 

 不登校や引きこもりなどの情報交換や交流などを目的とした『不登校新聞』の石井志昴編集長は、子どもたちのギリギリの状況を説明する。

「夏休みが終わる数日前から学校に行くか、死ぬかの選択を迫られているんです。始業式が近づくと、いじめで苦しんだ1学期のことを思い出し、恐怖感が高まっていきます。その恐怖から逃げたい、と自ら死を選ぶのです」

 予兆はあるという。

 一般財団法人『いじめから子供を守ろう ネットワーク』代表の井澤一明氏は大人たちに呼びかける。

「怯えている、夜泣く、スマホを見なくなっているなど、夏休みの前半と態度が変わってきたら注意してください。ほんの少しの変化でも、気づいてあげてほしい」

 とポイントを明かす。

「宿題ができていない、体調不良などは赤信号。1学期に不登校ぎみだったら、最後のSOSだと思ってください」

 と石井編集長。

子どもたちはいじめを隠す

 自殺の原因や理由はさまざまだが18歳以下の自殺者数は年間約300人~400人のあいだでほぼ横ばい。対策するものの減らない、という。

「いじめはどこの学校でも起きています。早期発見、早期予防が肝心です。しかし、今でも学校は、いじめを認識したがらない。教育現場はいじめがあればしっかり認め、いじめへの感度を高めるための努力をしていく必要があります」(前出・文部科学省の担当者)

 と教育現場の鈍感さに注文をつける。

 いじめが内包するわかりにくさも、事態を陰湿にする。

「男子は暴力系、女子はコミュニケーション系のいじめ。しかし大人からそれは見えません。子どもたちは隠します。いじめられている子も、苦しさを見せません」(石井編集長)

 本人も学校も隠したがる傾向にあるという。

 北海道の私立高校の女性教諭が、現場の認識力の欠如を説明する。

「生徒たちの状況をいじめと先生が認識していない場合もあります。当該の生徒はいじめられて嫌な思いをしているかもしれませんが、大人はそれに気づけない。ふざけているだけなどと、いじめにカウントしないこともあるのです」

 いじめ調査の実態について、

「学期終わりにアンケートをし、いじめが発覚すれば夏休み中に対応します。そして加害生徒に寄り添うことも必要です。というのも、加害者もトラブルを抱えていたりするからです。家庭に問題があったり、人との関わり方がわからない子もいます」

学校は命をかけてまで行くところじゃない

 

さらに、教師の目に触れないいじめがネットに広がっているのも近年の顕著な傾向だ。

「LINEやツイッターなどSNSのいじめも増加しています。“学校来るな”“死ね”などの中傷はわかりやすいのですが、当事者にしかわからない内容でのからかいもあります。ネットでのいじめは、子ども本人が“いじめられている”と告白しない限り、わかりません」(前出・井澤氏)

 と深刻な実態を明かす。

 トラブル抑止のためLINE株式会社では、学校などに講師を派遣する啓発活動やその教材作りをする。一律の解決策はない、としながらも、

「大人は子どもの利用実態や使用感覚をまず理解することが必要ではないかと考えています。そのうえで子どもと普段からネットに関するコミュニケーションをもち、トラブル時には信頼して相談してもらえるような環境づくりが重症化抑止のために重要です」

 と対策を伝えた。

学校に行かない選択もある

 子どもと親、子どもと教師の信頼感の大切さを訴える専門家は多い。

「自分の気持ちを受け止めてくれる大人に出会ったとき子どもたちは前向きになれるんです。出会いは命を助けます」と石井編集長。

 前出の高校教諭も「親と学校とが協力関係をもたなければ解決できません。生徒と教師の間に不信感が生まれてしまえば、生徒は話してくれなくなります」と経験を明かす。

 いじめによる自殺で娘を亡くし、いじめ問題の解決に取り組むNPO法人『ジェントルハートプロジェクト』の小森美登里さんは話す。

「いじめを受けていた生徒が勇気をもって先生に相談しているのに“様子を見よう”とか“いじめはない”と言われたら、さらに傷つきます」

 教師だけではない。

「親もそうです。私たちもそうでしたが“強さが必要”“頑張りどころ”などの言葉は子どもを突き放すだけです。いじめは子ども目線で考えることが重要です。助けようとしていても大人の思い込みが逆効果になることもあります」

 と注意を促す。

 同法人では新学期の自殺防止対策の一環としてメッセージの展示などを企画。展示は神奈川県横浜市を皮切りに、東京都港区、青森県などでも行われる予定だ。同法人の小森新一郎代表理事は、

「子どもたちはいじめを受け親も先生も周囲は誰も自分のことはわかってくれないという孤独を抱えた中で死んでしまいます。この展示を通して“たくさん味方がいるんだよ”と伝わればと思っています」

 と期待を込める。

 2学期へのカウントダウンが始まり、間もなく確実に新学期を迎える。

「学校は命をかけてまで行くところじゃない」と前出の石井編集長。小森美登里さんも、

「学校に行かない選択肢もあります。“うちの子に限って”はありません。突然、子どもが死んでしまうかもしれない危機感をもってください。子どもの命が最優先です」

 前出・井澤氏は悩みを抱える子どもたちに、

「親に相談できなければ近所の人、きょうだい、誰でもいいので、つらい胸の内を明かして、ひとりで抱えないで」

 と、呼びかける。通話料無料の『24時間子供SOSダイヤル』も、いつでも子どもたちの味方だ。