学校を休むようになってからも、学校側はシェリルさんを傷つけ続けた。

「先生たちは休んでいるときに訪問してきたりしたけど私を学校に来させたいという感じではなく、男子児童は悪くないと言いたい感じだった。私のせいで問題が大きくなっているみたいな言い方をされました」

 加害男児の親も、自身の子どもの暴力行為を叱るどころか、シェリルさんを責めたという。それでも卒業式だけは参加しようとシェリルさんは勇気を振り絞って卒業式に参加した。3月12日のことだった。

「もうその日は緊張しまくりでした。ドキドキして何か嫌なことされないかびくびくしてほかの児童とは別の図工室で卒業式を待っていました。卒業式が始まるとき、男子児童から悪口をたくさん言われました。私の服装を“うんこ”と言ったり、外国人である私の顔の特徴をバカにしたことをたくさん叫んできました。私はもう悲しくなってしまって図工室に戻りうつぶせになって泣いてしまいました

「どうしたいの?」という校長

 男児からの謝罪を求めるシェリルさん親子に対して、校長は“中立の立場”であると説明。校長室に呼ばれた加害男児は泣きながら“お前のせいだ! 殺すぞ”と言ってきたという。

「殺すぞと言った男子のことを大人は誰も注意しませんでした。男子も“悪口なんか言っていない”と言うし、男子のお母さんも怒鳴ってきて。校長先生も“どうしたいの?”と聞いてきて。謝ってもらいたかったけど私は“もういいです”というのが精いっぱいでした。本当に悲しかった」

 この日、シェリルさんはポケットにビデオカメラを入れていた。そこには男児からの暴言がしっかりと録音されていた。“うんこ!”“鼻伸びた”などと多感な年ごろの少女にとって、ひどい内容の悪口をこれでもかと浴びせられていた。鼻が伸びたというのは外国人特有の高い鼻をからかっていると思われる。

 芝中央小学校の鈴木彰典校長に真意を尋ねた。

―いじめはあったのか

「いじめはありました」

シェリルさんに謝罪はしないのか?

「非常につらい思いをさせてしまったことに対しまして、改めてお詫びにうかがう予定です」

―いじめられて泣いている少女に対して“どうしたいの?”という声かけは不適切では?

「“どうする?”と心配する気持ちをもって伝えたつもりですが“どうしたいの?”と他人事のように伝わってしまったとしたら、大変申し訳なく思います」

 暴力やトイレ監禁はいじめの域を超えた犯罪。「お互いさま」なんてありえない。