ドラマ『ライフ』いじめ助長?!抗議殺到
いつの時代も愛される“悲劇のヒロイン”を描いたドラマ。可憐な少女が理不尽な悪意に晒されて、くじけそうになりながらも、苦難を乗り越え成長する……。そんな作品が今まで、どれほどつくられてきたでしょうか?
安達祐実の『家なき子』(1994年・日本テレビ系)、 菅野美穂の『イグアナの娘』(1996年・TBS系)、深田恭子の『鬼の棲家』(1999年・フジテレビ系)、 榮倉奈々の『泣かないと決めた日』(2010年・フジテレビ系)等々……。
現実世界では、おそらくカーストの最上位に君臨するであろう容姿端麗な若手女優たちが、辛酸を舐める展開は、視聴者にとりわけ大きなカタルシスを感じさせます。そのため一定の支持を集め、定期的につくられているのでしょうか。
今回紹介する、2007年に放送されたフジテレビ系ドラマ『ライフ~壮絶なイジメと闘う少女の物語~』は、まさしく上記のような“悲劇のヒロイン”フォーマットを下敷きに書かれたドラマの典型。
主演は北乃きい。日本テレビ系『ZIP!』の総合司会を卒業して、早1年。今ではすっかりテレビで見かけなくなりましたが、かつて彼女は、将来を嘱望された女優の一人でした。
注目の若手女優だった北乃きい
ティーン向けファッション雑誌の専属モデルとして活動後、人気アイドルの登竜門『ミスマガジングランプリ』を最年少で受賞。同年放送の『恋する日曜日』(BS-i)ではドラマ初主演を飾り、2007年には、映画『幸福な食卓』の主人公役に抜擢……。
この時点でまだ15歳。同年代のモデルやアイドルが歯噛みするくらい、順風満帆なキャリアではありませんか。
そんなスター街道をまい進する北乃きいに、当然のごとく舞い込んだ連ドラ初主演のチャンスが、『ライフ』でした。この作品の元ネタは、『別冊フレンド』に連載されていた少女マンガ。累計部数700万部超という驚異的な売り上げを記録した同作の題材は「いじめ」です。
そのいじめに敢然と立ち向かう少女役に、当時16歳のこの売れっ子女優が起用されたというわけです。
全身びしょ濡れの北乃きいが、学校のトイレで戦闘モード満々にモップを振りかざしている番宣用ポスターは、このドラマの主題や彼女の役どころがどんなものなのかを語っているようでした。
「おめーの席ねぇから!」という名言も
しかしこの『ライフ』というドラマ、ちょっとやり過ぎてしまいます。もともと原作が、壮絶ないじめを強烈な画風で表現したスタイルにより、人気を呼んでいたために本編でも凄惨な描写を連発。
北乃演じる椎葉歩がトイレで水をかけられたり、黒板いっぱいに「死ね」などの悪口を書かれたり、弁当や教科書をゴミ箱に捨てられたり、髪にスプレーを噴射されたり……。
こうしたセンセーショナルないじめ演出の中で、特に視聴者の心に刻まれたのが「おめーの席ねぇから!」という、いじめっ子役の末永遥が放った台詞です。
ドラマ放送から10年経った今もなお、ネットで多く流用されているのを見ると、相当なパワーをもった"名言"であることは間違いないでしょう。
2000件以上の苦情がフジテレビに殺到
こうした苛烈な描写もあって、ドラマ『ライフ』は、若い世代を中心に評判となります。
一方で、30代以上の親世代には批判的な向きも多く、放送開始直後から「いじめを助長する」「過激すぎる」などの抗議や批判が、なんと2000件以上もフジテレビへ殺到したとのこと。
また、放送倫理・番組向上機構 (BPO) の「放送と青少年に関する委員会」にも、同様の意見が55件寄せられるなど大きな波紋を呼び、結果的に地上波においての再放送が不可能となってしまいました。
しかし一方で、「主人公に勇気をもらった」など作品を評価する意見も多く、最終回では17.4%の高視聴率をマークした『ライフ』。
悲劇のヒロインドラマの傑作にして、その後の熱愛スキャンダルにより勢いを失ってしまった北乃きいがもっとも輝きを放った作品として、これからも語り継がれていくことでしょう。