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「いじり文化」といじめは紙一重

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文部科学省事務次官を務めた前川喜平氏が、読者からの質問に答える連載「“針路”相談室」。今回は、いじめ問題に心を痛める方からの相談です。

*  *  *
Q:子どものいじめ問題に心を痛めています。これまで何人の子どもがいじめに悩み、どれだけの尊い命が失われたでしょうか。1993年には、私が住む山形県で、体育で使うマットに子どもを押し込め、死に至らしめた事件もありました。いじめられているのに登校を続け、自殺に追い込まれた話を聞くと、登校しなければよかったのにと思います。学校でいじめを防ぐのは難しいとも感じます。子どもたちには「逃げろ」というしかないのではないでしょうか。(山形県在住)

A:「逃げろ」というのは正しい助言です。いじめは、命の危険性をはらんでいます。そんな命の危険があるようなところには絶対に行ってはいけない。いじめられている子どもを持つ親は、その子を学校に行かせてはいけません。

 今、「いじり」という言葉がよく使われ、テレビのバラエティー番組に「いじり文化」が広がっています。これは問題です。そもそも「いじり」と「いじめ」は紙一重。「いじり」とは、他人の尊厳を冒して楽しむことです。事実上のいじめである「いじり」が横行し、人の尊厳に対する感覚がまひしていると思います。

 いじめは、自分と異質なものを排除しようとする同調圧力から起こります。日本の学校教育の「みんなと一緒じゃないといけない」という全体主義的な考え方や、上から押さえつけるような指導方法によって、いじめは生じやすくなると思う。日本の学校には、個を押し殺し、個人の尊厳を否定するようなところが、まだまだ残っています。そして、こうした風潮を良しとする学校関係者もいまだに多いのです。

 日本でいわゆる学校教育が誕生し、義務教育の形になった背景には、明治時代の富国強兵政策があります。日本の学校は、軍隊をモデルにして作られ、国家のための教育がされました。例えば、「体育」の授業も、軍隊から取り入れた「兵式体操」が原点。放送中のNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」の第1話で、スポーツと体育の根本的な違いに言及する場面がありました。スポーツが勝敗を競いつつそれを楽しむことを重視するのに対し、体育は文字通り体を育むための教育で、国のために体を育むという軍隊の流れからきているのです。

そうした背景から、運動部活動には、全体主義的な傾向や暴力体質が特に色濃く残っています。日本の学校文化を「みんなちがって、みんないい」(金子みすゞ)という一人ひとりを大切にする方向に変えていかなければいけません。

 日本の学校教育は、全体主義的な方針と個性を尊重する方針との間のせめぎ合いを繰り返してきました。かつての詰め込み型教育への反省から1980年代以降、「ゆとり教育」にかじをきりましたが、その後、「学力低下」という批判を受け、2008年に“脱ゆとり”の学習指導要領に改訂され、学校現場に余裕がなくなってきています。学習規律の徹底を重視する学校も増え、個を抑える道徳教育も強化されようとしています。これは同調圧力を強め、いじめを起こしやすくする危険な流れです。のびのびと個性を尊重したゆとりある教育に戻すべきだと思う。

 いじめに遭ったら、学校には絶対に行かないこと。代わりに、朝から図書館でたくさん本を読んだらいい。学問は、言語の蓄積です。苦しい思いをして学校へ行くよりも勉強になるはずです。