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3人連続自殺の闇 「 兵庫県警が“隠ぺい 」

昨秋、兵庫県警の警察官3人が相次いで自殺した問題で、本誌は昨年11月20日号で、自殺した一人、山本翔さん(当時23)の母親が「上司のいじめがあった」と訴えた独白を掲載した。しかし、県警は「延べ234人の聴き取り調査の結果、いじめやパワーハラスメントはなかった」との調査結果を昨年末、まとめた。

 すると、2番目に自殺した木戸大地さん(当時24)の両親も本誌の取材に応じ、「いじめがあった」と訴えたのだ。大地さんの遺書は3通あり、1通目は家族、2通目は彼女に宛てたもの。問題は3通目だった。

≪Aさん(機動隊員の先輩)あなたの思い描いた通りになってよかったですね≫

 父親は悔しそうに語る。

「この遺書は、自殺をはかる当日、直前に書かれたと思われます。大地が最後の力をふりしぼって、無念さを走り書きにしたものです。いじめでうつ状態にまで追い詰められたのです」

 事件を振り返ろう。

 昨年9月、神戸市内にある県警の独身寮で、第一中隊第一小隊に所属する山本翔さんが、首を吊って自殺した。翔さんは遺書に同じ小隊の3人の隊員の名前を挙げ、「先輩の嫌がらせや上司からのウソつき呼ばわりには精神的に限界です」と記していた。8日後の10月6日、同じ寮で翔さんの一つ下の階に住んでいた大地さんが自殺をはかった。

 遺書の意味について父親はこう語る。

「大地は要人のSPや機動隊のバスの運転をする仕事などをしていました。Aさんとは仕事上、接点があった。大地は何回かミスが続いていて、Aさんから『始末書を出せ』と言われ、提出したら『こんなものじゃ、受け取れない』と書き直しを命じられた。揚げ句、『お前は2年前のクレーン車の玉掛けの試験のときにカンニングした。それについても全部、書け』と命じられたそうです。大地は『そんなことはやっていない』と拒んだらしい。いじめとしか思えない。そう県警の監察官に質問したら、『Aさんは仕事熱心のあまりついカッとなったのだろう』と。Aさんは口頭注意されただけとのことです」

 両親によれば、大地さんは長崎県の宴会の席で裸踊りをさせられたという。

 だが、県警の監察官は両親に「(裸踊りは)木戸くんが自ら率先してやっていた」と説明したという。

 大地さんは幼稚園のころからサッカー一筋のスポーツ青年だった。交際している婚約者がいた。

「2年前から彼女と付き合い始めて、結婚したいからと2人でうちに報告に来ました。もう、マンションも決めていて、彼女と彼女のお母さんはマンションの下見もしていた。(今年5月の)サミットが終わったら生田神社で式を挙げる予定でいたんです」(母親)

 自殺の2週間前には、両親と大地さんと婚約者の4人で高知県へ温泉旅行に出かけた。

「高知の『ひろめ市場』へ行ったりしました。露天風呂に一緒に入ったときになかなか入ってこんなと思っていたら、10分以上たってやっと入ってきた。何していたのかと聞いたら、『お尻から血が止まらんのじゃ。最近、出血がひどい』と言う。『なんで』と聞いたら『わからん。今ちょっとしんどいんじゃ』の一言だけだった。出血はストレスからではなかったかと思う」(父親)

 2年ほど前、父親と2人で酒を飲みながら、「こんな腐った職場ではもうやっとられん」と泣きながら、胸のうちを語っていたことがあった。父親はこう憤る。

「大地はいじめ、パワハラが原因でうつ状態になるまで追い詰められた。一生懸命、汗みずたらしてここまで育ててきたのに、機動隊の先輩や上司らの手によって、命を落とした。それを考えたら胸が張り裂けるようです」

 兵庫県警に質問すると、「ご遺族には詳細に説明しましたが、個人のプライバシーにかかわることでもあり、回答は控えさせていただきます」とした。