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「正しさは人を幸せにするのか?」女子高生いじめ自殺の真相とは

映画『由宇子の天秤』

 

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テレビや新聞だけでなく、ネットを用いて専門家からインフルエンサーまで独自の考えを自由に発信できることで、フェイクニュースという言葉まで存在する情報過多社会と言われる昨今。それに惑わされ、「呟き」によって気軽に他者が人を傷付けられることもできるSNSが「いじめ」を生み出しているのも事実です。

 

そんな中、ある一本の映画が世界の映画祭で話題をさらっています。それは春本雄二郎監督がオリジナル脚本、編集、プロデュース、そして監督として生み出した『由宇子の天秤』という、女子高生いじめ自殺事件の真相を番組で伝えようとするドキュメンタリーディレクターの奮闘劇です。  物語は、亡くなった女子高生の父親にインタビューする由宇子(瀧内公美)の姿からスタートし、彼女が学校の対応やその裏に隠された集団によるいじめ問題をテレビ局との方針の違いに苦しみながら真実を伝えるべくカメラを向けていくのですが、やがて父親(光石研)から思いもしない告白をされ、自分の「正義」が揺らぎ始めるのです。  ちなみにタイトルに付けられた天秤とは、裁判所にも設置されているギリシャ神話に登場する正義の女神テミスが持つ「力」を意味する剣と共に持つ「正義」の象徴である天秤のことではないかと推測します。そう考えると春本監督が、自分の分身と言える主人公を女性にした理由もテミスをイメージしてなのかもしれません。  実は映画が評価されている理由の一つが、「正しさは人を幸せにするのか?」という人間の深層心理をえぐる甘くない洞察力ではないかと考えます。今や加害者を擁護した者や加害者の家族までもが攻撃を受け、被害者の遺族も静かに暮らすことができない時代。劇中でも遺族がネットに書き込まれる情報により引っ越しを繰り返す羽目になり、幼い娘がいじめに悩む姿が映し出されます。まさにネットというつながるツールの登場で人々は他者に敏感になり、ストレス発散から見ず知らずの相手に「言葉の暴力」を奮ったり、人生を脅かせるようになってしまったことを湾曲せずに映画はつづろうとしているのです。  さらにメジャー映画にありがちな、泣かせようとするドラマチックな展開を作らず、どんな困難にも涙を見せずに立ち向かおうとする共感度の低い女性主人公の設定など、確かに大手映画配給会社では映画化は難しかった脚本。後に企画を聞き、賛同したアニメーション映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の片渕須直監督がプロデューサーとして制作に参加しています。  その結果、あえて登場人物に共感させない一歩引いた視点で取材をする主人公・由宇子のおかげで、観客は冷静な目で絡み合った人間関係を一緒にひもといて行き、やがて直面する言葉にできない感情をダイレクトに感じることができるのです。  果たして猛スピードで次々と情報が入ってくる現代社会で、冷静に物事を判断し、それぞれの立場の人が体験する未来を想像できる人がどれだけいるのでしょうか?だからこそ一歩引いて考える想像力が今最も必要とされている気がします。そして映画とは、想像力を培うものであると考えています。本作のように答えをあえて描かずに、「あなたならどうしますか?」と観客に投げかけることで、想像力を働かせることができます。それにより誰に共感するか、誰が間違っているかではなく「多角的に物事を捉えられる力」で、正しい判断力を身につけたいものです。