子供の声に耳を傾けよ
いじめ防止対策推進法の施行から3年が経過した。だが、全国でいじめ自殺は後を絶たず、法律が効果を上げているとは言い難い。
文部科学省の問題行動調査でも、2015年度の全国のいじめ件数は、国公立小中高校などで過去最多の約22万件に上っている。
こうした中、文科省の有識者会議は、推進法に基づく施策の課題や改善策などを示した提言をまとめた。
都道府県によっていじめの認知件数に大きな差があることなどから、いじめの定義を具体的に示すことなどを求めている。
大切なのは、いじめの芽を早期に摘み取ることである。子供たちのSOSをしっかりキャッチできる体制を整えたい。
推進法は大津市の中2の男子生徒がいじめにより自殺したのを機に、13年9月に施行された。
児童生徒がいじめで生命、心身、財産に重大な被害が生じた場合などを重大事態とし、教育委員会や学校が速やかに調査組織を設けるよう義務づけている。
ところが、重大事態の定義の解釈が学校や教員で異なり、いじめと扱われない例も生じた。定義の具体化を促したのはこのためだ。
ただ、いじめの形は多様だ。いじめに見えなくても、大きな心の傷を負っている場合もある。
具体例に当てはまらないからといって、機械的に判断してしまわないよう、注意が必要だ。
提言はまた、推進法がいじめ対策の基本方針を学校ごとに策定し、教職員が情報を共有することを義務づけているのに、周知されていない問題も指摘している。
そこで、各校がホームページ上や、入学、進級時に説明することなども求めた。
気になるのは、情報共有を怠った場合、懲戒処分となり得ることの周知も挙げている点だ。
怠ったかどうかの判断は難しいし、教員の萎縮にもつながりかねない。再考を求めたい。
15年度の道内のいじめ件数は約5500件と、前年度から大幅に増えている。
道教委は「いじめの定義や認知の重要性を徹底した結果、初期段階のいじめを積極的に認知したケースが増えた」ためと説明する。
だが、逆に考えれば、これまで初期段階のいじめを軽視したり、見逃したりしていた可能性もあるとは言えないだろうか。
各教育委員会や教員らは、この数字の大きさに謙虚に向き合わねばならない。