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子どもの遺族の不安を煽る発言をする学校

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「マスコミが大騒ぎします」「家族がつらい思いをしますよ」。子どもを自殺で亡くした両親の不安をあおり、問題の公表や調査の断念を促す―。学校が「事なかれ主義」で不誠実な対応を取るケースが絶えない。遺族に寄り添ってきた関係者は「真相解明を求めて声を上げる遺族はごくわずか。問題は氷山の一角だ」と訴え、失った命から学ぶ姿勢を示すよう求めている。

 

「マスコミがめちゃくちゃにする」

 2018年8月、さいたま市南浦和中1年の男子生徒が自ら命を絶った。母親によると、その日のうちに当時の校長が自宅を訪れ、「公にすればマスコミが告別式をめちゃくちゃにしますよ」「保護者会で遺族が説明する必要があります」と発言した。両親は校長の提案に沿い、他の生徒らへの説明を「不慮の事故」とすることに同意した。基本的な調査は自殺の事実を伏せて行われ、原因は不明とされた。

両親は、自殺前日にバドミントン部の男性顧問から母親に「男子生徒が練習を休んで外出していた」と電話があり、生徒が不安そうにしていたことや、顧問の指導が乱暴だとうわさになっていたことから、原因は顧問にあるのではないかと疑っていた。

記者会見する、自殺したさいたま市南浦和中の男子生徒の母親=2019年7月

 詳しい調査を求めるか考えていた18年12月、自宅を訪れた校長は「勉強してきたことを説明する」とし、第三者委員会に言及。調査対象は地域住民に広がり「必ず(情報は)漏れる」「朝、突然報道陣が自宅を取り囲む」「写真をずるい週刊誌がネットに上げる」「(男子生徒の)妹にも調査が入る」と不安をあおった。

 19年1月には、春に同校へ入学予定だった妹をサポートする意向を示しつつ、調査が始まれば「妹は置いといて(自殺した)男子生徒の方にずっといかなきゃいけないこともある」と発言。調査の対応に追われ、妹への配慮が行き届かなくなると示唆した形だ。

 不安を覚えた両親は第三者委設置の要望を一度断念した。後に支援者の後押しで改めて要望し、第三者委が設けられ、今も調査は続いている。

 報道で自殺の事実が明るみに出た19年7月、校長は取材に自殺当日の発言を否定した。「遺族が大ごとにしたくないと言うので『不慮の事故という方法がある』と提案しただけだ」と釈明した。

 一方、第三者委の話題になった際に「写真が流出し、根も葉もないうわさが流れる」と説明したとし「座間の事件は警察が入っても抑えられず大変だったと思う。そういうのが頭にあった」と話した。生徒の自殺に関する調査と、神奈川県座間市のアパートで17年に男女9人の切断遺体が見つかった殺人事件を同列に扱っていた。

 18年12月と19年1月の発言は遺族がやり取りを録音しており、母親は今年2月、音声データを第三者委に提出した。校長に改めて取材すると「調査に関わることは口外しないよう第三者委に指示されている」と口を閉ざした。校長は3月末で定年退職。4月に市立小の学校地域連携コーディネーターに再任用され、学校運営への協力を住民に求める役割などを担っている。

 ▽娘を人質に

 子どもの自殺に関する第三者委で委員を務めた経験のある千葉大の藤川大祐教授は「校長の発言は不当な脅迫だ。マスコミが騒ぐという決めつけは偏った考えで、第三者委が妹から強制的に話を聞くこともない。根拠のない情報で遺族の意思決定に影響を与えたのは職業人としてあるまじき行為」と批判し「遺族の要望を誠実に聞き、調査で生じるデメリットを避けるべく努力するのが筋だ」と強調した。

 校内アンケートで、顧問が部活中に他の部員の胸ぐらをつかんだり、「おまえ、存在する意味あるのか」と暴言を吐いたりしていたことが分かっている。「(自殺した生徒が)圧をかけられていた」と答えた生徒もいた。

さいたま市南浦和中1年の男子生徒が自殺した問題を受けて開かれた、市教育委員会の第三者委員会初会合=2019年7月

 学校と市教委は顧問の部内での暴言や体罰を把握し、内部文書に「顧問は暴言が激しく、人格を否定するような発言があった」と記している。しかし、両親から問われても「早く走れ」などと大声を出す指導にとどまっていたとし、詳しく説明しなかった。

 母親は「都合の悪い情報を隠し、信用できない。娘も調査されると言われ、人質に取られたようだった。第三者委には校長の対応も検証してほしい」と語った。

 ▽かん口令

 「遺族への配慮がなさすぎる」。憤るのは、19年3月に宮城県亘理町立中2年の男子生徒を自殺で亡くした父親だ。父親によると、生徒の死亡後、病院の待合室で当時の校長から保護者会を開くかどうか問われた。「マスコミが押し寄せる」と言われ、父親は「そっとしておいて」としか答えられなかった。

 自殺前、生徒は男性教諭から背中のシャツが出ていることを「赤ちゃんみたいだな」とからかわれたと泣きながら両親に打ち明けた。「死にたくなるときがある」と話したことも。父親はこれらを学校に伝えていた。

 自殺の翌月、父親は「教諭の不適切な言動が自殺の原因では」と記者会見で訴えた。すると、町教委の担当者から「話が違う」という趣旨の電話があった。その後の保護者会で、町教委側は多くの質問に「調査中」としか答えなかったが、説明が遅れた理由は「遺族の意向」と明言した。父親は「そっとして」の一言が都合よく利用されていると感じた。

 別の県の中学で生徒の自殺を経験したある男性教諭は「校長がすぐにかん口令を敷いた」と振り返る。「亡くなった子のため」と諭されたが、後に生徒が同級生に金品を脅し取られ、担任らは放置していたと聞いた。「責任追及を恐れたのは明らか。うまく丸め込まれてしまった」と悔やむ。

 ▽「命から学ぶ姿勢」

 文部科学省の「子どもの自殺が起きたときの背景調査の指針」は、全事案で詳しい調査をするのが望ましいとし、少なくとも学校生活の要素が背景に疑われる場合や、遺族の要望がある場合は専門家を加えた調査をするよう求めている。

 ただ、全国自死遺族連絡会(仙台市)の田中幸子代表理事の元には「学校が調査してくれない」との相談が相次ぐ。田中さん自身、警察官だった長男を自殺で亡くした。「突然遺族になり、自分にどんな権利があるか分からないのは当然。抱え込まず、必ず弁護士や民間の支援団体に相談して」と求める。

自宅の仏壇に手を合わせる全国自死遺族連絡会の田中幸子代表

 遺族に付き添い、学校や教委の担当者と面談してきた田中さん。事態が公になるのを恐れて矮小化(わいしょうか)を図るあまり、遺族に不信感を抱かせ、記者会見などで問題が大きくなる例が目立つと感じる。

 「どれだけ調査を尽くしても死んだ子どもは戻らない。遺族が完全に納得できることはない。だからこそ、学校や教委はせめて遺族と信頼関係を築き、失った命から学ぶ姿勢を示してほしい」