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いじめ、借金…東尋坊へ

「何度も死のうと思った」と語る男性。今は恋人との明るい未来を思い描く

中学時代から何度も死にたいと思った。関西に暮らす40代男性は、小学5年の時に母親を亡くし、相談する人も居場所もなかった。32歳の時、死ぬつもりで来た福井県坂井市三国町東尋坊が、人生をやり直すきっかけになった。今は恋人と描く未来が生きる力になっている。男性は「命を粗末にしてはいけない。今は死ぬことが怖い」と語る。

幼い頃に両親が離婚し、母が亡くなった後は親戚の家で暮らした。「面倒を見るのは高校卒業まで。頼むから恥をかかせるような生き方をしないでくれ」と言われた。家で交わす言葉は「おはようございます」「おやすみなさい」だけ。祖父母との食事の時間だけが救いだった。

 中学校で、両親がいないことや体形でいじめに遭い、リストカットを数回した。高校生の時、祖父母が亡くなると居場所がなくなった。物置で首をつろうとしたが、ひもごと落ちた。

 高校卒業後、憧れていたホテルマンになった。家族や恋人と幸せそうな客を見ていると、自分の境遇をみじめに感じた。半年で辞め、20歳になると歓楽街で働き始めた。関東や九州を転々とし、将来が描けず、稼いだ分だけパチンコや飲み代に使った。給料では足りず借金も重ね、32歳の時には200万円に膨らんでいた。「死ぬしかない」。ふと、テレビで見た東尋坊が頭をよぎった。

京都に1泊し翌日、片道切符を握りしめ福井へ向かった。借金がなく、温かい家庭があったら、真面目に生きられた―。電車の中で周りを見ていると「新たに人生を始めたい」と思った。でも、帰る場所はなく、借金生活に戻るだけ。どうしようもないと感じた。

 午後3時ごろ東尋坊に着き、岩場を巡って周辺の店を歩いた。岩場に戻り、崖から下をのぞくと足がすくんだ。日が落ちるころ、まだ岩場に座っていた。

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 「いい天気やのー」。NPO法人「心に響く文集・編集局」理事長の茂幸雄さん(76)に声を掛けられ、自然と涙が出た。ありがたかったが、警察に連絡されて親戚に迷惑がかかるかもしれないとも思った。茂さんに事情を話すと、風呂に入って落ち着くように言われ、銭湯に行った。茂さんが用意した家で暮らし、一緒に釣りにも行った。自己破産して、茂さんの紹介で県外の工場で働き始めた。

 35歳の時、恋人ができた。「一人じゃない。彼女のために一生懸命生きよう」。初めて将来を考えられた。たわいのない話をしたり、料理を作ったり、テレビを見て笑ったり。2人の時間が「生きていて良かった」と思わせてくれた。

 以前の自分は愛情に飢え、どうしようもない寂しさが、借金や死の願望につながっていたように思う。今は死ぬことが怖い。大切な人より先に死にたくない。犬を飼い、2人で暮らしたい―。大切な人のために生きる夢をかなえるために。